天人唐草

先日のFlowerに掲載された萩尾望都山岸凉子の対談で、萩尾望都が「どうしてもこの話がしたくて」と持参(!)したのを見て、読むことに。
が、抑圧的な親に人形のようにされた主人公のあまりに悲惨な末路が描かれる表題作や、病弱な体とそれによる祖母による甘やかしなどの背景から慢心や自分への甘さに浸りきった主人公が、働くでもなしに日々を漫然と過ごし、自身の自己評価とは裏腹に徐々に村での立場をなくして精神的に追い込まれ、いかに津山三十人殺しの凶行へと至るかを描いた「負の暗示」を筆頭に、全く救いようなく、しかも身につまされるような話のオンパレード。
抜群に話の出来が良く、気力を振り絞って活路を切り開き切れない人間(とその結果どうしようもない袋小路に至る所)の描き方が的確過ぎるため破壊力が猛烈に強く、かなり精神的に来るが、間違いなく素晴らしい。秋の原画展もぜひ行きたい。

天人唐草 (山岸凉子スペシャルセレクション 5)

天人唐草 (山岸凉子スペシャルセレクション 5)