諸星大二郎の世界

「研究序説」と銘打たれた文の集積は率直に言えば面白くないものだが、書棚公開、ともなれば読まぬわけには行かず、という所。膨大なレパートリーでありながら、かつ整然。後は山岸凉子との対談で二人揃ってキング・クリムゾンが好き、という発言が見られただけで個人的には大満足(他にも映画音楽だとニーノ・ロータとか七人の侍羅生門が見えたり、プログレでもピンク・フロイドやモルゴーア・クァルテットもあったりで驚く。CD棚ももっと見せてほしかった)。

諸星大二郎の世界 (コロナ・ブックス)

諸星大二郎の世界 (コロナ・ブックス)

シェール革命と日本のエネルギー

米国でのシェール革命から昨年ぐらいまでの国内の動きまでを題材に、天然ガスをめぐる業界の動向について非常に明快な解説を与えた本。視点についても広く、バランスが取れており新書のボリュームながら満足度は高い。

ローグ・ワン

軽い気持ちで見に行ったが、戦闘部分中心に予想よりも大分気合の入った中身で非常に楽しめた。正直エピソード7より面白かったので、これを受けてエピソード8にもアクセルがかかることを期待。
序盤は正直主人公の過去とか旅立ちの経緯に時間を割く割には深みがないというか、ソウ・ゲレラとか本当に必要だったんかいなという感じではあり。主人公に関しては、結局それとなくアウトロー感がある、という程度の情報しか伝わってこない感じである一方で、むしろK-2SO(個人的には過去最高のドロイド)とか、ベイズとチアルート(異様に強いジェダイ狂信者、という実にくすぐり感のある役。Andrew Ng先生に見えてならないのは、自分の顔面認識の解像度の問題だろうか)の名コンビなど、脇が魅力的。
そうした面々をゲットしてイードゥに行って、離脱、あたりまでは微妙ではあるのが、そこから半ば造反気味にローグ・ワン結成、そこからの最終決戦(陸、空、宇宙の3つの同時並行!)は、かなり気合の入った作りで燃える。特に宇宙は力作という感じで、かつ最後は力業という流れも個人的には好み。イオン魚雷も見れたし。
(あと、余り見慣れぬトロピカルな戦場は絵的に面白いと思いつつ、もしかしてベトナム戦争とかを意識してたりとかあるのか、とか思いきや別にゲリラ戦チックなところはなかったので、気のせいっぽい。もっと場所の特性みたいのが出た戦いでも良かったが)
後はエピソード7ではやや過剰気味にも見えたサービスも、今回は時系列的な位置づけも手伝って自然に楽しめる。そして勿論デス・スターダースベーダーの大サービスぶりも。
最初お決まりのアレをスキップしておいて意表を突きつつ、エンディングはいつものテーマが流れるというのは、本編とは異なる裏エピソードでありながら、紛うことなきスター・ウォーズだったでしょ、という制作陣の自信が伺えるようで、こちらの演出も大変良かった。

ジョジョリオン 14

なんだか何と言ってよいのか良く分からん(またダラダラモードなのだろうか?)。ところで荒木先生によるダモさんの元ネタへの言及と表紙の気合の入りよう(さらにカバーを取った後)と、(広義の)表紙のクオリティは屈指ではないだろうか。

Play your days

今年は昨年の異常な縮退ぶりとは打って変わって、それほどライブに出かけてはいなかったのだが、これはどうしても行きたくて、という訳で吉祥寺はROCK JOINT GBまで行く。
途中間違って中央線の特別快速に乗って見事に乗り過ごしたりしたが、何とか時間前に到着(案の定立ち見だったが)。どうでも良いがTさんを(ライブでは)初めて観測した。
中身は2部構成、前半が元々のコンセプトに近い、キドキラ+の演目ということで昨年のプログレ三昧の構成に近いもの(Areaの”L'Elefante Bianco”、Mike Oldfieldの”To France”、Gordon Duncan "Belly dancer"などを中心に)。今回リズム隊がこれまでに比べてクローズアップされたように感じたが、大変格好良い。特にベースが通りよく聞こえ、「樹海」などもこれまでの印象とまた違って良し。MCの独特のゆるさは変わらず。
後半はZABADAKの曲メイン(I am the Walrusなどもあったけれど。意表を突かれる)。相変わらずの鬼の「グスコーブドリの伝記」(一方で非常にらしいような気がしてしまう曲でもあり)などもありつつも、ここでもリズム隊の印象が強く、「風の巨人」などもこんな曲だったのかという、(良い意味での)新鮮な驚きもあり。同じ曲をやりつつも、新しい面がにじみ出るというのは実に面白い(曲の奥行きとプレーヤーの懐の深さ両方なのだろうが)。
そして、encoreが"Wish you were here"というのはもう。去年のプログレ三昧のラストもこれで、その時はChris Squireだったのだが、今年は(も)、とか思ってしまうともう駄目ですね(涙腺的に)。
次回にも是非期待。

その後の不自由

これは非常に得難い本。
ひどく傷つけられ損なわれた自己を、どのような形で形作っていくのか。単純な「ある時点からすぐに普通の状態に元通り」といった「回復」像ではなく(本書の表現を借りるならば、回復とは回復し続けること)、自らの身体の発する応答へ言葉と意志を与えていく再構成とでもいうような過程、またそれらのなかで苦しい過去を「なかったこと」にするではなく、どのように折り合い、フラッシュバックの恐怖を生き抜いていくのか、これらについて当事者(話を聞き、サポートを行う側の著者も当事者であり、その経験も語られる)の視点から語られる内容は、正直あまりの酷さに言葉を失うものも少なくないが、それも含めて何が起こっているのか、本人に起こっている「嵐」はどのようなものに根ざしているのか、彼女らが損なわれ、言葉にできないでいる所には何があるのか、といった所が非常に丁寧に言語化される様には頭が下がる。
(本書の例などを見ているとなかなか烏滸がましく言い難いところもあるのだが、記憶(本書の言葉でいうならばむしろ思い出)がスムーズにつながっていかない件(「生きのびるための10のキーワード」3,4の辺り。ここでも例が酷すぎるのだが。)の所などは正直他人事とは思えず、非常に感じ入る所があった)
この「ケアをひらく」シリーズ、(以前から気にはなっていたのだが)やはり読む必要があるかもしれない。

その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち (シリーズ ケアをひらく)

その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち (シリーズ ケアをひらく)

乙嫁語り 9

前巻からそうだが、近所の爺婆のような気持ちで、良かった、本当に良かった…などと思いながら見ている。