応天の門 9
2つ下のエントリーに書き忘れた。安定感。
見た映画たち
今度の学会発表を控えて尻に火がついていた(スライドは漸く作ったが練習がまだ)のでまた期間が空いてしまったが備忘のため。
■七人の侍
6月に午前10時の映画祭で。見るのは二度目か。期間をあけずに、でかい画面で見られるのは有り難い。前回よりもかなり落ち着いてあちこち見られた気がする。
ミーハーであれだが6月末に見る。予想を遥かに上回るもので、とても良かったのだが、個人的にはいわゆる「(暮らしの厳しい)家族の生活のリアル」がよく書けている、的な評で取り上げられる例(コロッケ等の揚げ物が(高カロリー低コスト故に)好物になるところ、葡萄については種無しで粒が小さい(安い種類の)ものしか食べないところ、家の中でものの占有率が高いところ、など)が尽く自分の生活(で別段何も思っていなかったところ)と合致した点が印象深い。
それはさておき、(24年組の漫画たちに衝撃を受け続けてきた身としては)大筋や主張についてはまあそうね、という感じなのだが、この生活の形態を「家族」と呼びたがる(登場人物たちがそう呼びたがる、という意味でもそうだし、この映画自体においてそれ(「家族」の定義付け)がテーマになりうる)所については考えどころ、という気はする。あくまで過渡的な状況下での帰結であってほしいというか。
本も読んだが、映画のほうが媒体としてはよく出来ている気がする。
■東京物語
角川シネマで見る。奇しくも上とある種オーバーラップのあるような話で(ドライビングフォースが異なるわけだが)、初回でさらっと見てしまったために、大筋については、はあそうですか、という感じであったわけだが、どうも細かい所の気の配りようが相当優れたものであったよう。
■蜘蛛巣城
池袋で見る。乱より面白い気はするが古めかしさは否めず。
読んだ本たち
ひどく時間が空いてしまったので、ここ2,3ヶ月ぐらいの備忘録として。
未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)
- 作者: 河合雅司
- 出版社/メーカー: 講談社
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ある程度わかったこととはいえ、暗澹たる気分になる他ない。
「身体」と「知」の対比という構図から、個人のうつの経験と現在の日本の惨状を同時に切り取ってみせる語りの切れ(そして自らの経験すらもそのように距離をおいて著述しうる様)に、歴史家の凄みを感じさせる本。
(本書の一部であるハウツー的な内容に関して)必要をなんとなく感じて軽い気持ちで手に取るが、 予想よりも政治的な内容について書かれた本であった。内容については知らないことが多かったのでそれは良いが、もう少し第三者的に書いてほしかったり。
思ったよりも大分典型的というか、はっきり言えば落胆させられるところもあり。
何というか、もう少し「速度が上がりすぎてカーブを曲がりきれなかった」感じ以外の方向はないものかと思うのだが。
やはり面白くない。
前巻とは打って変わって滅茶苦茶出来が良い!正直はずれがない。イチオシは「望月家のお月見」(高野文子もかくや、という感じ)と「ザ・ラン」(常にこのレベルを維持してほしいのだが)
アニメ化でとてつもなく腹立たしい思いをさせられたところであったが、 本家は当然ながら素晴らしく(というか昔の絵にこれだけ雰囲気を近づけられるのはすごい)、大変良い外伝であった。
大丈夫か?という感じ(褒め言葉)。
何だか手堅い系になりつつある?
ニンジャバットマン
天気にせよ行事にせよ何かと気が滅入る季節である6月ではあるが、その中での精神安定要素の一つとして期待するところ少なくないものがあったこの作品(バットマンには詳しくないのだが)。
感想としては、ともすれば我に返って疑問符を浮かべてしまいそうになる摩訶不思議ストーリーをカバーして余りある、高レベルな映像と音楽のドライブ力の成し遂げた好作、という所になるだろうか(ねぷたでのヴィラン大名の紹介とか蝙蝠衆の里の件、レッドフードの件など(折に触れてポプテピピックが想起されつつも)素晴らしい出来栄え)。
それにつけても、スーパーインテリゴリラ(・グロッド)やハーレクインの印象深さといったところを抑えて全てを持っていくのが高木渉演ずるジョーカーで、まさに独壇場。とはいえ、映画でのジャック・ニコルソンのような得も言われぬ不気味さとかはなくて、どちらかといえば、(今回のメカラッシュも合わせて)ばいきんまん、といった所が印象としては近い。
後はやはりそれ以外の悪役の扱いが思いの外、という所はあるか。一応置き換える戦国大名はヴィランの特徴とちゃんとリンクさせるようにしているのだが、如何せん見せ場に乏しくて、誰でも良かった感じも相当にしてしまう。(戦隊ものとかでも赤以外はそんなもの、とか言ってしまえばそれまでだが)。ともあれ全体としては中々面白かった。
ZERO
出だしから一貫して予定調和的な世界が繰り広げられる、とばかり思っていたところ、見事に足元を掬われることに。してやられた感。
それにしても既に光る絵と擬音、間の独特さ。
ZERO―The flower blooms on the ring………alone. (上) (Big spirits comics special)
- 作者: 松本大洋
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「社会調査」のウソ
ともすれば結果だけが取り沙汰される「社会調査」についてはその妥当性が疑わしいものも多く、相当慎重かつ批判的に見ないとだめ、という本。
ためにならないことは無いのだが、本文で取り上げられる例などを見ていると、どちらかというと社会調査の手段の不備によるもの(それが報道などから得られる情報から透けて見える者)よりも、対象とそのドメインの性質に起因する問題へ想像力を働かせるところの方が重要(かつ自分にはそのあたりのある種社会調査の枠から見て「メタ」的なところの検討が難しい)、という話にも見えなくもなく。
「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)
- 作者: 谷岡一郎
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