ガリレオの生涯
ガリレオの生涯、特にヴェネツィアからフィレンツェへ移り亡くなるまでを描いた戯曲。他のものを片端から捨てて科学に生きたガリレオが、教会に地動説撤回を公言させられ半拘束の身になりながらも新科学対話を口述して世に残す訳だが、教会に屈せずに科学を民衆のものにする一歩手前まで行きながら自身の探求を選択した在り方に対する自嘲があまりに痛烈。自らを「なんにでも手を貸す小人の輩」と言い切るあたりはちょっと穏やかには読めず。
ブレヒトが「アインシュタインの生涯」も構想していた、ということなどからは、解説のような読み方が筋なのかもしれないのだが、個人的には、ガリレオが人々の理性や知的好奇心、実証を認める能力は信じていながら、それらを持たないように見える人は歯牙にもかけない所(そして教えるなどの方法でより多くの人にそれらを習得させることには気が進まない様子)に代表されるような、科学の持つある種の権力構造(御用なんちゃらとかでなく、より一般的な、たとえば今の高等教育機関などが制度として持つような)も問題にされているのかなと感じた。
- 作者: ベルトルトブレヒト,Bertolt Brecht,谷川道子
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2013/01/10
- メディア: 文庫
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