定理が生まれる

フィールズ賞受賞者のCedric Villaniが、(Clement Mouhotとの仕事で)定理を生み出す過程とそれを取り囲む日常の生活について、日記のような形で記した本。
本の内容は、大きく数学パートと日常パートの2つに分割でき、日常パートは妙にハイテンションな文章が楽しい(好きな音楽について3頁ぐらい羅列してあったりする)。一方で数学パートは生のままという感じで、中身の敷居は高くてさっぱりだし、抜粋して載せてあるメールはTeX記号がそのまま乱舞(せめて数式に打ち直すぐらいの労をとるべきではなかったか)、といった感じでわりと不親切。解説によれば、プラズマを記述する可逆な方程式であるはずのVlasov-Poisson方程式において、Landau減衰として知られる解の指数的な減衰(散逸的な振る舞い)が見られる理由について、方程式の初期条件が線形安定定常解の近傍の解析関数なら、指数関数の速度で時間無限大の状態へ弱収束することを示し、他の時間可逆な方程式同様に初期条件の情報を保持していることを示すとともに、初期条件の情報が時間とともに高周波成分へと移行してしまうために、低周波成分だけ見ていると(初期状態から情報が損失して)たとえば密度のような平均量を見ていると指数的に平衡化しているように見えるということを明らかにしたらしい。詳細はさっぱり分からんが、あらすじだけ聞くと大変わくわくする。
内容は面白いが、本としてのバランスはあまり良くないのが残念なところか。

定理が生まれる: 天才数学者の思索と生活

定理が生まれる: 天才数学者の思索と生活