2019年の思い出

長すぎる空白の時期であったが、また記録をつけねばと思う。何よりも自分のため。このままだと本当に、日々の記憶があやふやのまま、波に溶けて流されてしまいそう。

後々もう少し詳しく振り返りたくあるが、2019年は(本題の)研究云々も実務・生活関連も荒廃した実り乏しいものであった。当たり前だが、論文はたとえ草稿を書いても雑誌に掲載されるまでは電子空間の塵なのである(Kitaevとかの特例は除く)。それと裏腹に、現実逃避として摂取した各種コンテンツ群は異様に出来が良く、インプット側は非常に満足いくものだった。

前者はここに詳しく書くのは憚られるので、いつも通り後者について書く。

 

特に映画関連は夏頃から下期と今年1月にかけて、新作がおよそ信じられない充実ぶりで、にわかにもかかわらず、アカデミー賞に興味津々状態になってしまった。映画館で見たのは見た順に「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」、「ジョーカー」、「パラサイト」、「ジョジョ・ラビット」で、Netflxでは「マリッジ・ストーリー」、「アイリッシュマン」(これは昨日ようやくまとまった時間をとって見た)。

いずれ劣らぬ、というかウルトラハイレベルな作品ばかりで、色々言いたいことはあるのだが、個人的なベスト級は「ジョーカー」と「ジョジョ・ラビット」(特に後者は趣味嗜好に完全に直撃する形で心奪われた)。どちらも、普遍的なテーマを奇想と力技で捌いて見せ、それでいて随所に神経の行き届いた企みと俳優の力により没入させられ、随所で強く感情を揺さぶられる、素晴らしい出来栄えのものであった。

しかしこの2作品、「人は自由の喜びを踊りで表す」ということを(各映画のテーマ直撃で)ラストに持ってきて、しかもその描き方がきわめて強い余韻を残すわけだが、それでありながらこれ程までに間逆な印象を与えるのも珍しい、というか。面白い偶然と感じる。

その他旧作では、「日本のいちばん長い日」、「東京裁判」、「ベニスに死す」、「サタンタンゴ」を見る機会があり、これらもきわめて良かった。(全部アホみたいに長いものばかりだが)

 

ゲームについては、夏ごろの激鬱モードにかまけて積年の思い煩いであった「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」に再着手し、秋頃に漸くクリアした(その後忙しくなったので追加部分は手を付けず)。これについては、(この作品に関わった人たちに対して)本当に生まれてきてくれてありがとう、という言葉以外で語れる感想はない。

その他はメタルギアソリッドシリーズの動画をちまちま見て、ストーリー部分を通り一遍消化した。これも大変良いものであった。1,2,5が特に気に入った。

 

音楽で言えば、9月に六本木で見たMAGMAと11月に羽田のProgFlightで見たKIYOSENが衝撃的であった。特に毎年驚異を提供される後者のイベントではあるが、まさしく規格外のドラムを目の当たりにすることになった。

 

本に関しては全く読む時間が行かず、もはや神保町の地縛霊というか、本屋を介してお布施をする機械と化しているところ。わずかばかり通読したものの中で特に良かったものは「誰のために法は生まれた」、「忖度と官僚の政治学」、「バレリーナ 踊り続ける理由」、「少年の名はジルベール」、「不道徳的倫理学講義」、「ゲーム音楽ディスクガイド」、「『集合と位相』をなぜ学ぶのか」(順不同)。

まあまあ、なものとしては、「岩田さん」、「風姿花伝」、「驚異の量子コンピュータ」、「セロトニン」。

 

漫画については継続して読んでいるものばかりで職場でも古いマンガばかり読んでいるというので、もの笑いになったぐらいなところ。新しく読み始めたものでは「アクタージュ」が大層面白い(実に今様な、見得はあるが汗はないスポ根)。しかし、舞台編になってから完全に化けたという感じな一方、どこまでこの熱量を継続できるのか、というのが不安になるぐらいには面白い。後は読みさしだが、「戦争は女の顔をしていない」がこれまた凄い。その他昨年書いたか忘れたが、panpanyaの「グヤバノ・ホリデー」もまあまあ良かった(旧作よりもマイルド感があるが)。その他「ハーモニー」も読了。印象が悪いとまではいかなかったが、図抜けた衝撃はないと感じる。

後、もともと読んでいたものでは、「少女ファイト」と「3月のライオン」が急激に盛り返した、というか見違えて面白くなった(正直このまま減衰していくと踏んでいたので、不明を恥じる所)。やはりこうでなくては面白くない。

 

 

誰のために法は生まれた

誰のために法は生まれた

  • 作者:木庭 顕
  • 発売日: 2018/07/25
  • メディア: 単行本
 
忖度と官僚制の政治学

忖度と官僚制の政治学

  • 発売日: 2018/12/20
  • メディア: Kindle
 
バレリーナ 踊り続ける理由 (河出文庫)

バレリーナ 踊り続ける理由 (河出文庫)

  • 作者:吉田都
  • 発売日: 2019/07/05
  • メディア: 文庫
 
少年の名はジルベール (小学館文庫)

少年の名はジルベール (小学館文庫)

 
「集合と位相」をなぜ学ぶのか ― 数学の基礎として根づくまでの歴史

「集合と位相」をなぜ学ぶのか ― 数学の基礎として根づくまでの歴史

  • 作者:藤田 博司
  • 発売日: 2018/03/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
風姿花伝 (岩波文庫)

風姿花伝 (岩波文庫)

  • 作者:世阿弥
  • 発売日: 1958/10/25
  • メディア: 文庫
 
セロトニン

セロトニン

 
戦争は女の顔をしていない 1

戦争は女の顔をしていない 1

 
グヤバノ・ホリデー

グヤバノ・ホリデー

  • 作者:panpanya
  • 発売日: 2019/01/31
  • メディア: コミック
 
ハーモニー(1) (角川コミックス・エース)

ハーモニー(1) (角川コミックス・エース)

 

くなったので、年明け以降のあれこれはまた別の機会に。