ニュー・シネマ・パラダイス

先週目黒シネマで。予想とは裏腹に、自分でもびっくりするほど淡々と見てしまった。おそらく、この話の作者と「良い話」感度の方向性があまりにも異なるのが原因。

大きい所で言えば、子供時代のトトがあまり好みでない(小利に敏いというか、小賢しい系なので)というのがある。これと同時に、総体的にアルフレッドの社会的な側面が貶められるというかやけに軽い方面に行きがちな点もあまり気に入らない(これはあまり現実を知らない感想なのかもしれないが。)。まあ、壁に映画移す件とかも特に感動とかはないし、盲目になってからの突如の賢者的な振る舞いとかもピンと来ず。

呼び声高いラストもそれ程。これは映画の素養がないのが大きいのかもしれないが(というか自分の認知が歪みすぎてて、「魂の殺人」的な話を想起されすらした)。

まあ、街に再び戻ってしまったトト(達)の話が「ワインズバーグ・オハイオ」とも思えば、こちらが自分の性に合わない、というのはさもありなん、という気はする。

ぼくがとぶ

噂はかねてから、的な本であるが、東京堂書店でのフェアで実物(新しい方だが)を初めて見て読む。絵は言わずもがな、話としても(特に飛ぶまで)実に良い。小さい頃に読むべきであった。

 

ぼくがとぶ

ぼくがとぶ

 

 

 

木のぼり男爵

GW中に実行しようと試みたものの中で、唯一完遂できたのが(かねてからの積読であった)この本の読了であったのだが、紛うことなき大傑作であった。これを読めただけで(遊び部分については)お釣りが来るぐらい。

割と昔から、一見突拍子もない内容でありながらきわめて本質的な所を抉る面を見せる、というものへの強い憧れがあるのだが、快活かつヴィヴィッドなコジモ少年と、家族を始めとした何とも珍妙でありながら心惹かれる周囲の人々による奇妙な冒険譚と、その端々に見える自由への意識、さらに人々との別れをはじめとした場面場面でふと夕暮れの如く現れる情緒的な一瞬と、あまりにも見事にそれが顕現している様に言葉もない。そして最後の美しさ。

 

木のぼり男爵 (白水Uブックス)

木のぼり男爵 (白水Uブックス)

 

 

 

石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?

石油の内容が中心だが(ガスとかはそれ程なし)、説明が実に上手く(途中途中の実体験に基づいた雑談が、雑談にも関わらず、全体の話の中でかなり適切な位置を占めていることに感服させられる)、素人でも楽しく読める。

 

 

揺れる大地

先々週早稲田松竹で。素晴らしい映像の下、ただただ厳しい貧しさの中での選択肢のなさ(一見愚かに見える選択も、検討の余地すら生まれていない可能性もあることを考えてしまう)に、いたたまれぬ気持ちになる内容であった。翌日が月曜日の夜に見るのはやや辛くもある内容であったが、中身は良い。

アメリ

「午前10時の映画祭」が今年度早々にこれ、という訳で先々週日本橋に見に行く。

中学生の頃に見た時は映像的な印象が強くって、大筋のところとかはほとんど記憶になかったのだが、今回見てあまりにも「こちら側」の内容であることに愕然とした(サブカル的、とかお洒落系、とか言うフレーズはあまりにも的を外していると思う。きわめて個人的かつ内面的、もっと言えば現象学的)。割と大半の場面でぼろぼろ泣いている有様であった(平日に行ってまばらな入りだったのが幸いした)。はっきり好みが二分される系の内容と思うが、個人的には間違いなく傑作。

ZABADAK 30周年記念演奏会@東京キネマ倶楽部

正直聞くのが恐ろしくも有りつつ(行ったのは1日目だけで、2日目はどういった形だったのか知らなかったので)、意を決して、だったのだが、圧巻の一言。素晴らしかったです。注がれてきた時(そしてその中での人)の厚みを感じずにはいられない。