2020年の思い出
2020年はコロナを筆頭に外部環境が目まぐるしく変化し、それにまごつき戸惑う中で、あっという間に過ぎてしまったという印象の一年であった。
研究に関しては、年も終わりが見えつつある11月頃に、立て続けに論文の採択が発表されたが、土壇場の状況変化により急遽様々な対応(というか要はD論執筆だが)に追われる激動の日々となった。繁忙期と重なって11月から12月中旬はかなり厳しかった。とはいえまだ何も決まっておらず、年明け以降が正念場だが。
一方で上記の話は、中身の本質的な部分は昨年までに一段落しているものであり、その意味で新しいネタに本来取り組むべきなのだが、それについては(面白げな話に触りつつも)腰を据えて当たれておらず反省が多い。永瀬王座が将棋世界かWebかのインタビューで、「コロナ禍下の緊急事態宣言下でどう将棋に取り組むかで、終わった後に絶対に人ごとに大きな差がつくと思ったので必死に取り組んだ」みたいなことを言っていたと思うが、その意味では正しく駄目な側のお手本のようであった。
昨年の総括で取り上げた話題で言えば、映画については世相の影響もあって外出機会が減ったので全然見れていない。
新作では4月頃にオンラインで見た「ホドロフスキーのサイコマジック」は良かった。(どうも精神的に参っていると、この類のものに弱くなる傾向がある)
昨年期待していた「ミッドサマー」は作り手の性格の悪さと賢さが遺憾なく発揮された良いものと感じたが、その後見た「へレディティ」の方が全体的には綺麗で好みであった。
鳴り物入りの「TENET」は、時間あたりの情報密度がとにかく多く、脳へのジャンク投入、という観点では良かった(終了後に自分で時系列を書き下して答え合わせをしてしまった)が、何度でも見たい、という類の作品かは微妙。
どうでも良いが、予告で洋上風力発電をクローズしていて、それで題名が「TENET」というのも、洒落のつもりがあるのか、と気にしていた(一部では、本当にそうだ、という向きもあったが)が、特に本編では当然ながらメンションはなかった。
旧作込みでは一番よかったのは、20年以上ぶりに映画館で見た「もののけ姫」だった。小学生のときに映画館で直接見た最初のジブリ映画であり、かつメイキングの「もののけ姫はこうしてうまれた」がものを作るということの一つの極限という感じで凄すぎる内容(TVで放映していたのを子供の頃に見たが、森繁久彌と美輪明宏が、こうしてほしい、という要望を宮崎駿から受けると忽ちまさしく变化するように演技を変えていく、しかもそこで終わりとならずにさらなる試行錯誤を重ねて化けていくところや、スタッフの苦悩が滲む件をはじめ、今でも様々な場面が想起される)で強い印象を受けた作品であったが、そのバイアスを抜きにしても手合違いと感じた。冒頭から音と絵の実力に圧倒されてそちらに意識を持っていかれるがために、話の本筋をリアルタイムで追うために意識をそちらに向けるのに難儀するようなアニメが果たしてどれだけあるか。
後は、8月に見た「ゆきゆきて神軍」はひたすら圧巻だった。今年初めて見たもので最も見てよかったのはこれかもしれない。百聞は一見に如かず。メイキングの本も読んでしまった。
その他は恵比寿で「8 1/2」など見るがピンと来ず。(本当はアマルコルドが見たかったが予定が合わせきれず見れなかった)
ゲームについては、昨年投稿した論文が(分野の通例ということだが)半年たって漸く音信あり、その後Reviseしてもなしのつぶて、みたいな状況だったので不貞腐れていたところに、突如降ってきたSwitch Onlineへのスーパードンキーコング3部作の投入が大事件であった。という訳で箍が外れたが如く、夏から秋にかけてせっせと1,2をクリアしていた。特に2は初めてやったが、難易度調整が(1の比ではないにもかかわらず)実に絶妙で、一つのステージで30回-50回ぐらい死んでいるとプレイヤーの操作レベルが上ってできるようになる、という仕組みで(研究や仕事では容易に得られない達成感へ久しぶりにアクセスでき)とても感動した。イギリスの宝ことDavid wiseの音楽については言うまでもない。(自分は1の「ふぶきの谷」のBGMはじめ、FisherのBGMもかなり好きだが)
後一連の過程の中で、スーパードンキーコングRTAの動画を頻繁に見ることになり、それを通じて(自分ではやらないながらも)RTAという分野にアクセスすることができたのが嬉しいことであった。ドンキーコングに限らず、さまざまな分野の動画を見る機会ができたが、いずれもまさに人類の可能性を切り拓いている、という趣で、苦労や技芸が詳細に分かるわけではないが、非常に心動かされるものがある。(ここに来て漸く「観る将」の気持ちとされるものが分かった気分になった)
年末もRTA in Japanのオンライン放送のお陰でとても充実した気持ちで年を超すことができた。(シャーロック・ホームズ、ファイナルソード、クロックタワートリロジー、ダークソウルリマスター、朧村正、マリオランドトリロジー、新旧ゼルダなどエンジョイしてしまった。)
音楽は、イベントはほぼ参加せず。1月に中野サンプラザに"CHRONO CROSS 20th Anniversary Live"を聞きに行ったぐらい。アレンジで化けるものもあり(「世界のへそ」など)想像の5億倍プログレであった。
しかしはや21年、ということで今年こそCrimsonが来る予定のはずだったのだが…早くコロナが収まることを願いたい。後は今年の3月こそ、だろうか。
長くなりすぎて疲れたので、本と漫画については、列挙するに留める。
去年読んだもののうち、特に良かったものは、「ブルシット・ジョブ」、「社会科学のためのベイズ統計モデリング」、「藤井猛全局集」、「新型コロナからいのちを守れ!」
良かったものは、「箱男」、「一日一つだけ強くなる」、「マックス・ウェーバー」、「証言 羽生世代」、「はじめてのスピノザ」、「竹中平蔵 市場と権力」、「ワークマン式「しない経営」「ドキュメント ゆきゆきて神軍」
、まあまあだったのは「自発的隷従論」、「現代将棋を読み解く7つの理論」、「未来の医療年表」
しかし、全体通じて量も質も自分は本当にしっかりした本が読めなくなってるのだな、と落胆する。
漫画で良かったのは「数字であそぼ。」(これは本当にすごい。「動物のお医者さん」の再来)、「おむすびの転がる街」、「きりひと讃歌」(主人公の同僚が人ごとに見えないのと、顔芸が印象深い)、「風の谷のナウシカ」(通読して、あまりの重さに疲れ果てた)。
悲しいことに自分が昨年一生懸命読み始め、非常に面白く読んでいた「アクタージュ」はなくなってしまったので、今後継続して読むものがあるとよいのだが。後は時事ネタだと「鬼滅の刃」は最初4巻ぐらいまで読んで「言われているほど面白がれないな…」とか思っていたが、その後あまりに身の回りでも話が出るようになったので読み直して18巻ぐらいまで読んで置いてある。最初の頃はネーム一発でどこまで運ぶか、みたいな節もあり、割と変わり種的な立ち位置の話だと思っていた(大筋はありがちなので、そういった目新しさが売りか?と思った)が、途中から普通のキャラドリヴンのよくある漫画みたいになって分かりやすくなった(よくある面白い漫画になって、世の中的に受容しやすくなった)、という印象。表紙がその象徴か(最初の頃は表紙が常に主人公と別のキャラ2体となっていたりして、関係性を推す意図かもだがそういったものをあまり見ない印象だったが、その後は表紙は単独のキャラのみになってありがちになった)
その他、「旅行」タグをつけているが、2月(!)にヨーロッパに行く機会があった。正しく行けるか否かの瀬戸際、という所で行くことになった、という所であり、詳細は略だが、珍しく時間に余裕がある旅程であった(とはいえ飛行機が強風で飛べなくなって結果急遽12時間鉄道に乗る羽目になったりアクシデントとは未だに縁が切れないのだが。スキポールでは以前もトラブルに見舞われており、実に相性が悪いと言わざるを得ない)。
中でもオランダでは様々な良い経験ができ、オフの部分ではとりわけConcertgebouwに行くことができたのは("The Night Watch"の聖地巡礼的な意味でも)得難い機会だった。(イギリスでもHyde Parkにニアミスだったが、こちらは横目で見るに終わる。)音響はド素人の自分でも、安い席にもかかわらず、音の耳への入り方がまるで異なるように感じられるものであった。その他、フェルメールについての自己認識(解像度)がかなり改善された。
後はラジオを聞くようになったのが多少なりの変化か。