ニンジャバットマン

天気にせよ行事にせよ何かと気が滅入る季節である6月ではあるが、その中での精神安定要素の一つとして期待するところ少なくないものがあったこの作品(バットマンには詳しくないのだが)。

感想としては、ともすれば我に返って疑問符を浮かべてしまいそうになる摩訶不思議ストーリーをカバーして余りある、高レベルな映像と音楽のドライブ力の成し遂げた好作、という所になるだろうか(ねぷたでのヴィラン大名の紹介とか蝙蝠衆の里の件、レッドフードの件など(折に触れてポプテピピックが想起されつつも)素晴らしい出来栄え)。

それにつけても、スーパーインテリゴリラ(・グロッド)やハーレクインの印象深さといったところを抑えて全てを持っていくのが高木渉演ずるジョーカーで、まさに独壇場。とはいえ、映画でのジャック・ニコルソンのような得も言われぬ不気味さとかはなくて、どちらかといえば、(今回のメカラッシュも合わせて)ばいきんまん、といった所が印象としては近い。

後はやはりそれ以外の悪役の扱いが思いの外、という所はあるか。一応置き換える戦国大名ヴィランの特徴とちゃんとリンクさせるようにしているのだが、如何せん見せ場に乏しくて、誰でも良かった感じも相当にしてしまう。(戦隊ものとかでも赤以外はそんなもの、とか言ってしまえばそれまでだが)。ともあれ全体としては中々面白かった。

百億の昼と千億の夜

最近漫画成分が不足しており、二週間ほど前に読む。確かに阿修羅王は魅力的だし、序盤の風呂敷の広げぷりは引き込まれるところではあるのだが、中盤以降の収束の煮えきらなさが何ともはや(おそらく原作由来だとは思うのだが)。

 

百億の昼と千億の夜 (秋田文庫)

百億の昼と千億の夜 (秋田文庫)

 

 

ZERO

出だしから一貫して予定調和的な世界が繰り広げられる、とばかり思っていたところ、見事に足元を掬われることに。してやられた感。

それにしても既に光る絵と擬音、間の独特さ。

 

ZERO―The flower blooms on the ring………alone. (上) (Big spirits comics special)

ZERO―The flower blooms on the ring………alone. (上) (Big spirits comics special)

 

 

「社会調査」のウソ

ともすれば結果だけが取り沙汰される「社会調査」についてはその妥当性が疑わしいものも多く、相当慎重かつ批判的に見ないとだめ、という本。

ためにならないことは無いのだが、本文で取り上げられる例などを見ていると、どちらかというと社会調査の手段の不備によるもの(それが報道などから得られる情報から透けて見える者)よりも、対象とそのドメインの性質に起因する問題へ想像力を働かせるところの方が重要(かつ自分にはそのあたりのある種社会調査の枠から見て「メタ」的なところの検討が難しい)、という話にも見えなくもなく。

 

「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)

「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)

 

 

プーシキン美術館展

タダ券を手に入れたので先週行ってきた。が、こちらのピントが合っておらず、思ったほどではなかったか。気に入ったのはコルテス「夜のパリ」、シスレー「霜の降りる朝、ルーヴシエンヌ」(「ダージ」のジャケか、とか言いたくなってしまう)。

将棋界 20代の逆襲

高見新叡王誕生記念、ということで。

つい最近公開されたインタビュー、とても面白いので宣伝。

 

news.livedoor.com

これを読むと、確かに応援したくなる。今回のシリーズはまくりだらけだった、とはいえ今後に期待したくなるところである。

で、(例によって)度肝を抜かれる、というかここまで言うのか、という感じで打ちのめされるのが次の永瀬インタビュー。

news.livedoor.com

 

彼の語りは読み手にも覚悟を要求される節があるというか、こちらの精神状態が整っていないと読むのがきついところもあるのだが、本物のプロ意識(のあり方の一つの極値)をひしひしと感じさせられる。(院生のときに一部の人を見て感じた思いに近い)

それはそうと、これだけのことをインタビューで言わせる手腕、というものにも改めて驚く次第。これまでに本になったものは(悪い意味での内輪ノリが目立ち)それほど面白くない印象だったのだが、これは今の所大変面白く、今後にも大いに期待。

 

至上の印象派展 ビュールレ・コレクション

先日行ってきた。終盤かつ連休だったのでえらい混みようでしびれた。

しかし、中身は当初の予想を上回るものであった。初っ端のフランス・ハルスの「男の肖像」の印象派との類似性、という指摘であるとか(デカルト肖像画の作者か!ということに後に気づく。しかし複数回絵を見ているにもかかわらず、こういった所に気づくことはまるでなかった)、歴史的な位置づけを与える構成全体など。絵の点数は多くはないのだが、良かった。特に気に入ったのはセザンヌ「庭師ヴァリエ」、ゴッホ「日没を背に種まく人」(どちらもひと目で参ってしまった)。