統計力学1

この期に及んでまさかの。と言った感じではあるが、9月頃から思うところがあってちまちまと読んでいた。当初は1月ぐらいでさくっとのつもりが、劣悪フェーズに入ったり体を崩したり、遊び呆けているうちにあれよあれよと年末になってしまったのだが、2週ほど前に漸く読み終え。
今度は(前回の反省を踏まえて)少しは問題も解いたり。しかしそれにしてもこの本あまりにも素晴らしすぎる、というかこんなに読んでて面白い本も珍しい。
統計力学の威力をまざまざと感じながら、19世紀〜20世紀初頭の古典物理が一つ完成の段に至ったところから、その範囲でまともに解釈できない現象が現れてきて、当時の綺羅星のような天才たちが悩み苦しんだ問題を通じて量子力学の圧倒的必然性に到達する(そして悉くの分野で並外れた寄与をしてみせるEinsteinの化物ぶりに恐れ入る)、というある種の追体験を、これ程至れり尽くせりの形で味わわせてくれるという、そうそう例のない大変贅沢な経験。
二原子分子の比熱の導出をやりながら、しみじみと、量子力学の本質的な側面の一端を感じるのになんて適切な問題なんだ(というとあたかも高校生がやる問題集のようであるが、これが人工的に用意されたものではなく、実験ともまさに直結した、19世紀の最重要問題の1つというのが大事な点。まさしく自然から提出された問題。)、とか思ったり、1次元、2次元で結晶が生じない理由を手を動かして確認してみたり、黒体輻射の問題で衝撃を受けたり(個人的には熱力学力が圧倒的に足りていないこともあって、Kirchhoffの熱輻射の問題を黒体輻射の問題に言い換えるところと、空洞輻射を考えれば同じ問題である、という所がかなり賢い気がしたが、よく分かってる人が考えれば、誰でも思いつく的な感じなのだろうか)と、信じられないぐらい楽しんで読んでしまった。
こうした手を動かす(個人的にはリハビリ的な、一方で「教科書」的な)ところだけでなく、この本が異彩を放ち、類例のない本となっている一端の4章とか(「教科書」らしくなく平衡状態とは?といった話に立ち入る)でも、昔読んだときは考えもしなかったが、保存量があると典型的な領域に本当にちゃんと到れるのか、など不思議な点も出てきて、何とも面白い。
学部2年のときには(異常に明快な説明に感銘は受けたものの)これほど面白く読んだ気はしない(要は分かっていなかったということだが、加えて今の自分がいかに「まともな」謎・問題に(無意識下で)飢えていて、ジャンキーな生活をしているか、を突きつけられたような気がして何とも哀しくもあり)。
引き続きちまちまと下巻も読む予定。

統計力学〈1〉 (新物理学シリーズ)

統計力学〈1〉 (新物理学シリーズ)

それから

何だか先日急に読まねばならぬような気がして、慌てて読む。思ったより遥かに鍛えの入った主人公の高等遊民っぷり(これが予想よりも話の中心に近いことにやや驚く。登場人物に対する「普段は何をするでもなくフラフラしている」といった紹介程度の話かと思っていた)、大変他人事とも思えず何とも言えぬ気持ちに。

それから (新潮文庫)

それから (新潮文庫)

ダリ展

昨日夕方に行く。夕方なら空いているだろうと踏んだが、全くそんなことはなく50分待ち。
今回の展覧会で驚くほど様々なジャンルの作品を見て、非常に多芸という新しい印象を受けた(映画もそうだし、「不思議の国のアリス」や「ドン・キホーテ」の挿絵を描いていたことを初めて知った)。
気にいった絵は、「形態学的なこだま」、「奇妙なものたち」「『狂えるトリスタン』のための習作」。

相模原事件とヘイトクライム

内容は必ずしも濃密、というわけではないが改めて打ちのめされる。

相模原事件とヘイトクライム (岩波ブックレット)

相模原事件とヘイトクライム (岩波ブックレット)

殿堂入り(ポケモン ムーン)

毎晩寝る前にちまちまやって、昨日の夜に初回の殿堂入り(最終的に25h程度、レベルにして55程度で着いた)。記念に面子を書いておくと、
・アシレーヌ(エース。可愛くて強いとかずるい)
ジバコイル(影のエース。お気軽な気持ちで捕まえたがこんなに頼もしいとは。見た目のイメージより素早いのも好印象)
ダグトリオ(アローラ) (影のエースその2。はがねタイプで守りが固くなったのが好感触。シナリオだとはがねが有利に働く場面が多かった気がする)
ハリテヤマ (格闘係。後ひと押しに苦しみ、活躍の場面が思ったより少なかった。)
・ブーバー (炎係。こちらの手番で焼ければ強いが、最終盤は先制されて沈む場面もちらほら)
ルナアーラ(伝説枠。せっかく捕まえたので、と思ってユンゲラーの代わりに入れてみるも意外にそれほど押せ押せでは使えず。最終戦ではこれしかない、という役どころを演じたが。)
という感じ。全体的に旧作(それも初代とか金銀)のポケモンばかり使ってしまったのが反省点ではある。
しかし、今作控えめに言って最高のゲームの一つではないだろうか。最初にコロコロを見て始めた緑から20年を経て、こういったものに会えるとは、全く感謝しかない。
それにしても今作、悉く出てくる人(主に主人公を取り巻く人々だが)が魅力的(どの人も清々しい。予告では一抹の不安の香りすらした、ハウやその祖父のハラもこれ程までに素敵だとは夢にも思わず。個人的にはククイ博士のファンになってしまったが)で、アローラの開放的な空気と合わせて大変cheerfulでゲームしているだけで楽しい。
ストーリーも癖なくストレート、一貫してキャラdrivenな方針、ということでこれも大変良い。
バトルについては、最初Zワザなんぞは使わずとも、とか思っていたが存外それだと手こずり、Zワザを使うと丁度良しぐらいの実によく考えられたレベル感(まあこれに関しては、シナリオ程度では何も言えないのかもしれないが)。
そして、特筆すべきは音楽。今作音楽の出来が信じ難いほど良い。抜群のマッチ感。

当初は軽くしかやらないつもりだったが、これはもう暫く遊ばざるをえないかも。

12/14追記
クリア後のイベントを通り一遍やった。土地神ポケモンの捕獲、UB捕獲など、バトルツリー到着まで、Zクリスタル回収など。クリア後もその割にボリューミィ。楽しめた。ごちそうさまでした(本当のポケモンはここからなのだが、一旦離脱)。

数学まなびはじめ 2集

某所の紹介を見て興味を持って手に取ったが、これは素晴らし過ぎる。正直外れがない。
どうして(肝心の数学の中身がろくに分からないにもかかわらず)数学の人の文章はこれほど心打つのか(類似のコンセプトのものとして、「数理科学」の連載時に「物理の道しるべ」も楽しく読んではいたが、これ程までにスマッシュヒットの連続ではなかった気がする。風間先生の文章は良かった気がするが)。
数学(必ずしも専門ではなく)に僅かにでも縁のある、凡そあらゆる人に読んでほしい。

数学まなびはじめ〈第2集〉

数学まなびはじめ〈第2集〉

長い道

これはもう、平伏す他ない。余人の追随を許さない。重要と思う点をごく粗々にいえば、映画の「この世界の片隅に」では描かれきらなかったものがここにはあると思う。
より静かに(そしてより抗い難く否応無しに承諾させられた結果)押しつぶされたものと、それに対するより静かな情念(それは、本編ではしばしば冗談のかたちで仄めかされるものの、場合によっては気配こそあれど声には決して出されない)、それらへのゆるやかな抵抗(あるいは免疫)としての「日々」、一切を含めた上で、今の在り方に「是」というまでの(あまりにも)長い遍歴の姿。(ともに)生きるとは、こういったことか。

長い道 (アクションコミックス)

長い道 (アクションコミックス)