ゴドーを待ちながら

超名著。これまで読んだ本の中でも最上位クラスに来ると思う。
時間的、空間的に切り取られ宙吊りにされた場、健忘症的な形で同一性を保持出来ない、という状況下で、不安にさいなまれながら「待つ」ことしか出来ない、という袋小路。そこではもはや「考える」行為ではどこへも向かえず、沈黙へと回帰してしまう。非常にシンプルな形できわめて(現象学的なかたちで)本質的な所をえぐっていると思う。
しかし一方で、こうした恐ろしく閉塞感のある状況が一貫して続くにもかかわらず、読んでいてどこか可笑しみがあるというか笑いを誘う部分もいくつもあり、そこがこの本を単なる「深刻病」的なものに留めぬ点だと思う。

ゴドーを待ちながら (白水Uブックス)

ゴドーを待ちながら (白水Uブックス)