素粒子

再読。シニカルな語り口の切れっぷりと言い、内容と言い素晴らしい(初読時は恥ずかしいことに問題意識がぴんときていなかった)。若さと放埒の消費(と搾取)のみが求められる時代と、それがもたらす肉体の有限性への恐怖や絶対的な虚無と孤独から逃れられぬ、人間の卑小さとその先。絶望的状況を容赦なく描いて見せ、最後の最後にそのどうしようもなさからの飛翔へとんでもない力技で持っていく(絶望の強さゆえにそれ以外の手がない)、という点は大島弓子に通づる物がある気もしたり。まさに「人類に捧げられる」べき名著。

素粒子 (ちくま文庫)

素粒子 (ちくま文庫)