2023年の思い出

 昨年に引き続き世界的には不安定な情勢は続くながらも、コロナに関しては国内的には日常への回帰を目指す流れとなった2023年、自分に関して言えば(世間に遅れをとる格好というか、いかにも”鈍い”人という感じで)この年末、遂にコロナに罹患することとなった。

この年末年始は暦上の休日配置がきわめて味のよいものであり、上手くやれば12月23日〜1月8日まで夢の17連休も射程といった中、自分としても(年明けこそ暦通りの稼働となったものの)12/23から意気揚々と連休に入り12連休を享受せんとしていた矢先のコロナ罹患であり、(今日は漸く一日の多くを通常営業で過ごせるまで回復したものの)年末殆どを臥せて過ごすこととなり非常に無念であった。というかおよそ成人後に体験したことのほどの高熱と倦怠感、それに次ぐ喉の激痛など、二度と経験したくない類のものであった。

それは兎も角、今年2023年は、2022年を(昨年の総括  "The Way To A New Beginning"の通り)「序」とするなら「破」に相当する年であった。

後述の通り、上手く運んだ点とそうでない点、劇的な変化を経た要素と存外、といった要素のマーブルのような感じではあるのだが、良くも悪くも色々転換点としての年と、後々まで位置づけられそうなものであった。

大学院関連(その後)

今年は年度が明けて連休ぐらいまでは昨年の心残りのネタに継続的に時間を投入して、問題の所在や何が困りごとであるのかを自分なりに漸く言語化した、と思っていたのだが、その後は昨年度以上の劣悪な労働環境の下、結局まとまった時間と集中を投入できず研究はほぼできずであった。ここまで来ると事実上の死体と言わざるを得ない。

特筆すべきこととしては、大変過分なことに某研究会から招待頂き、夏に話す機会があったのは喜ばしいことであった。ほぼD論の発表スライドの再構成だったが存外ちゃんと話せたし、単著で書いた予稿を先生に見せた折にポジティブな反応があったのも個人的には嬉しいことであった。当日の研究会の雰囲気も、こじんまりとしながらもやり取りがある、(初参加にも関わらず)どこか学生のときに見たような、良い雰囲気の場に感じられた。

何より(たとえ中身が大したことなくとも)自分のやったことについて人に話すことのやり甲斐や、更には一定以上の専門性を持った人とそれについてのやり取りを行うことの価値を再認識したのが、現状諸業務で煩わされている中では印象深いことであった。

研究会が終わり神奈川の猛烈な夏空の下で、ここにあった一瞬の爽快さと、これから又帰っていく日々の停滞という対照さ加減には、非常に複雑な思いを覚えずにはいられなかった。

後は、過去の論文に漸く身内以外の引用がついたのは一応良いことであった。

 

その他、業務の合間を縫って聴講したIBIS2023はすごく面白かった(特に最適輸送のセッション)。これにポスター出せるようになりたいものだが。

 

将棋関連

藤井八冠爆誕、の歴史的一年ではあったが、個人的にはタイトル戦としての結果は(ことここまで至ってしまうと)驚くべきもの・興味を引くものとはもはや言い難く。

どちらかというと、その過程での他の棋士の見せる対策や、藤井聡太という圧倒的な存在に対峙する姿が涙を誘うものであった。実際年明けの王将戦第2局(羽生九段の▲8二金)と、王座戦第4局の▲5三馬(厳密にはその後の一連の流れ)を見て、普通に泣いてしまった。まさか一年で将棋見て二度泣く事があるとは思わなんだ。

それはさておき、囲碁や野球と違って「世界編」がない以上、何らかのレギュレーションにより”Next Step”を用意しないと、いよいよ興行としての面白みはなくなってしまうのでは*1。連盟の最優先事項だと思われる。

 

 

その他、昨年少し書いたレーティングベスト32のスレッショルドが1700点からズレているかどうか問題だが、今年は1700点に回帰していましたね。単なる一時的なブレだったようだが、そうなると一層ブレの扱いなど気になるところである(何も理解を深められていない)。

 

読んだ本

今年は本当に本が通読できない(含漫画)、という意味で絶望的な1年だった。映画に寄せすぎ、というのはあるのだが、実際問題として細切れ時間だと読む気が起きず、ベッドで多少抵抗するもすぐ寝落ち、みたいなので読みさしの断片ばかりが嵩む一方である。

読んだ中では「ハマータウンの野郎ども」はなかなか身につまされる内容だったが、面白かった。5月頃までは多少は人間的な生活だったので、この頃に積年の思い煩いを昇華できたのは良かった。

あとは映画「覇王別姫」からの派生で読んだ「私の紅衛兵時代」。

(当然)自分がやるわけではないんだが、まあ常識というか共通言語の理解のため。

これは途中までしか読んでいないが。中身は豊富で興味深いながらも、段々仕事の資料読んでいるみたいな気持ちになってきて朝晩の電車では読みたくなくなってしまったので。

漫画

漫画も今年はろくすっぽ読んでいない。昨年から追加で新しく読んだのは「呪術廻戦」のみ。ミーハーで申し訳ないが。正直どっかで見た感のあるものしか出てこないのでストレスフルではないといえば嘘なのだが、偶に大当たりを飛ばすイメージなので追っている感じ。具体的には24巻あたりのびっくりとか、後は単行本になってないが、漫才の件とか。特に後者は個人的には週刊まで見に行った甲斐があるものだと感じた。

 

文脈のため評価が非常に悩ましいが…

映画新作

今年は2019年以来?素晴らしい映画の連続だった!本当に豊作。

旧作と合わせて昨年の宣言の通り、それなりに数が増やせたし、良いものを見たという実感もある。来年以降もメインの趣味になるだろうか。

以下枠内は基本見た順。

特に良かった枠

ムーンエイジ・デイドリーム

自分はボウイにこれまでほぼハマってこなかったので、半信半疑みたいな感じで見に行ったところもあるのだが、実際に見てみてその先進性にショックを受けた。映画としても超格好良い。とても気に入った。

TAR

ケイト・ブランシェット様の鬼演技に圧倒されていると、瞬く間に150分が過ぎる傑作

*2。音楽とサウンドも良い。「ジョーカー」の人と思うが。

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン

非常にこってりな話と強力な役者陣で満足感が強い内容。個人的にはスコセッシで見た中でも好みの方に来るかもしれない(網羅的に見ていないが)。特筆すべきはやはりディカプリオの顔芸七変化だが、ヒロイン役も素晴らしい。

かなり良かった枠

RRR

内容は大変面白可笑しくエンジョイした、が、最後まで見進めるとやや手放しで褒めるのに自信がなくなる。流石に日本の90年代を経た我々がこれをオールオッケーと言ってしまうのはどうなの、という気がした。

中島みゆき ライブヒストリー2

コンテンツが尽く強すぎる。この映画で言えば、蕎麦屋、化粧、あした、歌姫、誕生など隙がない。一期一会とかもライブ版を聞くと打たれるものがある。個人的にも昨年秋〜冬の苦境はシングルサブスク解禁がなければとても耐え得なかった。

一方で映像は、はっきり言ってこだわりもなく必ずしも…なので映画として見るのはどーなの、という側面もあるのだが。

エンパイア・オブ・ライト

みんなあんまり褒めていないが、私はこの類の話に弱いので。昨年〜今年春にかけてのアカデミー賞関係で上映した一連の作品だと(TARは一段抜けてるとして)これとフェイブルマンズが特に個人的にはツボ。

フェイブルマンズ

一緒に見に行った人は全然ハマっていなくてショックだったが、別に(自分のような)スピルバーグが直撃していない人にとっても、きわめて普遍的な題材ながら超面白い。映画が上手すぎる(もとから映画が上手すぎる人の自伝なのだが)。

THE FIRST SLUM DUNK

みんな褒めていると、すぐには見に行きたくなくなるというのが人情で…

だが、思い入れが強くない人間としても存外良かった。特に驚いたのは音。ボールの音、靴の音とこだわり・臨場感が素晴らしい。

ベネデッタ

自分は不謹慎系は好きなので、「特に良かった枠」でもありっちゃありではあったが、まあトータルで見ると上3つ比では強度的にやや落ちるか。ただこれも監督のキリスト教への並々ならぬ思いが結実しており最高であった。

怪物

子供二人の素晴らしさ、に尽きるだろうか。

二人の大人が廃棄車両を覗き込むときの、黒にポツポツと白い点のような光が落ちる画面が素晴らしい。また、何より二人の子供のけんけんは、「パリ・テキサス」の親子で道路を挟んで歩くところに匹敵する名シーン。

面白い、が事前に期待しすぎた感もあり、もしかしたら「良かった枠」かもしれない。しかし鎧を着ていても西島秀俊仮面ライダーBLACK SUNに見えるのには参った。

良かった枠

イニシェリン島の精霊

みんな褒めていると、無邪気に上に位置づけたくなくなるというのが人情で…

確かに見ている最中は面白いのだが、見終わって「結局?」という気持ちになるというか、何度も何度も見ることはないように感じる。

いつかの君にわかること

子役が愛らしい。

アフターサン

自分が筋重視だからかもだが、やや褒められ過ぎでは?という気はしなくもない。

コナン新作 

加齢aiという(内輪的には)キャッチーな話で、世間的に言われる前に、「これあったらコナンバレるじゃん」、というのをやる、という流石な話。思ったよりは楽しめた。

しかし、色々だれてきたら突然クイズが始まるとか、最近の映画は大変だなとか。

ところで阿笠博士の口癖って「ゾイ」でしたっけ?

君たちはどう生きるか 

ものすごく変だがこれはこれで良い。本当の児童文学を最後にやったな、という感じ。

後はやはり冒頭の火事の場面での絵の異様なレベルとかが印象深い。

ゴジラ-1.0

全くつまらなくはないが、2回見るかは微妙。しかし安藤サクラが出てくると、そこだけ手合違いの演技力で笑った。一人だけ子供の遊びに、後々プロになる人が混ざっているような温度感というか。

微妙枠

ヒトラーのための虐殺会議

非常に悩ましいが、やはり映画という媒体でなくともよいのでは?という気がする。

ザ・ホエール

主演のブレンダン・フレイザーの評価が大変高いが、「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」の嫌な弁護士のほうが印象深い、というのは言い過ぎか。それはともかく、個人的には話の魅力、舞台を映画化することの難しさ、的な所で難を感じた。

シン・仮面ライダー

これは予告編からの期待の高まりを受けた落差もあるのだが。しかし不完全燃焼の中、よーく考えて見ると、監督はすごく誠実な人であるがゆえに、結局毎回同じテーマ同じ造形に陥っていく、という考え方もできなくもないと感じた。

後、やっぱり現代でやると戦闘場面がCGになるのがなー、昭和ライダーのビデオで育った人間としては不満である。とはいえ昭和のままやれとも言えず、代案はないのだが。

リトル・マーメイド

絵がどーこーとか、PCがどーこーとか云々の前に、やっぱり話が面白くないとなー、という気がしました。

ヒッチコックの映画術

やはり原作を読むべきであったか。

 

映画旧作

特に良かった枠

都会のアリス

素晴らしい。もっとも最初にやられたのはアリス登場以前の冒頭の独身男の荒み具合で、異常独身男性のイデアか、と思わず得心がいってしまったが。

それはともかく、子供のわがままさ、と本質直観的な部分といい、可愛い子供の撮り方というのを実に心得た作者の面目躍如というところ。

後はまあ、それだけでなく、やはりさすらい、というものの意味が言葉でなく心で実感できるという意味で素晴らしい映画。ロードムービーの始祖というのも納得。

覇王別姫

オールタイムベスト入り待ったなし。今年は相当素晴らしい映画を見られたが、その中でも旧作文句なしのダントツ一位です。

レスリー・チャンの極まった演技と美貌をはじめ、チャン・フォンイーコン・リーといった強力な主役陣、耳を離れぬ京劇の音楽、中国の歴史とはこう描くのだ、(ラストエンペラーなどは手ぬるい)との叫びが聞こえてきそうな壮大なスケール感と哀愁、実に中国知識人らしい辛辣さ、そしてその中で翻弄される登場人物を描いたストーリー、そして必然とでも言うべき最初の場面への収斂、と、まさしく非の打ち所がない。

アラビアのロレンス

遂に積年の思い煩いを解消した。それはともかく、あまりに完璧な出来杉君のような映画というか、困惑するレベルで非の打ち所がない一方で、自分のガチ好み路線ではない、というところが悩ましくもあり。ピーター・オトュールの素晴らしさもさることながら、やはり主役は砂漠の圧倒的風景。騎馬の場面といい、現代っ子的にはCGなしでこれって本当?という感じ。あとは、やはり日を消したら砂漠の日の出に移行するところのシャレオツさ。都会のアリスの、タワーの電気を吹き消すところの元ネタってこれか!?という感じ。

パプリカ

遂に今年、見よう見ようと思いながら手が行っていなかった今敏監督の映画を集中的に視聴した。あまりのレベルの高さに愕然としつつ、どれをイチオシとするかは日によっても変わりそうなのだが、強いて言えば「千年女優」かこれ。(「パーフェクト・ブルー」は最高なのだが、やはり絵がさらなる発展の道半ば、という感じなので。)アイディア・強力な絵・平沢進の音楽、と三つの幸せな邂逅で、他の追随を許さぬ印象。これを見ると始祖に勝るものなし、というか、「インセプション」をわざわざ見返す機会はなくなってしまうかも。

アメリ

これも複数回見ているのだが、やはり良いものは良いということで。最の高。70年代少女漫画に感性をやられている人間からすれば、話がガチ好みなのはもちろんだが、今回4Kということで、アングルとかの異常なセンスの塊ぶりについても再認識しながら楽しく見れた。

かなり良かった枠

パリオペラ座 オーレリ・デュポン引退公演「マノン」

バレエを今までちゃんと見たことがなかったので、おっかなびっくりだったが、かなり良かった。人間の動きがきれいすぎる。話がリアルタイムでは理解するのが大変だったが。最後の引退の場面も良かった。

ファニーとアレクサンデル

流石に長い。もっとタイトにしてほしいしできるはず。まあしかし、総決算的な目配せがいくつもあるし、それにとどまらず、ベルイマン流「百年の孤独」とでも言うべき内容は面白かった。ゴッドマザー(大竹しのぶに似すぎ)の存在がそう思わせるのか。

やや脱線気味だが、「家族と責任」というテーマは実にタイムリーでもあり。だが、どんなにダメ人間に見える人々(庵野秀明に似すぎ)でも、やはりいざという時には家族のために外に出ていって談判するわけで、これができる能力があるか、というのが本質というのが示されているのは重要な点。

後やはりラスト(ストリンドベリの「夢の戯曲」を読む件)は泣いてしまう。

沈黙

2度目見て、多少頭の中に中身が整理されて入ってきたつもり。それにしてもベルイマン流の交わらぬ視線の構図が切れすぎる。


鏡の中にある如く

2度目だが、絵が想像以上に美しい。船の中の退廃的な様子とかすごい。現状一つたりとも外れのないベルイマン映画だが、その中でも割合好みかもしれない。

仁義なき戦い

これも大変良かった。目を背けたくなるような流血描写も少なくない一方で、荒々しさ、迫力、煤けぶりと満足感も強い。

パリ・オペラ座バレエ 「白鳥の湖」(ヌレエフ、2019版)

無教養なので、これを見て漸く下の動画の元ネタが分かった。

なお、この動画は(各作品を見ずとも)これだけ見てもあまりの美しさに泣ける(泣いた)ぐらいに素晴らしいので宣伝。

www.youtube.com

 

脱線だったが、肝心のバレエに関しても動きも素晴らしく楽しんだほか、(自分は知らなかったが)上野水香さんのトークもついてきたのでお得感があった。

マルサの女

話が面白いのはもとより、ギトギト系の絵、プログレの名残の音楽、主人公の他にも山崎努津川雅彦はじめ良い俳優と、大変エンジョイした。

日本のいちばん長い日

これも複数回見ているので、というのがあって、ここだが、「特に〜枠」でも全く、というぐらいの面白さ。会議がメインディッシュなのだが、その他にも群衆が動くと面白い、というのも発見である。

E.T.

「フェイブルマンズ」があまりにも良かったので、ちゃんと見ることにしたが、これは(子供向けではなく)日々にすり減らされた大人向けの映画ですね。主人公の子供の演技が素晴らしいのはもとより、ラストの主人公の兄の「僕こそ」では号泣不可避。

パーフェクト・ブルー

25年前とは信じがたい。新作でも全然行ける。事前情報ゼロで見て超良かった。

怒りの日

コロナにかかる直前にイメージフォーラムに見に行ったもの。前回のドライヤー特集でも個人的トラブルで見れなかったので、今回見れたのは良かった。音楽、女優の目力が見どころだと思うのだが、しかしやはりあらゆる場面が目を引きつける「奇跡」ほどの力はない印象。

「ガートルード」なり他の作品なりもぜひ見ないといけないので、年明け復活したら行く予定。

千年女優

今年の見納め。よろける場面とかちょっとしたところの動きの絵が異常な水準でビビる。もちろん大筋の始まって早々に虚構と現実が入り混ぜになっていくところも実に楽しく、ラストも「パーフェクト・ブルー」に続く第二作と思えば全く違和感なく、極めて高水準。

良かった枠

パワー・オブ・ザ・ドッグ

風景の美しさ、不穏な音楽はよい。だがなぜ急接近を許したのか、とか細かいところにやや違和感。あと全体的に自分はやはり飲んだくれへの評価が低いので、すんなり入ってこない。

鏡の中の女

平日に新文芸座に見に行こうと画策していた所、fxxkinな人への糞対応のために入場が遅れたことを1年後の今でも根に持っている。一方で映画として印象は強くないが。

ベルリン・天使の詩

積年の思い煩いの解消、なのだが冷静にそんなでもなくないか。

薔薇の名前

これは「かなり良かった枠」の可能性もある。謎解きをやらないスタイルが映画という形式と良くマッチ。見立て殺人のシュールさ、燃える図書館なども面白ポイント。

音楽は最後の方のエレクトーン風のチープなのが減点だけどそこまでは良かった。

ラストエンペラー

人間讃歌的なラストが良いものの、ただ、内容はどうだろうか。その他、テーマ曲がMr.Siriusの”Barren Dream”を想起させる。

MIFUNE The Last Samurai

配信で見たが、そこそこ面白かった。八千草薫の美人ぶりにビビる。

ミツバチのささやき 

午前10時の映画祭が決まったときに、今年こそは、と思っていたもののうちの一つ(もう一つは「暗殺の森」)。だが、子役とカット(中央に扉や窓があって光が入ってくるカット)は印象深いものの、それ以上のものがあるかどうか。

親密さ

長い。もう少しまとめられたはず。と言いつつ、贅沢な時間の使い方が何か特別なものを生み出すのに一役買っているのは否めないので、これはこれで。

非常に文脈過多な映画であり、その中ではやはり、言葉が掴みきれないもの、言葉にしようとしないものこそが欲望か、と気づく。

その他、個人的マイナスポイントとして、ポツポツ出してくる東大的記号の目配せが鼻につく等。瀬佐味亭の虎ノ門店(赤門前の昔からある担々麺屋だが、官僚が味を懐かしんで食べたい希望を出したから虎ノ門に出店したとかいう経緯があったはず)とか、播磨坂の件とか。映画に集中させてくれ。

犬神家の一族(1976年版)

配信でやっていたので、遂に通しで見た。見てる最中はおお、これがあの…みたいな感じでこれはこれでまあ面白いな、という感じではあったが、冷静に今年のラインナップに並べると「微妙枠」かもしれない。やっぱり探偵に魅力がないよね、申し訳ないけど。

微妙枠

ソナチネ

そんなに面白いだろうか、という印象。

暗殺の森

かなり期待大だったのだが、これ、そんなに面白いか???、という印象。

音楽

今年はライブは行かず。で、ここに入れるのが適切か良くわからないが、遂に宝塚を見に行くことと相成った。いや、確かにこれまで見ていないのが不思議なぐらいであって、という感じな一方、このタイミングでなのか、という印象ではあるが。

見たのは月組の「応天の門」と星組の「1789」。でかい階段におお、これがあの...とか圧倒されながら見て、これはこれであり(音楽も全体的に覚えやすくキャッチーだし)とか思って存外楽しんでいた。

 

展覧会

今年は大して行けず。その中でダントツで良かったのは「テート美術館展 光」。有識者には受けが悪い様子だったが、個人的には(この類の展示だと最後に申し訳程度に数点出てくる印象の)現代美術の領域に相応にスペースが取られ、かつ鑑賞者がインタラクティブな形で、ああ、こういう流れでこういう展示、こういうアイディアに至っているのか、ということを実感できる、そうしたアイディアの一端が垣間見えただけでものすごく楽しいイベントだった。

その他、年明けのアーティゾンのパリ・オペラ座は思いの外見ごたえがあってよかった。一方、若冲を売りにした出光美術館の展示は点数も限られ不満。マチス展、ルーブル展も行ったが、それほどか。

 

ゲーム

今年は心待ちにしてきた”Tears of the Kingdom”発売の年だったが、前述の通り6月頃から徐々に労働環境が悪くなってきたため、実はクリアできず放置の状況という痛ましい事態となっている。風と炎の神殿をクリアして、水の神殿の途中で止まっている状態。

しかしあまりに自由度が高く・かつ面白すぎるゲームというのも現実との相克という感じで悩ましいものだなと思ったり。

 

で、クリアしたゲームとしては、我が心の一本「スーパーマリオRPG」リメイク。これについてはリメイクぶりがきわめて高い精度のものとして各所で激賞されており、実際やり心地がここまで維持されていることには驚かされる…が、細かい演出の変更には不満があったり。以下、超めんどくさい小言です。

まあ、一言でいうと、「喋らない主人公たるマリオはジャンプで語る」という要素はもっとしっかり追求すべきだったのでは?という点に尽きる。たとえばクッパ城への橋が落ちた後、マリオの家から進んでクッパ城を見に行く演出があるが、そこでは画面が横に流れてカリバーの刺さったクッパ城が見え、それを見てマリオが複数回跳ねる(ことでモチベーションが示される)、というのがSFC版だが、このクッパ城の見えて来方はじめ演出変更に不満があったり。

あとは最後、カジオー戦に関してムービーを入れたのは別に良いのだが、一貫してここまでマリオの世界vs. 武器世界という構図を作って、最後挑みかかるところもジャンプして挑みかかる(マリオの文法)としている訳だから、ムービーを使おうが何しようがそこはちゃんと維持して、ジャンプでエンカウントしてカジオー戦に移行してほしかった。

そんな感じで個人的には、操作感、セリフ、音楽とかは信じられないほど精度良く保っている一方で、「構造」に基づく演出はあと一歩を欠いている印象を持ったが、まあそれはそれとして、十分すぎるほどこのゲーム面白いので、過去手に取ってない方にはぜひ一度勧めたくはある。

個人的にはすごいものとすごいものを足したらものすごいものが出来た、という(当時で言えばクロノ・トリガーのような)内容よりもむしろ、このゲームのような(任天堂とsquareという)通常交わらないようなものをあえて混ぜて化学反応した結果、(このゲームのように)とんでもなく妙(だが力はこもっていて素晴らしい)なものができる、というのを非常に好むようになった性癖の源流とでも言うべき思い出のゲームであり、今回当時の感触を持って楽しむことが出来たのは非常に幸せなことであった。

 

その他

その他、今年は積年の思い患い(というほどでもないが)だったり会社の無駄な圧力とかで資格を無駄に取ることとなった。

具体的には、前者で言えば、過去不戦敗したり普通に計算能力がのろすぎて試験に落ちたりしていた、統計検定1級にようやっと合格した。正直問題がもはや高校数学をいかに高速・正確にできますか、みたいな方向に近づいているため、加齢とともに合格期待値が下がっていくイメージしか持てず、今回無理ならきつそうだと思っていたので、ラッキーであった。まあこちらは世間一般的にも一定の認知度があるものなので、まあ一ミリも嬉しくないといえば厳密には嘘になる。

後者は、会社から取得圧がかかっていた社外の資格として、ジャイアンのトレーナーに記載されてそうな名前のついた検定と、今はなき岩田聡時代の携帯ゲーム機みたいな名前の検定に合格した。どちらも4択式で正直成人済の人間がやるには知的に耐えないような内容だが、実に悲しいことには「報奨金」/「取得対応の時間」の値が通常働いている際の単価よりも高く、本当にこういうのはやめてほしいものである。

後、今年は某所にて自分が以下に英語力がないか、それによって不利益を囲っているかが明らかになる出来事があり、かなり精神的にダメージを受けた。具体的にはビジネス的局面でself-introductionを求められたのだが、全く想定していなかったので中学英会話みたいな受け答えをしてお通夜状態になるなど。(真の)課題が英語、というのはこれまで見て見ぬふりをしてきたことであったが、いよいよ逃げおおせができなくなってきた感がある。

 

なお、プライベート的側面では現在進行系で色々激流ワイン川下りのようなことになっており、その辺はいずれ正式に諸々決まった段階で(来年末にでも)更新したい。

 

*1:とはいえ、ルール自体でハンデを設けるには他のトップ棋士とのレーティング差が250点、というのは微妙・不足、というのは分からないでもない。その意味では藤井八冠が「まだまだ実力不足」、というのを、そういう意味で捉えての観戦の楽しみ方もあるのかもしれない、というのは意地が悪すぎだろうか。過去の王将戦で、香落ち差し込み実現なるかにドキドキするファンと同様の感覚で観戦するイメージ。

*2:英語も聞き取りやすいし