2023年の思い出

 昨年に引き続き世界的には不安定な情勢は続くながらも、コロナに関しては国内的には日常への回帰を目指す流れとなった2023年、自分に関して言えば(世間に遅れをとる格好というか、いかにも”鈍い”人という感じで)この年末、遂にコロナに罹患することとなった。

この年末年始は暦上の休日配置がきわめて味のよいものであり、上手くやれば12月23日〜1月8日まで夢の17連休も射程といった中、自分としても(年明けこそ暦通りの稼働となったものの)12/23から意気揚々と連休に入り12連休を享受せんとしていた矢先のコロナ罹患であり、(今日は漸く一日の多くを通常営業で過ごせるまで回復したものの)年末殆どを臥せて過ごすこととなり非常に無念であった。というかおよそ成人後に体験したことのほどの高熱と倦怠感、それに次ぐ喉の激痛など、二度と経験したくない類のものであった。

それは兎も角、今年2023年は、2022年を(昨年の総括  "The Way To A New Beginning"の通り)「序」とするなら「破」に相当する年であった。

後述の通り、上手く運んだ点とそうでない点、劇的な変化を経た要素と存外、といった要素のマーブルのような感じではあるのだが、良くも悪くも色々転換点としての年と、後々まで位置づけられそうなものであった。

大学院関連(その後)

今年は年度が明けて連休ぐらいまでは昨年の心残りのネタに継続的に時間を投入して、問題の所在や何が困りごとであるのかを自分なりに漸く言語化した、と思っていたのだが、その後は昨年度以上の劣悪な労働環境の下、結局まとまった時間と集中を投入できず研究はほぼできずであった。ここまで来ると事実上の死体と言わざるを得ない。

特筆すべきこととしては、大変過分なことに某研究会から招待頂き、夏に話す機会があったのは喜ばしいことであった。ほぼD論の発表スライドの再構成だったが存外ちゃんと話せたし、単著で書いた予稿を先生に見せた折にポジティブな反応があったのも個人的には嬉しいことであった。当日の研究会の雰囲気も、こじんまりとしながらもやり取りがある、(初参加にも関わらず)どこか学生のときに見たような、良い雰囲気の場に感じられた。

何より(たとえ中身が大したことなくとも)自分のやったことについて人に話すことのやり甲斐や、更には一定以上の専門性を持った人とそれについてのやり取りを行うことの価値を再認識したのが、現状諸業務で煩わされている中では印象深いことであった。

研究会が終わり神奈川の猛烈な夏空の下で、ここにあった一瞬の爽快さと、これから又帰っていく日々の停滞という対照さ加減には、非常に複雑な思いを覚えずにはいられなかった。

後は、過去の論文に漸く身内以外の引用がついたのは一応良いことであった。

 

その他、業務の合間を縫って聴講したIBIS2023はすごく面白かった(特に最適輸送のセッション)。これにポスター出せるようになりたいものだが。

 

将棋関連

藤井八冠爆誕、の歴史的一年ではあったが、個人的にはタイトル戦としての結果は(ことここまで至ってしまうと)驚くべきもの・興味を引くものとはもはや言い難く。

どちらかというと、その過程での他の棋士の見せる対策や、藤井聡太という圧倒的な存在に対峙する姿が涙を誘うものであった。実際年明けの王将戦第2局(羽生九段の▲8二金)と、王座戦第4局の▲5三馬(厳密にはその後の一連の流れ)を見て、普通に泣いてしまった。まさか一年で将棋見て二度泣く事があるとは思わなんだ。

それはさておき、囲碁や野球と違って「世界編」がない以上、何らかのレギュレーションにより”Next Step”を用意しないと、いよいよ興行としての面白みはなくなってしまうのでは*1。連盟の最優先事項だと思われる。

 

 

その他、昨年少し書いたレーティングベスト32のスレッショルドが1700点からズレているかどうか問題だが、今年は1700点に回帰していましたね。単なる一時的なブレだったようだが、そうなると一層ブレの扱いなど気になるところである(何も理解を深められていない)。

 

読んだ本

今年は本当に本が通読できない(含漫画)、という意味で絶望的な1年だった。映画に寄せすぎ、というのはあるのだが、実際問題として細切れ時間だと読む気が起きず、ベッドで多少抵抗するもすぐ寝落ち、みたいなので読みさしの断片ばかりが嵩む一方である。

読んだ中では「ハマータウンの野郎ども」はなかなか身につまされる内容だったが、面白かった。5月頃までは多少は人間的な生活だったので、この頃に積年の思い煩いを昇華できたのは良かった。

あとは映画「覇王別姫」からの派生で読んだ「私の紅衛兵時代」。

(当然)自分がやるわけではないんだが、まあ常識というか共通言語の理解のため。

これは途中までしか読んでいないが。中身は豊富で興味深いながらも、段々仕事の資料読んでいるみたいな気持ちになってきて朝晩の電車では読みたくなくなってしまったので。

漫画

漫画も今年はろくすっぽ読んでいない。昨年から追加で新しく読んだのは「呪術廻戦」のみ。ミーハーで申し訳ないが。正直どっかで見た感のあるものしか出てこないのでストレスフルではないといえば嘘なのだが、偶に大当たりを飛ばすイメージなので追っている感じ。具体的には24巻あたりのびっくりとか、後は単行本になってないが、漫才の件とか。特に後者は個人的には週刊まで見に行った甲斐があるものだと感じた。

 

文脈のため評価が非常に悩ましいが…

映画新作

今年は2019年以来?素晴らしい映画の連続だった!本当に豊作。

旧作と合わせて昨年の宣言の通り、それなりに数が増やせたし、良いものを見たという実感もある。来年以降もメインの趣味になるだろうか。

以下枠内は基本見た順。

特に良かった枠

ムーンエイジ・デイドリーム

自分はボウイにこれまでほぼハマってこなかったので、半信半疑みたいな感じで見に行ったところもあるのだが、実際に見てみてその先進性にショックを受けた。映画としても超格好良い。とても気に入った。

TAR

ケイト・ブランシェット様の鬼演技に圧倒されていると、瞬く間に150分が過ぎる傑作

*2。音楽とサウンドも良い。「ジョーカー」の人と思うが。

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン

非常にこってりな話と強力な役者陣で満足感が強い内容。個人的にはスコセッシで見た中でも好みの方に来るかもしれない(網羅的に見ていないが)。特筆すべきはやはりディカプリオの顔芸七変化だが、ヒロイン役も素晴らしい。

かなり良かった枠

RRR

内容は大変面白可笑しくエンジョイした、が、最後まで見進めるとやや手放しで褒めるのに自信がなくなる。流石に日本の90年代を経た我々がこれをオールオッケーと言ってしまうのはどうなの、という気がした。

中島みゆき ライブヒストリー2

コンテンツが尽く強すぎる。この映画で言えば、蕎麦屋、化粧、あした、歌姫、誕生など隙がない。一期一会とかもライブ版を聞くと打たれるものがある。個人的にも昨年秋〜冬の苦境はシングルサブスク解禁がなければとても耐え得なかった。

一方で映像は、はっきり言ってこだわりもなく必ずしも…なので映画として見るのはどーなの、という側面もあるのだが。

エンパイア・オブ・ライト

みんなあんまり褒めていないが、私はこの類の話に弱いので。昨年〜今年春にかけてのアカデミー賞関係で上映した一連の作品だと(TARは一段抜けてるとして)これとフェイブルマンズが特に個人的にはツボ。

フェイブルマンズ

一緒に見に行った人は全然ハマっていなくてショックだったが、別に(自分のような)スピルバーグが直撃していない人にとっても、きわめて普遍的な題材ながら超面白い。映画が上手すぎる(もとから映画が上手すぎる人の自伝なのだが)。

THE FIRST SLUM DUNK

みんな褒めていると、すぐには見に行きたくなくなるというのが人情で…

だが、思い入れが強くない人間としても存外良かった。特に驚いたのは音。ボールの音、靴の音とこだわり・臨場感が素晴らしい。

ベネデッタ

自分は不謹慎系は好きなので、「特に良かった枠」でもありっちゃありではあったが、まあトータルで見ると上3つ比では強度的にやや落ちるか。ただこれも監督のキリスト教への並々ならぬ思いが結実しており最高であった。

怪物

子供二人の素晴らしさ、に尽きるだろうか。

二人の大人が廃棄車両を覗き込むときの、黒にポツポツと白い点のような光が落ちる画面が素晴らしい。また、何より二人の子供のけんけんは、「パリ・テキサス」の親子で道路を挟んで歩くところに匹敵する名シーン。

面白い、が事前に期待しすぎた感もあり、もしかしたら「良かった枠」かもしれない。しかし鎧を着ていても西島秀俊仮面ライダーBLACK SUNに見えるのには参った。

良かった枠

イニシェリン島の精霊

みんな褒めていると、無邪気に上に位置づけたくなくなるというのが人情で…

確かに見ている最中は面白いのだが、見終わって「結局?」という気持ちになるというか、何度も何度も見ることはないように感じる。

いつかの君にわかること

子役が愛らしい。

アフターサン

自分が筋重視だからかもだが、やや褒められ過ぎでは?という気はしなくもない。

コナン新作 

加齢aiという(内輪的には)キャッチーな話で、世間的に言われる前に、「これあったらコナンバレるじゃん」、というのをやる、という流石な話。思ったよりは楽しめた。

しかし、色々だれてきたら突然クイズが始まるとか、最近の映画は大変だなとか。

ところで阿笠博士の口癖って「ゾイ」でしたっけ?

君たちはどう生きるか 

ものすごく変だがこれはこれで良い。本当の児童文学を最後にやったな、という感じ。

後はやはり冒頭の火事の場面での絵の異様なレベルとかが印象深い。

ゴジラ-1.0

全くつまらなくはないが、2回見るかは微妙。しかし安藤サクラが出てくると、そこだけ手合違いの演技力で笑った。一人だけ子供の遊びに、後々プロになる人が混ざっているような温度感というか。

微妙枠

ヒトラーのための虐殺会議

非常に悩ましいが、やはり映画という媒体でなくともよいのでは?という気がする。

ザ・ホエール

主演のブレンダン・フレイザーの評価が大変高いが、「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」の嫌な弁護士のほうが印象深い、というのは言い過ぎか。それはともかく、個人的には話の魅力、舞台を映画化することの難しさ、的な所で難を感じた。

シン・仮面ライダー

これは予告編からの期待の高まりを受けた落差もあるのだが。しかし不完全燃焼の中、よーく考えて見ると、監督はすごく誠実な人であるがゆえに、結局毎回同じテーマ同じ造形に陥っていく、という考え方もできなくもないと感じた。

後、やっぱり現代でやると戦闘場面がCGになるのがなー、昭和ライダーのビデオで育った人間としては不満である。とはいえ昭和のままやれとも言えず、代案はないのだが。

リトル・マーメイド

絵がどーこーとか、PCがどーこーとか云々の前に、やっぱり話が面白くないとなー、という気がしました。

ヒッチコックの映画術

やはり原作を読むべきであったか。

 

映画旧作

特に良かった枠

都会のアリス

素晴らしい。もっとも最初にやられたのはアリス登場以前の冒頭の独身男の荒み具合で、異常独身男性のイデアか、と思わず得心がいってしまったが。

それはともかく、子供のわがままさ、と本質直観的な部分といい、可愛い子供の撮り方というのを実に心得た作者の面目躍如というところ。

後はまあ、それだけでなく、やはりさすらい、というものの意味が言葉でなく心で実感できるという意味で素晴らしい映画。ロードムービーの始祖というのも納得。

覇王別姫

オールタイムベスト入り待ったなし。今年は相当素晴らしい映画を見られたが、その中でも旧作文句なしのダントツ一位です。

レスリー・チャンの極まった演技と美貌をはじめ、チャン・フォンイーコン・リーといった強力な主役陣、耳を離れぬ京劇の音楽、中国の歴史とはこう描くのだ、(ラストエンペラーなどは手ぬるい)との叫びが聞こえてきそうな壮大なスケール感と哀愁、実に中国知識人らしい辛辣さ、そしてその中で翻弄される登場人物を描いたストーリー、そして必然とでも言うべき最初の場面への収斂、と、まさしく非の打ち所がない。

アラビアのロレンス

遂に積年の思い煩いを解消した。それはともかく、あまりに完璧な出来杉君のような映画というか、困惑するレベルで非の打ち所がない一方で、自分のガチ好み路線ではない、というところが悩ましくもあり。ピーター・オトュールの素晴らしさもさることながら、やはり主役は砂漠の圧倒的風景。騎馬の場面といい、現代っ子的にはCGなしでこれって本当?という感じ。あとは、やはり日を消したら砂漠の日の出に移行するところのシャレオツさ。都会のアリスの、タワーの電気を吹き消すところの元ネタってこれか!?という感じ。

パプリカ

遂に今年、見よう見ようと思いながら手が行っていなかった今敏監督の映画を集中的に視聴した。あまりのレベルの高さに愕然としつつ、どれをイチオシとするかは日によっても変わりそうなのだが、強いて言えば「千年女優」かこれ。(「パーフェクト・ブルー」は最高なのだが、やはり絵がさらなる発展の道半ば、という感じなので。)アイディア・強力な絵・平沢進の音楽、と三つの幸せな邂逅で、他の追随を許さぬ印象。これを見ると始祖に勝るものなし、というか、「インセプション」をわざわざ見返す機会はなくなってしまうかも。

アメリ

これも複数回見ているのだが、やはり良いものは良いということで。最の高。70年代少女漫画に感性をやられている人間からすれば、話がガチ好みなのはもちろんだが、今回4Kということで、アングルとかの異常なセンスの塊ぶりについても再認識しながら楽しく見れた。

かなり良かった枠

パリオペラ座 オーレリ・デュポン引退公演「マノン」

バレエを今までちゃんと見たことがなかったので、おっかなびっくりだったが、かなり良かった。人間の動きがきれいすぎる。話がリアルタイムでは理解するのが大変だったが。最後の引退の場面も良かった。

ファニーとアレクサンデル

流石に長い。もっとタイトにしてほしいしできるはず。まあしかし、総決算的な目配せがいくつもあるし、それにとどまらず、ベルイマン流「百年の孤独」とでも言うべき内容は面白かった。ゴッドマザー(大竹しのぶに似すぎ)の存在がそう思わせるのか。

やや脱線気味だが、「家族と責任」というテーマは実にタイムリーでもあり。だが、どんなにダメ人間に見える人々(庵野秀明に似すぎ)でも、やはりいざという時には家族のために外に出ていって談判するわけで、これができる能力があるか、というのが本質というのが示されているのは重要な点。

後やはりラスト(ストリンドベリの「夢の戯曲」を読む件)は泣いてしまう。

沈黙

2度目見て、多少頭の中に中身が整理されて入ってきたつもり。それにしてもベルイマン流の交わらぬ視線の構図が切れすぎる。


鏡の中にある如く

2度目だが、絵が想像以上に美しい。船の中の退廃的な様子とかすごい。現状一つたりとも外れのないベルイマン映画だが、その中でも割合好みかもしれない。

仁義なき戦い

これも大変良かった。目を背けたくなるような流血描写も少なくない一方で、荒々しさ、迫力、煤けぶりと満足感も強い。

パリ・オペラ座バレエ 「白鳥の湖」(ヌレエフ、2019版)

無教養なので、これを見て漸く下の動画の元ネタが分かった。

なお、この動画は(各作品を見ずとも)これだけ見てもあまりの美しさに泣ける(泣いた)ぐらいに素晴らしいので宣伝。

www.youtube.com

 

脱線だったが、肝心のバレエに関しても動きも素晴らしく楽しんだほか、(自分は知らなかったが)上野水香さんのトークもついてきたのでお得感があった。

マルサの女

話が面白いのはもとより、ギトギト系の絵、プログレの名残の音楽、主人公の他にも山崎努津川雅彦はじめ良い俳優と、大変エンジョイした。

日本のいちばん長い日

これも複数回見ているので、というのがあって、ここだが、「特に〜枠」でも全く、というぐらいの面白さ。会議がメインディッシュなのだが、その他にも群衆が動くと面白い、というのも発見である。

E.T.

「フェイブルマンズ」があまりにも良かったので、ちゃんと見ることにしたが、これは(子供向けではなく)日々にすり減らされた大人向けの映画ですね。主人公の子供の演技が素晴らしいのはもとより、ラストの主人公の兄の「僕こそ」では号泣不可避。

パーフェクト・ブルー

25年前とは信じがたい。新作でも全然行ける。事前情報ゼロで見て超良かった。

怒りの日

コロナにかかる直前にイメージフォーラムに見に行ったもの。前回のドライヤー特集でも個人的トラブルで見れなかったので、今回見れたのは良かった。音楽、女優の目力が見どころだと思うのだが、しかしやはりあらゆる場面が目を引きつける「奇跡」ほどの力はない印象。

「ガートルード」なり他の作品なりもぜひ見ないといけないので、年明け復活したら行く予定。

千年女優

今年の見納め。よろける場面とかちょっとしたところの動きの絵が異常な水準でビビる。もちろん大筋の始まって早々に虚構と現実が入り混ぜになっていくところも実に楽しく、ラストも「パーフェクト・ブルー」に続く第二作と思えば全く違和感なく、極めて高水準。

良かった枠

パワー・オブ・ザ・ドッグ

風景の美しさ、不穏な音楽はよい。だがなぜ急接近を許したのか、とか細かいところにやや違和感。あと全体的に自分はやはり飲んだくれへの評価が低いので、すんなり入ってこない。

鏡の中の女

平日に新文芸座に見に行こうと画策していた所、fxxkinな人への糞対応のために入場が遅れたことを1年後の今でも根に持っている。一方で映画として印象は強くないが。

ベルリン・天使の詩

積年の思い煩いの解消、なのだが冷静にそんなでもなくないか。

薔薇の名前

これは「かなり良かった枠」の可能性もある。謎解きをやらないスタイルが映画という形式と良くマッチ。見立て殺人のシュールさ、燃える図書館なども面白ポイント。

音楽は最後の方のエレクトーン風のチープなのが減点だけどそこまでは良かった。

ラストエンペラー

人間讃歌的なラストが良いものの、ただ、内容はどうだろうか。その他、テーマ曲がMr.Siriusの”Barren Dream”を想起させる。

MIFUNE The Last Samurai

配信で見たが、そこそこ面白かった。八千草薫の美人ぶりにビビる。

ミツバチのささやき 

午前10時の映画祭が決まったときに、今年こそは、と思っていたもののうちの一つ(もう一つは「暗殺の森」)。だが、子役とカット(中央に扉や窓があって光が入ってくるカット)は印象深いものの、それ以上のものがあるかどうか。

親密さ

長い。もう少しまとめられたはず。と言いつつ、贅沢な時間の使い方が何か特別なものを生み出すのに一役買っているのは否めないので、これはこれで。

非常に文脈過多な映画であり、その中ではやはり、言葉が掴みきれないもの、言葉にしようとしないものこそが欲望か、と気づく。

その他、個人的マイナスポイントとして、ポツポツ出してくる東大的記号の目配せが鼻につく等。瀬佐味亭の虎ノ門店(赤門前の昔からある担々麺屋だが、官僚が味を懐かしんで食べたい希望を出したから虎ノ門に出店したとかいう経緯があったはず)とか、播磨坂の件とか。映画に集中させてくれ。

犬神家の一族(1976年版)

配信でやっていたので、遂に通しで見た。見てる最中はおお、これがあの…みたいな感じでこれはこれでまあ面白いな、という感じではあったが、冷静に今年のラインナップに並べると「微妙枠」かもしれない。やっぱり探偵に魅力がないよね、申し訳ないけど。

微妙枠

ソナチネ

そんなに面白いだろうか、という印象。

暗殺の森

かなり期待大だったのだが、これ、そんなに面白いか???、という印象。

音楽

今年はライブは行かず。で、ここに入れるのが適切か良くわからないが、遂に宝塚を見に行くことと相成った。いや、確かにこれまで見ていないのが不思議なぐらいであって、という感じな一方、このタイミングでなのか、という印象ではあるが。

見たのは月組の「応天の門」と星組の「1789」。でかい階段におお、これがあの...とか圧倒されながら見て、これはこれであり(音楽も全体的に覚えやすくキャッチーだし)とか思って存外楽しんでいた。

 

展覧会

今年は大して行けず。その中でダントツで良かったのは「テート美術館展 光」。有識者には受けが悪い様子だったが、個人的には(この類の展示だと最後に申し訳程度に数点出てくる印象の)現代美術の領域に相応にスペースが取られ、かつ鑑賞者がインタラクティブな形で、ああ、こういう流れでこういう展示、こういうアイディアに至っているのか、ということを実感できる、そうしたアイディアの一端が垣間見えただけでものすごく楽しいイベントだった。

その他、年明けのアーティゾンのパリ・オペラ座は思いの外見ごたえがあってよかった。一方、若冲を売りにした出光美術館の展示は点数も限られ不満。マチス展、ルーブル展も行ったが、それほどか。

 

ゲーム

今年は心待ちにしてきた”Tears of the Kingdom”発売の年だったが、前述の通り6月頃から徐々に労働環境が悪くなってきたため、実はクリアできず放置の状況という痛ましい事態となっている。風と炎の神殿をクリアして、水の神殿の途中で止まっている状態。

しかしあまりに自由度が高く・かつ面白すぎるゲームというのも現実との相克という感じで悩ましいものだなと思ったり。

 

で、クリアしたゲームとしては、我が心の一本「スーパーマリオRPG」リメイク。これについてはリメイクぶりがきわめて高い精度のものとして各所で激賞されており、実際やり心地がここまで維持されていることには驚かされる…が、細かい演出の変更には不満があったり。以下、超めんどくさい小言です。

まあ、一言でいうと、「喋らない主人公たるマリオはジャンプで語る」という要素はもっとしっかり追求すべきだったのでは?という点に尽きる。たとえばクッパ城への橋が落ちた後、マリオの家から進んでクッパ城を見に行く演出があるが、そこでは画面が横に流れてカリバーの刺さったクッパ城が見え、それを見てマリオが複数回跳ねる(ことでモチベーションが示される)、というのがSFC版だが、このクッパ城の見えて来方はじめ演出変更に不満があったり。

あとは最後、カジオー戦に関してムービーを入れたのは別に良いのだが、一貫してここまでマリオの世界vs. 武器世界という構図を作って、最後挑みかかるところもジャンプして挑みかかる(マリオの文法)としている訳だから、ムービーを使おうが何しようがそこはちゃんと維持して、ジャンプでエンカウントしてカジオー戦に移行してほしかった。

そんな感じで個人的には、操作感、セリフ、音楽とかは信じられないほど精度良く保っている一方で、「構造」に基づく演出はあと一歩を欠いている印象を持ったが、まあそれはそれとして、十分すぎるほどこのゲーム面白いので、過去手に取ってない方にはぜひ一度勧めたくはある。

個人的にはすごいものとすごいものを足したらものすごいものが出来た、という(当時で言えばクロノ・トリガーのような)内容よりもむしろ、このゲームのような(任天堂とsquareという)通常交わらないようなものをあえて混ぜて化学反応した結果、(このゲームのように)とんでもなく妙(だが力はこもっていて素晴らしい)なものができる、というのを非常に好むようになった性癖の源流とでも言うべき思い出のゲームであり、今回当時の感触を持って楽しむことが出来たのは非常に幸せなことであった。

 

その他

その他、今年は積年の思い患い(というほどでもないが)だったり会社の無駄な圧力とかで資格を無駄に取ることとなった。

具体的には、前者で言えば、過去不戦敗したり普通に計算能力がのろすぎて試験に落ちたりしていた、統計検定1級にようやっと合格した。正直問題がもはや高校数学をいかに高速・正確にできますか、みたいな方向に近づいているため、加齢とともに合格期待値が下がっていくイメージしか持てず、今回無理ならきつそうだと思っていたので、ラッキーであった。まあこちらは世間一般的にも一定の認知度があるものなので、まあ一ミリも嬉しくないといえば厳密には嘘になる。

後者は、会社から取得圧がかかっていた社外の資格として、ジャイアンのトレーナーに記載されてそうな名前のついた検定と、今はなき岩田聡時代の携帯ゲーム機みたいな名前の検定に合格した。どちらも4択式で正直成人済の人間がやるには知的に耐えないような内容だが、実に悲しいことには「報奨金」/「取得対応の時間」の値が通常働いている際の単価よりも高く、本当にこういうのはやめてほしいものである。

後、今年は某所にて自分が以下に英語力がないか、それによって不利益を囲っているかが明らかになる出来事があり、かなり精神的にダメージを受けた。具体的にはビジネス的局面でself-introductionを求められたのだが、全く想定していなかったので中学英会話みたいな受け答えをしてお通夜状態になるなど。(真の)課題が英語、というのはこれまで見て見ぬふりをしてきたことであったが、いよいよ逃げおおせができなくなってきた感がある。

 

なお、プライベート的側面では現在進行系で色々激流ワイン川下りのようなことになっており、その辺はいずれ正式に諸々決まった段階で(来年末にでも)更新したい。

 

*1:とはいえ、ルール自体でハンデを設けるには他のトップ棋士とのレーティング差が250点、というのは微妙・不足、というのは分からないでもない。その意味では藤井八冠が「まだまだ実力不足」、というのを、そういう意味で捉えての観戦の楽しみ方もあるのかもしれない、というのは意地が悪すぎだろうか。過去の王将戦で、香落ち差し込み実現なるかにドキドキするファンと同様の感覚で観戦するイメージ。

*2:英語も聞き取りやすいし

2022年の思い出

依然終息は見えない疫病、戦の勃発、それに伴うエネルギー高騰など、(あたかも歴史の教科書での節目を見るが如く)世相的には暗い時代の色が強まりを見せる1年だった2022年だが、自分にとっての2022年を一言で言うならば、”The Way To A New Beginning”であった*1

とはいえ、言葉の響きのような明るい話は全くなく、環境の転換やそのための試行に悪戦苦闘しつつ、結局何かしら明確な成果には未だ辿り着かず、という意味で課題の多い非常に困難な1年だった。

日々の仕事を除けば、生活の構成要素はほぼ昨年と変わらないので、同じ形式で要約する。

大学院関連(その後)

出だしから何だが、今年の取り組みは昨年に輪をかけて希薄*2であり反省点が多い。劣悪な環境を本当にどうにかする必要がある。特に新規な成果に乏しく、後述する結果も過去の資産によるものだったので、正直かなり忸怩たるものがある。

一方で発表済の結果については過分な反応があったのはラッキーなことであった。今後ないと思うので記念に書いておくと、何かやって景品を貰う的な経験は学業関係だと小学生の頃以来*3なので流石に驚きの方が強かったが、有り難いことであった*4。ただ、大学のプレス(のサムネ)ではなぜか写真が上下逆になって表示される、というオチがつくが*5

一方で超正直に言えば一番嬉しかったのは引用がついたことだったり。いや全部身内ですし、0でなくなっただけですが。特に指導教官の直近のレビューで文献が参照されていたのは嬉しかった。過去のレビューでは文字通り自分以外の学生の仕事はほぼ隈なく参照されていたことから、(自分で自分の結果の程度はわかっているにせよ)情けなかったものだったが、とりあえず後ろめたさの一つは解消された。

全体通じて、先生に話しただけで解決に至らずまだ積み残されている話があるので、院生時代の話にけりをつけるという意味ではこれだけは何とかしたいところだが。

将棋関連

昨年に続いて観る将やっているだけなので大した話はなく。棋士のレーティングサイトを眺めるのが趣味なので、本当は時間が無限にあれば、セイバーメトリクスじゃないが将棋でオープンになっているデータの理解を深めることをやりたい。

大したネタでもないので一つだけ書く。

ここ1年ぐらいでベスト32(決勝トーナメントレベルであり、真の意味で挑戦者を競るレベルの閾値)のレベルが1700→1710ぐらいにわずかにシフトしているように見える。それより前は驚くほど定常的で1700前後だったのだが、どうも微妙にシフトした状態が継続しているようである。この差が有意なものなのかどうかに興味がある。意味がある問いなのかはよくわからないが(し、どうやって検討するのが統計的には妥当なのか、から勉強しないといけない)。

しかし、この「レーティングのデータ分析、統計学」、的な話をしっかり勉強しようと思ったら、どういう本を見るのが良いのだろうか?

一応、普通の振り返りも書いておくと、もう藤井五冠が圧倒的に強すぎて嫌になるレベルですね。番勝負で勝つには3番以上勝たないといけないルールだと、他の棋士がタイトル奪取する姿が想像できないので、この壁に挑戦者がぶつかっていき続けるだけでも敬意を持たざるを得ない。というか、永瀬、豊島、広瀬と素人が見ているだけでも凄すぎて泣きたくなるようなハイレベルの準備をして、その結果1番入れるのがやっと、2番入ったら称賛物、という結果である現状をどう考えるべきなのか。「将棋は最後に羽生が勝つゲーム」の時代よりも差を感じる。

人間同士の極限的な戦いを見る、というのも(個人的には)非常に良いのだが、一方で正直いえば挑戦者サイド(藤井と10歳以上差)の体力、精神力の消耗も激しそうでもあるし、興行的にルール検討や新棋戦設立のニーズが高まっていると思う。連盟側からは積極的には言えないような多少過激なルールでも良いので、どこか提案してはどうか。

後、羽生九段の王将戦6戦全勝はこの地獄リーグにあっては一秒たりとも想像できない結果で、感動した。A級から降級して藤井五冠とすれ違ったときにもう番勝負はおろか、年1回対局できるかどうかの世界か、と思っていたがやはり持って生まれたものが別格すぎる。

 

 

 

読んだ本

読みさしの本は含めない*6。今年は業務の奴隷だったのと、後述する通り空き時間の多くを映画に割いたのでろくに本を読んでいない。イベントを入れて、その予習をする的なイベントドリブンな感じだった。

特に良かった枠

ピクセル百景

これは超良かった!強くおすすめ。もともと画像処理の手遊びの題材としてドット絵風に写真を加工しようとしたのだが、ただ粗視化しても全然イメージに遠い物にしかならず、何が違うのかを理解したく色々探していた所、現代のピクセルアートに関するさまざまな作家の作品を目の当たりにすることになって購入したもの。作り方がわかるわけではないが、ものすごく心惹かれる絵が大量に載っていて素晴らしい。

ベルイマンを読む

これも超良かった。

わたしたちが描いたアニメーション「平家物語

これもアニメが歴史に残るレベルで素晴らしいものだった(泣き所ではない普通の場面ですら異常に美しくてボロボロ涙が出る)が、この本もウルトラ良かった。

良かった枠

妄想する頭、思考する手

広義の自己啓発書だが、その中ではよい。

自動車絶望工場
原価企画とトヨタのエンジニアたち
なぜ中学受験するのか?
ジョブ型雇用社会とはなにか
私の生きた証はどこにあるのか
かもめ・ワーニャ伯父さん

ドライブ・マイ・カーのため。

会話を哲学する

キャッチーでとっつきが良さそうなので読んだ。なんか本質に迫っている気がしないのだが、まあ読んでるあいだはふーん、みたいな感じで読めたので。

歴史学のトリセツ

書き方がゆるいのだが、知りたかったことの出だしの所が書いてある感じで良かった。

微妙枠

昨年の微妙枠と違って、まともなのでこの枠に入れるのは申し訳がないのだが、合わなかったものなど。

平家物語 犬王の巻
西瓜糖の日々
「ハッピーアワー」論
将棋記者が迫る棋士の勝負哲学

 

漫画

過去に読んだもの・作家の延長が大半で、新しい作品などをなかなか読めていない。

読みきった枠

ROCA

www.ishii-shoten.com

ありがちで申し訳ないが、今年のベスト級。

三日月よ、怪物と踊れ

ROCA以前であれば、他の追随を許さないダントツクラス。いつもこのレベルの出力を期待したいのだが。

ガールクラッシュ

一十系の完璧超人の主人公が、主人公的メンタリティのライバルに負かされて、さあどうする、という話。面白い。

アリスとシエラザード

手堅く面白い。

恋は光

まさか読む日が来るとは思わなんだが、相当なパンチ力。今年読んだ旧作のベスト級。

チェンソーマン

全く人に気軽に薦めたい部類のものではないし、いちいち映画の小ネタや話をしないと気がすまないのか、と文句を言いたくなるなど問題山積なのだが、読んでいる最中の(気分の悪さと)面白さは認めざるを得ない。

G戦場ヘヴンズドア

(理由は忘れたが)再読。葬式の描写とか、漫画家入選者軍団のうち、子供育てながらの人とかむしろこの辺の描写のほうが年を食えば食うほどダメージが入る。

しかしメインの大人はろくでなし目白押しだが、サブの大人が本当に頭の下がるような人ばかりである。この数分の一は大人になりたかったものだ。

模型の街
百木田家の古書暮らし

ご当地枠。あっちゃこっちゃにポスターが貼ってあるのだが、一方で中身は強烈に面白いか、というと…

面白いが時間が取れず止まっている枠

テレプシコーラ

 

1巻だけ読んで厳しくて止めた枠

SPY×FAMILY

映画新作

特に良かった枠

トップガン・マーヴェリック

ありがちで申し訳ないが、今年の新作ベストでは。

C'mon C'mon

これも、利発な子供に弱い自分にはかなり高ポイントであった。

良かった枠

ドライブ・マイ・カー

色々気に入らないところはあるのだが、劇のシーンはじめ強い印象を残す場面があり。ただどこまで行ってもおじさん向けのそしりは免れない。

The Batman

パターソンブルースの病的度合いが好印象。またバットマンが紛れもないフリーキーな存在と認識できる良い話。殴って相手を倒すときもそうだが、銃で撃たれて死なないのは怖すぎる。一方で終盤は過去作に寄せすぎ?ややダレるので、もう少しタイトにしてほしかった。

偶然と想像

最初2作は得意のおじさん向け、という感じで気に入らないのだが、最後「もう一度」が超強力。「上に行く」のシーンで10億点。3作目だけ見せられたら余裕で本年ベストだったと思う。後この監督は、この作品に限ったことではないが、もう少し音楽に気合を入れたほうが良い。

犬王

絵と音楽の力が実にすごい。怪作。ただ、本当に本当に平家物語じゃなくちゃだめだったの、感が拭えない気もするのだが。

ドンバス
バビ・ヤール

まあきついが見てよかった。

微妙枠

ハッチング
女神の継承

今年ついにホラー映画に手を出したのだが、ぐちゃぐちゃ系とか気持ち悪い系は自分は無理だということを認識しただけに終わった。

シン・ウルトラマン

ものすごい良いところ(怪獣ファン的に。冒頭のウルトラQの大盤振る舞いと、着ぐるみの使いまわし・改造の系譜学ネタを早口でまくしたてる早見あかりだけで10億点)と、ものすごい微妙な所(主に人間が出てくる所)のモザイクぶりが凄まじく、非常に評価が悩ましい。ウルトラマンと怪獣が戦っているところは概ね満足(最終戦は微妙だが)だし、山本耕史メフィラス星人は大発明だが、原作での科特隊のさまざまな格好良い機械群が結局いい感じに入れ込めきれなかったのと、最後物理学の宣伝みたいな感じになってるのが気に入らなかったのが減点ポイント。

フレンチ・ディスパッチ

シャレオツで良いんだが、趣味的には合わず。

すずめの戸締まり

旧作も見たことがないので、文字通りの予習ゼロで知人と行った。なんか映画を見に来た人へのホスピタリティを感じて、まあ見ている最中はイージーモードでも楽しい気もするのだが、いざ一人になって振り返ってみると、という感じではある。

ベルファスト

贔屓目かもだが、これをジョジョ・ラビットと比較するのは手合違いで無理筋だろう。

それはともかく、ここで良きものとして書かれるようなものの裏返したる閉塞感、そこからの脱出、というテーマの映画に弱い自分としては、まあ全然乗れなかった。

映画旧作

今年の最大の変化といっても過言でもないのは、映画旧作を見る頻度を増やしたこと。背景としては、これまで気が向いたときに行くぐらいだったのが、6月に「叫びとささやき」を見て「大地震」がごときショックを受けて、もっと真剣に時の洗礼を受けた映画を見るべきだと思ったことがある。

しかし、当然ながら学生でもない限りなかなか映画館には通い詰めとは行かず、フラストレーションが溜まる日々に。来年はもう少しなんとかしたい。以下は今年見たもののリスト。

特に良かった枠

ゴッドファーザー

上記のようなことを書いておいて初っ端これだと成長ゼロ感がすごいが、見た順番なので。まあ何回見ても気づくところがある。ちゃんと見れていないということの裏返しだが。しかし本当に冒頭の結婚式の部分だけでも余裕でそのへんの映画より面白いのに、その後も犯罪的に面白いのだから始末に負えない。

ゴッドファーザーPt.2

映画館で観るとやはり超良い。タホ湖の美しさと対をなす真っ黒さで最高。

パリ・テキサス

話の大筋・根本的な生みの親>育ての親の感覚は必ずしも好きでないが、映画としてのレベルがすごい。有名なマジックミラーのシーンは言うに及ばず、子供の愛くるしさにはとにかく泣かされる。学校からの帰りで道路挟んで平行に歩くところとか良すぎて泣いてしまった。

一方で、父親が本質的にダメ人間で、子供を平気で危ないところにやったり大事にできないせいで全く共感はできず、その意味では適齢期ではなかったのかもしれない。

後スライド・ギターの音楽が最悪だと思っていたが、絶賛されている様子。

ハッピーアワー

もう遅い文学の魁だが、映画としての力はものすごい一方で、全然良い話ではないところが厳しい。後、頭でっかちの自分はアンチ「身体性」なので、そういう所でも気に入らないところはあったり。

叫びとささやき
鏡の中にある如く
沈黙
ペルソナ
魔術師
第七の封印
処女の泉

これらに触れてこずだったのは本当に勿体ないことをした。極限まで研ぎ澄まされた画面、寓話的でどこか奇妙な物語、それらが否応なしに露にする本質、役者の強力な演技と凡そ非の打ち所がない。鏡の〜と沈黙は、シネマリンまで見に行ってしまった。1月の池袋も是が非でも見たい。

野火

恥ずかしながら、今年ついに見た。本当にきついが、見るべきものだったと感じる。

ノスタルジア

最初見たときは狂人の1+1=1と最期の印象しかなかったのだが、やはり絵の独特な美しさが尾を引く。

奇蹟

ドライヤーは今年「裁かるるジャンヌ」とこれしか見れなかったがこれも超すごい、言葉を失う。どうということのない話のなかでも全く退屈しない密度の濃さ。

マッドマックス 怒りのデスロード

良いものは何度見ても良い。

良かった枠

ゴッドファーザーPt.3

タイトルを変えておけばよかったものを、という感想につきるというか。チープだが、大筋としてはこれはこれで。全体通じてアメリカンで安っぽいのでメアリー役がことさらにだめ、というわけではない気がする。ただ、ヴィンセントが基本的にチンピラ感しかないので、こりゃだめだと思いながら見るのが辛いし過去のアナロジーが辛い。

一方でコルレオーネ村で関係再構築に努めるところとかは嫌いではない。爆死は流石になかったが。が、歌つき愛のテーマがもうだめ。

ヘルムート・バーガーが出ていたことにラストまで全く気づかなかった。

雨月物語

とにかく絵と動きの綺麗さが異常。

裁かるるジャンヌ
不気味なものの肌に触れる
レインマン
ショーシャンクの空に
野性の少年
家族の肖像

加齢とともに加点される作品。

レイジング・ブル

かなり好みである。

微妙枠

パターソン

雰囲気は良いが大筋は微妙。最後の日本人とかしつこいにーちゃんとか。好みでない。

気狂いピエロ
男と女のいる舗道

シャレオツだがひたすらに合わない。

永遠に君を愛す
ディア・ハンター

期待しすぎたか。

グッドフェローズ

非常に迷ったが、期待しすぎた感はある。やはりストーリー重視の人間には合わなさがあった。ただジョー・ペシの触れるべからず感は超怖くてよかった。あとは劇場への裏口から入るところの長回しはすごい。音楽のセンスは合わなかったので特になし。

湖のランスロ

絵は良いのでかなり迷ったが。

たかが世界の終わり
粛清裁判

途中で寝てしまい。

 

音楽

今年はほぼほぼ見に行かず。仕事で精神的に参っていたところ、11月にライブ”un_mute”に行けたのが良かった。前日にやる気なく、「どうせ明日かからないんだろうけど、まあ好きなものを聞くかなー」とかいって聞いていた”Follow me up”のライブとか、ミツバチとかと被る曲から思いの外かかってかなり意表を突かれた。油断ならない。

東京国際フォーラムながら2Fの後ろだったのだが、客層がおっかない感じだった。

展覧会

今年はさほど行かず。上期は大英博物館北斎展と滑り込みでゲルハルト・リヒター展見に行った。11月上野に「岡本太郎展」行ったのと、後は西洋美術館の常設展を久方ぶりに見たぐらいだろうか。いずれも非常に良かった。写真が取れる展覧会が増えてきたのに時代を感じる。

西洋美術館の常設展では絵が追加されてたり、最近の元素分析(カルロ・ドルチの聖母の絵)の結果が出てたりアップデートもあって面白く見れた。

ゲーム

ほぼ全くできていない。タクティクスオウガミンサガリマスターも、ポケモンSVも何も。

やったのは2つのみで、1月から2月にかけてポケモンアルセウス。これはかなり癒しになった。毎回オープンワールドのゲームで同じことばかり言っているが移動しているだけでも超楽しい。後、やはり殺伐アトモスフィアが感じられるところがポイントが高い。もともとポケモンは、そのへんの道路に屯しているトレーナーにせよ、チャンピオンを目指す主人公にせよ、ちょっとアウトロー感のある世界観だと思うので。一方で、ポケモンのデザインはもう少し可愛くても良かったが。

 

 

年度明け後はGWに遊んだインディーゲームのFlorenceのみ。これはとってもビビッドで良かった。元気が出る。

Florence - Annapurna Interactive

RTAinJapanは夏、冬ともちびちび横目で見て楽しんでいる。冬は残念なことに殆どまだ見られていないが、特にcupheadとドラクエモンスターズが良かった。

その他

昨年からの続きとしては、Nielsen-Chuang読みはそこそこ粘ったが、日本語版で言うところの1巻が読み終わるか...?ぐらいで一旦ペンディング。しかし、ゼミを通じて、独学の困難性を再認識したのが非常に大きな教訓だった。自分だけで勉強していたら間違いなくもっと早く頓挫した挙げ句、「酸っぱい葡萄」的な言い訳を考えていたと思われる。一方で、自分が直近量子計算そのものには関心が高くないことを理解できたのも良かった*7

後ここでは積極的には詳細を書かないが、22年に実施したいくつかの試行を通じて、自分が想像よりも遥かに現在の居住等環境に過適合していることを認識してやや背筋が寒くなった。

無難な話でいえば、とりあえず車マストの環境に恐怖しか感じない*8のは、生活自由度を狭める側面が強く困ったものである。院生のどこかでアメリカにでも押しかけ女房的に滞在してショック療法をやるのが、有力解であったと思われる。

その他、結局何をどこまで諦められるか、的なことを再考する必要性を強く感じた。まさに加齢の影響という感じだが。

*1:元ネタは(勿論)21年12月のKing Crimson最終ライブでのドラム曲のサブタイトル。2年連続で安易な流用で恐縮だが。

*2:というか長い休みでのリハビリしかできていない

*3:塾で蛍光ペンをもらったがダサいロゴ入りだったので使わなかった

*4:形になると方方への説明もやりやすくなるとか下世話な話もあり

*5:SNS上では面識ない人に笑われていたりする

*6:このルールだと大量に買って読了していない理工書が未来永劫ストックに入らないのが難点だが

*7:役に立たないことが人口に膾炙してきたことのせいではないが

*8:免許は取れたので練習すれば乗れるようになるかもだが、事故厳禁、みたいのは到底無理だとしか思えない

2021年の思い出

昨年に続き、世相的には変異種が各国で猛威を振るい依然コロナからの回復はまるで見通せず、という所である中で何だが、自分にとっての2021年を一言で総括するならば、”Completion”であった。漢字一文字なら「完」。

私事でいえば、年明け早々の審査を経て3月の学位取得・修了に伴い学生の身分を再び脱却したことが最大の変化であったし、これが上記の総括の大きな理由ではある。

ただそれだけではなく、後述するように今年摂取したコンテンツで特に強い印象を残したものはいずれも区切り、もっと言えばそのうちの一部は「一つの時代の終わり」を示すようなものであった。自分にとってもこれらについて確かに「完結した」、という感覚がある。これがもう一つの理由であり、(コンテンツについては消費者レベルでありながら何だが)、上と合わせて人生的に「次」どうするか、を考える段に差し掛かっていると感じる。

問題が顕在化してから、さて、とか言っている温さは、ボードゲームなら対戦相手にしっかりしばかれ身を持って反省を促される所だが、実人生だとゆるやかな自死に向けていともたやすく反最適的戦略的に振る舞えてしまう所は滑稽でもある。

いずれにせよ、もはや年一度の更新で中身も散漫だが以下に少し記載してみたい。

本当は区切りでもあるので内容ごとに記事を分けるべきかもだが、億劫なのでまとめて書いてしまう。*1

大学院関連

昨年12月に死にそうになりながら中間審査を受けたと思ったら、年内に論文提出、年明け間もない内に審査、と兎に角目まぐるしく、本質的には新しいことを何もしていないにも関わらずジェットコースター的であった。

審査はオンライン形式への準備が至らず、絵なり式なりを白板にその場で書ければ効率的に回答できそうな所を、Web会議でスムーズにやる方法を見出だせていなかったのと、本当に予想だにしないような異次元的質問が飛んできて動揺したり、と満足いく対応ではなかったものの、そもそもの内容が立派なものでないことを鑑みればこんなものか、というところ。

他には、審査一般公開とか形式的なものだろう、とか軽く見ていたら本当に学外の人*2って来るんだ…的な驚きがあったり。有り難い話ではあるが、相当意表を突かれた。

しかし、この審査に限らず全体的に物理の学生だった頃の常識で色々第一感考えがちなのだが、それが覆されることが多い、というのが課程全体を通じての印象ではある。

たとえば2月にあった最終試験もcheerfulな印象を受けた*3が、まあ審査じゃないのだからさもありなん、とか軽く考えていたがどうも一般的にはそうでないらしいことを後で知ったり、とか。

他にも博士課程にもなって授業にせっせと出て単位回収をする、とかそんなこと物理の学生の頃には夢にも思ったことがなかったが、実のところ今回の課程ではXX単位*4を獲得することが必要条件になっているので、えらく苦労した。

なにより、要件である単位数は(無駄に)多い割に、オプションとなる講義数が少ないのは実に問題であった。日中は業務に従事している関係上、効率的に単位取得するには集中講義が最良なのだが、情報・応用数学関連では学外の人が来てやる集中講義のコマ数は乏しくまるでない、というのも物理学科的直感に反するところで、大きな驚きと実務的なダメージを伴うものであった。

仕方がないので、スキマ時間を見つけてはひーこら言いながら学外からキャンパスに通い、(過去の貯金で効率的に単位が取れそうな)物理学科に潜って集中講義(それも実験学とか)を取りまくる戦略で単位集めに精を出す、とか凡そ正統な手段からはかけ離れたことをやっていたわけだが、こうした手段が使えない人がどう対応するのかは正直謎である。まあ社会人の椅子を確保しながら、とかいう不埒なイレギュラーに配慮する必要なし、というメッセージかも知れないが。

それはともかくとして、受けた物理の集中講義はいずれも自分でもよく知っているような有名な先生や、バリバリの若手の先生による面白い内容が多くて非常に楽しめたし、メゾ(量子ドット)や量子コンピュータのハードの話、情報熱力学の話など、学生の頃勉強したわけでない分野の講義でも、講義を聞く形式で存外理解できるということは嬉しい驚きだった。*5

研究の本筋以外の部分ばかり書いてあれだが研究について言えば、(事後視点かもだが)これは誰がどー考えても非自明だろう、という領域までは明らかに行かなかったという認識。最近は大体何をやるにしても、実力が足りておらず、想定されている標準時限に対して帳尻があってくるのに1年ぐらいビハインドが要る、というのがお決まりのパターンである。大学以外での環境変化に伴っての時間の取られ方など恨み言等ないわけではないが、そこも込で並列でやることを選択しているわけなので、一切含めて実力かと考えている。

ただ、もう少し寄り道上等、みたいな開き直りをもって修了ルート直結以外のこともやっても良かったような気はしないでもない。ただでさえ順調でなくかつ専業の人に比べて潤沢な時間を持ち合わせてる訳でもないにも関わらず、余計なことに現を抜かしてると後ろめたさがあるので止してしまったが、たとえば国内会議の参加頻度を上げるとか、非共同研究者にコンタクトする機会を持つとか。

ただ、これで善悪ともかく一区切り、ということで色々やる気であるとか、やる問題案も湧いてきた所ではある一方で、昨今の世相の環境意識の高まりの煽りを受ける格好で阿呆みたいに(既存の、要は大学と関係ない)業務側で忙殺される羽目になっており、割合フラストレーションがある。ここをどう折り合いをつけるのか、あるいはつけないのかは割と本当に今後の大課題である。

将棋関連

もはや単にコンテンツを摂取してるだけなんだが、まあ22年ぶりに藤井竜王の年でしたね。去年書いた、完全体へのセルの進化、なんて表現も生温いかも、ぐらいの破竹の進撃を目の当たりにして、これは御城将棋形式での電王戦復活まったなし、とか言って知人に呆れられたりしていたが。しかし、似たようなことを某女流が冗談で言っていたのを動画で見て*6やっぱり中の人もいろいろ考えるし、よりシビアに見ているんだな、とか思った次第。

後、藤井聡太全局集がなんか知ってる話ばかりでつまらん、とか思ったが冷静に考えると大舞台ばかりになったからだった。

その他、佐々木勇七段がようやく覚醒して、スマイル永瀬に食らいつくペコポジションに近づいたかと思ったが、どうも煮え切らない。A級昇級は期待したい。

後は浅川書房から出た羽生新刊がかなりのサプライズでしたか。中身は難解。ただ、半年で既にトレンド進化の兆しも見えなくないので、本当にシビアな時代だな、と。

 

読んだ本

読みさしの本は含めない。

特に良かった枠

不滅

2021年の正月休みに読んだので、年度脳的に今年の印象が希薄だったが。それはともあれ、真の「存在の耐えられない軽さ」ということで流石の重厚さ(文章は軽やかなのだが)。旧作込みでは今年のダントツ(年明け早々がベストなのも悲しいが)。

一度きりの大泉の話

なかなか内容の重さ故に推しづらいが、今年屈指の読むべき本。

ベケットと「いじめ」

正直内容を咀嚼しきれていないが、はじめて「無意識」系の話を真面目に説得力を持った形で受け入れられた気がする。すごい本。

結婚の深層

いやすごい本だった。あけすけでありながら好感度が高い。

エネルギー産業2030

前著よりも世相を受けて、より踏み込んだ内容になっていて面白い。

弁護士になった「その先」のこと

いや、自分がなる訳ではないですが。ただ、きわめて一般的な内容を含んでおり、(個人商店的な仕事をやる人的には)いきなり入ってきた人にぱっと渡せる本として有用。

良かった枠

実力も運のうち

すごいことを言っているわけではない。が、レビュー部分は勉強になるので良い。フランク・ナイトの本に関心が湧く。

なぜ歴史を学ぶのか

なんか、(片手で数えられるほどのサンプル数なのに申し訳ないが)歴史系の一般向けの本って、それはそうだよね、という結論をねちねちと喋る系(一方で、専門家向けでないので立証のための資料などはサラッとした感じになる)という偏見がある。気を引くための変なことを言わない誠実さということかもしれないが。

従順さのどこがいけないのか

これも面白い。

ゲーマーが本気で薦めるインディーゲーム200選

こういうおすすめ本が意外と好きである。中身も面白い。

GRID

もう少し細かいところも書いてあってもよいが、良い。

微妙枠

今夜ヴァンパイアになる前に

自分がその前後で決定的に変化してしまう「変容的な経験」において、果たして合理的に意思決定する術があるかどうか、がテーマの本。なのだが、哲学系の本って発問力は高いけど真面目に解決に向けて順を追って思考する気があるの、みたいな気持ちになる内容であった。というか、成書にするのだから、あーでもない、こーでもない、みたいのをダラダラと書くのではなく、ちゃんと整理してほしい。と、仕事みたいな気分で文句を垂れたくなるぐらい、冗長に感じられた。

アカデミアを離れてみたら

個人的にはそれほど響くところが多くはなかった。

文学部の逆襲

(見るからにだめで)案の定だめだこりゃ、という感じ。多分この人の本を読むことは今後ない。

 

漫画

読みきった枠

ルックバック

ありがちで申し訳ないが今年のベスト。

魚社会

旬は超えたような気がするが、出ると読んでしまう。

ベルセルク

5月に通読。旧作(年末に41が出たが)の今年のベスト。

というか通読して思ったけど、完結しない話筆頭、みたいな感じでリアルタイムでは認識していたが、今見ると別に全然どうでも良い話成分はないですね。他の完結しない系の話とか冗長な話とは一線を画す、というか。まあ行程の中でこれは入って全然不思議ではないよね、という話を超丹念に書いた、という印象。個人的にはロスト・チルドレン辺りまでが好みだが、その後も全然破格に面白い。

ギガタウン

新作でないが、これも素晴らしい。

あそび玉(下のアンソロジー所収)

萩尾望都SFは実は個人的にピンとこない物もそこそこあるのだが、これは良かった。

楠勝平コレクション

これも全然知らなかったが、非常に良い。「茎」が良い。

20世紀少年

浦沢直樹も電子版発売開始、ということで年末読んだ。最初は掲載誌のせいか溢れ出るおじさんへの優しさ成分がしんどかったが、話が進むにつれて20年前の話なのにあまりにも現代とリンクすることが多すぎて時事ネタチックで逆に面白い。万博ばんざい、万博ばんざい。完全版を読んでいるせいで、オチは最初?だったが、原作はオチが違うということを読了後認識して、もとの方ならさもありなん、という感じなのでOKです。

面白いが時間が取れず止まっている枠

日出処の天子

山岸凉子電子版発売開始、かなりの事件だと思う。再読のため購入したが読みきれず。

パトレイバー
チ。

その他、今まで読んでいたものの新刊は一定程度継続的に読んでいる。ジョジョリオン完結?個人的には9部に期待ということでノーコメント。

1巻だけ読んで厳しくて止めた枠

電波の城

・怪獣8号

映画新作

新作をてんで見れておらず正直歯がゆいところもあるのだが、見て良かったものは順に「シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇」、「ノマドランド」、「DUNE」。

シン・エヴァ

これも今年の「Completion」感の少なからぬ要因。自分は一連のシリーズに人生をやられたわけではないが、それでも途方も無いものを見た、という印象。25年がかりの大伽藍を完結させようと思い、それをとにかくやってのける、ということ自体が想像もつかず、纏めてみせたことに畏敬しかない。

SF的なところも、これしかない、みたいな落とし所に結びつける力技も本当にすごい。戦争・エネルギー・宇宙船クルー・方舟のイメージを結んでこんなに綺麗になるんだ、とか。

後は出落ち系のギャグ面もよい。前回の駄洒落にも笑ったが、今回の個人的ベストは量子テレポーテーションする碇ゲンドウ。次点で冒頭パリで出てくるカエルルックリツコ。

また、制作取材の「さようなら、全てのエヴァンゲリオン」も破茶滅茶に良かった。これは本当に強烈な内容で(この人絶対経営とかは別人格でちゃんとやってるっぽいのに)自分の映画の制作になると、文字通り全てをつぎ込んでしまってスケジュールがメタメタになるのだな、というのと、周囲への(悪)影響といい、強烈なものを見た。他人事とは思えない。ともかく25年越しのものにケリをつける、というのは斯くの如しか、という感じ。しかし特筆されるべきは恐るべき過去の知識・経験の蓄積と生みの苦吟の果ての「自分の頭の中だけでは大したことは思いつかない」という台詞の重み。実に良いものを見た。後、蛇足だが合宿のところでエヴァが凧に乗ってくる夢を見た、という雑談が出てきて、最初何を言っているのかわからなかったが、「仮面の忍者赤影」のオマージュをやる、ということか!ということに後で気がついた。(だから庵野も受け答えしていた)

ノマドランド」

どこまで行ってもきつい話だが、それでもなお、光景の美しさはすごい。その合わせ技で良しとしてしまって本当に良いのか、という話はありつつも。

「DUNE」

話はスピリチュアル感満載な上、大して面白くないが、絵がとにかくすごいのがポイント。殺陣は意外と格好良くない。

マトリックス・レザレクションズ」

これは、(過去作への思い入れが強くないからかもだが)これはこれで許容範囲だが、何度も見たくなるほどのものではない。

映画旧作

柳生一族の陰謀」・「魔界転生

今年のベストは千葉真一追悼で見たこれ。いずれも大変良かったが、特に前者が滅茶苦茶面白かった。チャンバラ時代劇、という一言には全く収まりきらない魅力があり、アメリカの名作ギャング映画の日本のカウンターパートと言ってもよいのでは。

赤ひげ

4Kを映画館で見る。本筋は並だが、冒頭すぐの松の構図とか、有名な坂の部分、風鈴の部分など、とにかく絵の尽くがついぞ見たことのないような美しさで、この絵を作る狂気にこちらもあてられそうになる。頭がおかしい。

隠し砦の三悪人

こちらは普通。

異端の鳥

こちらも白黒で絵が美しい系だが話は苛烈。しかしそれ以上のものが果たしてあるか?

夏の嵐

最初はあらすじだけ見るとかなり厳しそう、という印象だったが、腐ってもヴィスコンティということで3月のド繁忙期に見に行き、結果としては悪くなかった。プレ山猫。貴族の家や服の根性の入り方とかがすごくて、本来の見所はそこであったと思われるが、やはり義援金を手にしたフランツの堕落ぶりが良すぎる。特にやりたいことや強い信念があるわけでもない凡夫に対して本当に手厳しくて、聴衆にガスガス刺さって最高である。勿論密告の部分も同様に良いが。しかし「没落」を描かせると、ヴィスコンティ、本当に右に出るものなし、という感じ。

ゴッドファーザー2

なんで今年また見ようと思ったか忘れたが、映画において音楽が微妙だといかに価値が毀損されるか(1との最大の差は音楽)をまざまざと示す傑作。デニーロは良い。

テルマ&ルイーズ

めちゃくちゃ期待しており今年遂に見たのだが、冷静に見るとテルマにやや難があるケースが多い、という印象で意外と入り込めず。ただロードムービー力は高い。

東京ゴッドファーザーズ

クリスマスにNetflixに入っていたので見る。これも大変良い。

蒲田行進曲

年末に流れていたのを見る。これも速度があって存外良い。

音楽

依然コロナ下で実際にイベントが開催できたものは限定的な中、参加できたものはいずれも奇跡のようなタイミングでの開催、かつその位置づけも「節目」を強力に感じさせるものであった。

一つが3月は横浜アリーナ坂本真綾25周年記念「約束はいらない」(この題名を最初に見たとき、感極まる所と恐怖めいたものが混在した気分になったのが思い出される)

で、もう一つがKing Crimsonの(最終)来日ライブ。後者については特にひとかたならぬ所があるので、後ほどだらだら書く。

前者は緊急事態宣言解除直後であり充填率も減らしての開催であり、かつ日頃行かないライブでかなりおっかなびっくりであったが、それでも実際に席について貼ってあるチラシの「私は今日皆さんを幸せにするためにここに来ました」という件を見ると(年季が入っていないにもかかわらず)こみ上げるものがあり、ナウシカに出てくる老兵たちの気持ちが心からわかると感じられるものだった。全体通じて、節目でありながらも総括的な内容だけでなく「現在」の到達点を見せる、という意識を感じさせる内容で大変素晴らしかった。ゲスト曲もきわめて良かった。アレンジ込みでいずれも実に良く、満足度が高い。(土岐麻子とのDown townとは!)しかし本人も難しさに言及していたが、本当に展開が複雑でよく歌えるな…、みたいな曲ばかりなのにこの精度でこの数をこなせる、というのは実に信じがたい。10月に出たDVDの映像も映像面での決め具合が良い意味でライブとは思えぬ仕上がりで出来栄えが異常だった。

さて、King Crimsonだが12月に、”USA”、”Earthbound”に加えて、”The Great Deceiver”をSpotifyでついに配信。長らく配信に載せてこなかったアルバムであり、これ以上望みようのないクリスマスプレゼントであることは間違いないが、その含意も同時に明確であり、寂寞を感じずにはいられない。

 

自分が最初に聞いた彼らのアルバムは「宮殿」だったが、実のところ当時はピンときておらず、次が半ば偶然ながらよりにもよって、この”The Great Deceiver”であったのだった。予備校にいた頃、家で机に向かえない性質のために通っていた最寄りの図書館にたまたま置いてあり、この「奇術師箱」が放つ得体のしれなさに興味を持って手に取ったところ、Disk 1のLTIA2で頭を殴られるが如き衝撃を受けた、というのを端緒として、趣味嗜好への決定的な影響を受けることとなった。もちろん言うまでもなくブックレットのCrossのインタビューなどコンテンツが充実していたのも大きい。

こんな人は後にも先にも相当いないのでは、と思う。何も知らぬ最初の出会いとして、これ以上のものが今後望めぬ最高の内容から入門してしまう、というのは幸運なのか不運なのか正直分からず、今でも善悪不明である。ただ、変容的な経験であったのは間違いがない。その後多少他のプログレも聞くようになったが、King Crimsonだけは意識の中で別の枠に分けている所がある。

そんなKing Crimsonだが現行のトリプルドラムになって以降三度目の来日を発表。しかも公演前からTony Levinらがこれが事実上Crimsonの歴史上最後のライブとなるだろう、ということを仄めかす中、コロナで開催も危ぶまれた訳だが、公演も奇跡的に感染者数増加の谷間に収まった格好で11月と12月に開催となった。

プログレの神に感謝しつつ、初日の東京国際フォーラム、立川ステージガーデン、最終日のオーチャードホールに参加。18年と異なり、直前に出たライブ盤を見るにもセットリスト的にも大盤振る舞い、実際に聞いても現在の総決算的な色が見え、流石に厳粛な気持ちにならざるを得ない。

初日の東京国際フォーラムは、席が微妙だったのにも関わらず音が大変良くて驚く。基本的に大体泣いていたが、18年は”One more red nightmare”を聞けておらず、今回聞いたら原曲よりも良かったので驚く。この日はこれと”Level five”が良かった印象。

12月5日の立川は、場所的には隅で国際フォーラムよりもいまいちな席だったが、その割にはよく聞けた。ただ、Crimsonのような座って2h聞くようなライブは想定していないのか、椅子の作りが兎に角チープで終盤はかなり腰へのダメージがでかかった。

中身としては、参加する残り2日で聞きたいと思っていたうちの1つである”discipline”を聞けて大満足、となるはずだったのだが、まさかのFrippの機材トラブルで破綻。しかし悔いが残るからか、アンコールで追加で再トライしてくれる、というサービス精神(これも驚きであるが)で、今度はしっかり決めてくるという所まで、大変粋であった。

(Zabadakみたいだな、とか不謹慎なことを思っていたら、ご本人が言及されていたので汗顔の至りであった)

追加公演前の移動日文のTony Levin's diaryは流石に涙なしには見れなかった。"Photos of Ghosts"じゃん、とか冗談を言う気にもなれないぐらい。

そして、最終日、12/8のオーチャードホール。席は列的には会場中央ど真ん中、Jeremyま正面みたいな感じで写真にうってつけだったが、目の前に巨大な人がいるという不運ぶり。つくづくここ一番の運がない。なお、後で認識したが、パッパラー河合氏が付近にいた?模様。

中身としては18年に聞けておらず、こちらも個人的に急上昇中であることから、今回文字通りの最後のチャンスでなんとしても聞きたかった"The ConstruKction of Light"も出だしから聞けて大変喜ばしい。この時点で既に落涙。そして1部最後のSchizoid manでのGavin Harrison渾身のドラム、本当に格好良かった。あとは途中で舞台Fripp側に偶然なのか、紙吹雪のようなものが上から1枚程度落ちてきていたのだが、それが照明を受けてひどく奇跡的だった。とても現実とは思えない光景だった。

2部が"Indiscipline”で終わって残すは"Starless"のみか、と思いきや、まさかの"LTIA2"!本当に予定調和に堕することを最後までよしとしないのだな、と嬉しくなってしまった。"Starless"はその後にしっかりやっていたが。

そして最終日のTony Levin's diary。サムネの写真がすべて。感無量で、言葉もない。

そして、セトリの"The way to completion"(今回の日記の冒頭はここからの引用)、そして、これだけで終わらず"The way to a new beginning"とは。

常にFrippの下恐るべき信念をもって決して同じところに留まらず変化し続け、かつ強度を持った内容を残してきたKing Crimsonだが、現在までのトリプルドラム体制も間違いなく一つの極致であったと感じる。これを経験することができて、本当に幸運と思う。また、(外部環境に依る所大であったとも思うが)最後のライブを日本で開催する、という英断とそれを実現してくれたことにも感謝しかない。そして今までのすべてにも。

tonylevin.com

tonylevin.com

という訳で、上述の通りの状況である今年を象徴する冗句を思いついたので記載しておくと、「スターレスプラチナ」となるだろうか。

(言わずもがなの某スタンド名だけでは勿論なく、プラチナの「きっと、驚くぐらい」の部分のベースって、”starless”の最終パートのWettonベースと存外似てないか、というか(調を別にして)置き換え可能では、という思いつきから出てきたもの)

展覧会

今年は全然行かなかった。石岡瑛子展とかゴッホ展とか興味を引くものはあったのだが、コロナを経て並ぶのにいつのまにか抵抗を覚えるようになっていた。もともと全く気にならない質だったのだが。

北斎づくし

これは予想外に存外。

ベルセルク

これは最初悩んだのだが、嬉しい驚きというか行った甲斐があった。滅茶苦茶原画も多く、かつ間近で見れる大変得難い機会であった。というか消費者サイドだと喜んでいればよいのだが、漫画家志願の人とかこれを見てモチベーションを保ち続けられる、というのはやはり並外れた精神力だなと感服する。

庵野秀明

これも最初悩んだのだが、蓋を開けると衝撃的な内容の濃さ。本年ベスト。まず本人の作品に入る前の特撮エリアが豪華すぎて、子供の頃から図鑑を読み漁り、ビデオを繰り返し見てきた人間には夢の空間すぎる。2.5時間ぐらい滞在していたが、普通に1.5時間ぐらいここでの展示品(写真も取り放題という信じがたい状況)や流れる動画に浸かり切りであった。

勿論、その後の本人の制作物の展示も大変良い。特に「帰ってきたウルトラマン」がすごすぎてもう。後は有名な「じょうぶなタイヤ」とか。

なんか本格的な仕事に入る前のもののほうが個人的にはむしろ面白かった、とはいいつつも、数々の原画、企画書などこれでもかという怒涛の内容でファンであればあるほど抜けられんのだろうな、とか。後は第三村のミニチュア(この頃には時間切れ気味でせっかく実物が置いてあるのに時間をかけて見られなかったが)や島倉二千六の空、など最後まで全く落ちない熱量の恐ろしい展覧会だった。

ゲーム

ほぼできていない。サガフロをレッド版のみクリア。超面白いのだが、これをやっててよいのだろうか的な声が聞こえて途中でやめ。後はSwitch Onlineでマリオカート64を少し嗜んだぐらい。2021年はなかなか落ち着いてゲームできず悲しい。メトロイドドレッドとか女神転生とか面白そうなソフトがいくらでも出ているし、インディーズにも最近関心がわき始めたのだが。死ぬまでにspiritfarerはやります。

一方で、RTAinJapanは依然夏、冬とも楽しんで見ている。夏はcupheadとペプシマンバトルガレッガが特に良かった。冬はマリオ64目隠し、スーパードンキーコング3ドラクエ3が特に良かった。

その他

めでたい話としては、結婚式に久方ぶりに出た。良い式であった。

後、知人とX年ぶりに勉強会をすることになった。有り難いことである。(電子)本棚の肥やしであったNielsen-Chuang読みが開始。まあ速度はゆったりと、だけど今年も継続できれば。

後は加齢の影響を感じる出来事があったので、脳の劣化を止めるのと根拠のない慢心を防ぐために2022年はちゃんと計算練習をしようと思った。2022年1月現在、取り敢えずリハビリで以下の問題をセコセコと解いている。本として好きなのは竹村「現代数理統計学」なのだが、たくさん問題があって解答も整備されているのが良い。

後、2021年は諸事情で月2ぐらいの頻度で、諸外国の研究者や役人がフォーマルにしゃべる、参加人数の多くない会議を聞く機会があったが、いわゆる一般的な意味でエリートであると思しき彼らも、別に死ぬほど流暢な英語でかつ意味深いことを言っている訳でもない(普通に癖も多分にあるし、中身も普通に間違いを含む)ことを認識した。

*7

やはり英語が(そんな難しい単語は使わずに)できるのと、詰まらずに自信満々に言う、のとアクセントを正しくする、という点がきわめて大事ということを理解した。

悲しいかな、喋れないというのはその場にいないのと同じなので、英語がわからないというのはビハインドであると言わざるを得ない。(しかし、こういうことって大学院で学会に出て、学生の内に学ぶことなのでは?つくづく帳尻の合わない人生である)

 

*1:(2022/1/10追記)まとめて書いたら怒涛の12000字オーバーになった上、ECサイトか、ぐらいの長い記事になったので、今後は可読性も考えてこまめな更新を心がけようと反省した。

*2:厳密には元近傍の研究室の方で移籍に伴い相互作用が発生した、的な所なので全くの外部ではないが

*3:ので調子づいて無駄に景気のよい事を言って呆れられた。会社に入って悪い意味での軽薄さに拍車がかかった嫌いがあるが、その割に「社会」での必要分には足りていないので始末が悪い

*4:意味があるかはともかく一応伏せておく

*5:学生の頃は授業を聞いてわかった例がなく、基本的に教科書を読むことでしか勉強できなかったので

*6:危険球では、とか思いつつ

*7:いや、そんなこと学生の頃からわかっていたでしょ、という感じだと思うが、学会など超本質重視の極限の場だけでないある程度フォーマルな所でもそうなのだな、ということを認識した。

2020年の思い出

2020年はコロナを筆頭に外部環境が目まぐるしく変化し、それにまごつき戸惑う中で、あっという間に過ぎてしまったという印象の一年であった。

研究に関しては、年も終わりが見えつつある11月頃に、立て続けに論文の採択が発表されたが、土壇場の状況変化により急遽様々な対応(というか要はD論執筆だが)に追われる激動の日々となった。繁忙期と重なって11月から12月中旬はかなり厳しかった。とはいえまだ何も決まっておらず、年明け以降が正念場だが。

一方で上記の話は、中身の本質的な部分は昨年までに一段落しているものであり、その意味で新しいネタに本来取り組むべきなのだが、それについては(面白げな話に触りつつも)腰を据えて当たれておらず反省が多い。永瀬王座が将棋世界かWebかのインタビューで、「コロナ禍下の緊急事態宣言下でどう将棋に取り組むかで、終わった後に絶対に人ごとに大きな差がつくと思ったので必死に取り組んだ」みたいなことを言っていたと思うが、その意味では正しく駄目な側のお手本のようであった。

昨年の総括で取り上げた話題で言えば、映画については世相の影響もあって外出機会が減ったので全然見れていない。

新作では4月頃にオンラインで見た「ホドロフスキーのサイコマジック」は良かった。(どうも精神的に参っていると、この類のものに弱くなる傾向がある)

昨年期待していた「ミッドサマー」は作り手の性格の悪さと賢さが遺憾なく発揮された良いものと感じたが、その後見た「へレディティ」の方が全体的には綺麗で好みであった。

鳴り物入りの「TENET」は、時間あたりの情報密度がとにかく多く、脳へのジャンク投入、という観点では良かった(終了後に自分で時系列を書き下して答え合わせをしてしまった)が、何度でも見たい、という類の作品かは微妙。

どうでも良いが、予告で洋上風力発電をクローズしていて、それで題名が「TENET」というのも、洒落のつもりがあるのか、と気にしていた(一部では、本当にそうだ、という向きもあったが)が、特に本編では当然ながらメンションはなかった。

旧作込みでは一番よかったのは、20年以上ぶりに映画館で見た「もののけ姫」だった。小学生のときに映画館で直接見た最初のジブリ映画であり、かつメイキングの「もののけ姫はこうしてうまれた」がものを作るということの一つの極限という感じで凄すぎる内容(TVで放映していたのを子供の頃に見たが、森繁久彌美輪明宏が、こうしてほしい、という要望を宮崎駿から受けると忽ちまさしく变化するように演技を変えていく、しかもそこで終わりとならずにさらなる試行錯誤を重ねて化けていくところや、スタッフの苦悩が滲む件をはじめ、今でも様々な場面が想起される)で強い印象を受けた作品であったが、そのバイアスを抜きにしても手合違いと感じた。冒頭から音と絵の実力に圧倒されてそちらに意識を持っていかれるがために、話の本筋をリアルタイムで追うために意識をそちらに向けるのに難儀するようなアニメが果たしてどれだけあるか。

後は、8月に見た「ゆきゆきて神軍」はひたすら圧巻だった。今年初めて見たもので最も見てよかったのはこれかもしれない。百聞は一見に如かず。メイキングの本も読んでしまった。

その他は恵比寿で「8 1/2」など見るがピンと来ず。(本当はアマルコルドが見たかったが予定が合わせきれず見れなかった)

 

ゲームについては、昨年投稿した論文が(分野の通例ということだが)半年たって漸く音信あり、その後Reviseしてもなしのつぶて、みたいな状況だったので不貞腐れていたところに、突如降ってきたSwitch Onlineへのスーパードンキーコング3部作の投入が大事件であった。という訳で箍が外れたが如く、夏から秋にかけてせっせと1,2をクリアしていた。特に2は初めてやったが、難易度調整が(1の比ではないにもかかわらず)実に絶妙で、一つのステージで30回-50回ぐらい死んでいるとプレイヤーの操作レベルが上ってできるようになる、という仕組みで(研究や仕事では容易に得られない達成感へ久しぶりにアクセスでき)とても感動した。イギリスの宝ことDavid wiseの音楽については言うまでもない。(自分は1の「ふぶきの谷」のBGMはじめ、FisherのBGMもかなり好きだが)

後一連の過程の中で、スーパードンキーコングRTAの動画を頻繁に見ることになり、それを通じて(自分ではやらないながらも)RTAという分野にアクセスすることができたのが嬉しいことであった。ドンキーコングに限らず、さまざまな分野の動画を見る機会ができたが、いずれもまさに人類の可能性を切り拓いている、という趣で、苦労や技芸が詳細に分かるわけではないが、非常に心動かされるものがある。(ここに来て漸く「観る将」の気持ちとされるものが分かった気分になった)

年末もRTA in Japanのオンライン放送のお陰でとても充実した気持ちで年を超すことができた。(シャーロック・ホームズ、ファイナルソード、クロックタワートリロジー、ダークソウルリマスター、朧村正、マリオランドトリロジー、新旧ゼルダなどエンジョイしてしまった。)

 

音楽は、イベントはほぼ参加せず。1月に中野サンプラザに"CHRONO CROSS 20th Anniversary Live"を聞きに行ったぐらい。アレンジで化けるものもあり(「世界のへそ」など)想像の5億倍プログレであった。 

しかしはや21年、ということで今年こそCrimsonが来る予定のはずだったのだが…早くコロナが収まることを願いたい。後は今年の3月こそ、だろうか。

 

長くなりすぎて疲れたので、本と漫画については、列挙するに留める。

去年読んだもののうち、特に良かったものは、「ブルシット・ジョブ」、「社会科学のためのベイズ統計モデリング」、「藤井猛全局集」、「新型コロナからいのちを守れ!」

良かったものは、「箱男」、「一日一つだけ強くなる」、「マックス・ウェーバー」、「証言 羽生世代」、「はじめてのスピノザ」、「竹中平蔵 市場と権力」、「ワークマン式「しない経営」「ドキュメント ゆきゆきて神軍

、まあまあだったのは「自発的隷従論」、「現代将棋を読み解く7つの理論」、「未来の医療年表」

しかし、全体通じて量も質も自分は本当にしっかりした本が読めなくなってるのだな、と落胆する。

 漫画で良かったのは「数字であそぼ。」(これは本当にすごい。「動物のお医者さん」の再来)、「おむすびの転がる街」、「きりひと讃歌」(主人公の同僚が人ごとに見えないのと、顔芸が印象深い)、「風の谷のナウシカ」(通読して、あまりの重さに疲れ果てた)。

悲しいことに自分が昨年一生懸命読み始め、非常に面白く読んでいた「アクタージュ」はなくなってしまったので、今後継続して読むものがあるとよいのだが。後は時事ネタだと「鬼滅の刃」は最初4巻ぐらいまで読んで「言われているほど面白がれないな…」とか思っていたが、その後あまりに身の回りでも話が出るようになったので読み直して18巻ぐらいまで読んで置いてある。最初の頃はネーム一発でどこまで運ぶか、みたいな節もあり、割と変わり種的な立ち位置の話だと思っていた(大筋はありがちなので、そういった目新しさが売りか?と思った)が、途中から普通のキャラドリヴンのよくある漫画みたいになって分かりやすくなった(よくある面白い漫画になって、世の中的に受容しやすくなった)、という印象。表紙がその象徴か(最初の頃は表紙が常に主人公と別のキャラ2体となっていたりして、関係性を推す意図かもだがそういったものをあまり見ない印象だったが、その後は表紙は単独のキャラのみになってありがちになった)

 その他、「旅行」タグをつけているが、2月(!)にヨーロッパに行く機会があった。正しく行けるか否かの瀬戸際、という所で行くことになった、という所であり、詳細は略だが、珍しく時間に余裕がある旅程であった(とはいえ飛行機が強風で飛べなくなって結果急遽12時間鉄道に乗る羽目になったりアクシデントとは未だに縁が切れないのだが。スキポールでは以前もトラブルに見舞われており、実に相性が悪いと言わざるを得ない)。

中でもオランダでは様々な良い経験ができ、オフの部分ではとりわけConcertgebouwに行くことができたのは("The Night Watch"の聖地巡礼的な意味でも)得難い機会だった。(イギリスでもHyde Parkにニアミスだったが、こちらは横目で見るに終わる。)音響はド素人の自分でも、安い席にもかかわらず、音の耳への入り方がまるで異なるように感じられるものであった。その他、フェルメールについての自己認識(解像度)がかなり改善された。 

後はラジオを聞くようになったのが多少なりの変化か。

 

 

 

 

社会科学のための ベイズ統計モデリング (統計ライブラリー )

社会科学のための ベイズ統計モデリング (統計ライブラリー )

 

 

 

藤井猛全局集 竜王獲得まで

藤井猛全局集 竜王獲得まで

 

 

 

 

 

箱男 (新潮文庫)

箱男 (新潮文庫)

 

 

 

1日ひとつだけ、強くなる。

1日ひとつだけ、強くなる。

 

 

 

 

 

証言 羽生世代 (講談社現代新書)

証言 羽生世代 (講談社現代新書)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドキュメント ゆきゆきて、神軍[増補版]
 

 

 

自発的隷従論 (ちくま学芸文庫)
 

 

 

 

 

 

 

 

 

おむすびの転がる町 (楽園コミックス)

おむすびの転がる町 (楽園コミックス)

 

 

風の谷のナウシカ 全7巻セット

風の谷のナウシカ 全7巻セット

  • メディア: セット買い
 

藤井棋聖誕生(と、歴史的偉業を手放しで喜べない自身の憂鬱)

世の中も、自分の周辺も激動の二週間であった。

その最たるものが7/16の藤井棋聖誕生。正直戦前は3-1で奪取、というシナリオは微塵も考えていなかった。自分はしょうもない話のせいで、リアルタイムでの観戦はできなかったのだが、間違いなく歴史に残る瞬間だろう。

しかし、棋譜や投了近辺の録画映像(渡辺二冠がカメラ側に顔を向けて息を吐く箇所があるのだが、あまりの精気のなさに、あたかもエクトプラズムが抜け出すようにさえ見えた。およそ見たことがない表情であり、かなりショックを受けた。)やその日のうちに更新された渡辺ブログ、など色々見て、率直に言えば深い疲労感と、今後数年で自分のプロ棋界への興味が減衰してしまうのでないか、というこれまでにない不安を覚えた。

コロナというイレギュラーがあったこと等の外部環境の影響は無視できないといえども、明らかに棋界1,2を争う水準の渡辺二冠に対して17歳時点でこのような、内容で圧倒する将棋が指せてしまうという事実、更に言えば今後も藤井棋聖の棋力は上昇カーブに乗って向上し続けるだろうことなどを思うと、一強時代が早晩訪れることはおよそ間違いないのではないか。

更に言えば、同世代「ライバル」(羽生九段に対する佐藤九段、森内九段)の不在と、ソフトにより戦法の収斂が進んだ状況(要は△8五飛を極めて名人に就いた丸山九段、藤井システム竜王に就いた藤井猛九段のような、イノベーションをもってして一躍スターダムに躍り出るようなプレーヤーがきわめて出づらい)などが、一層きわだった独占状態を作り出すことは想像に難くない。

現状で分の悪い豊島竜王名人とも、13歳差と谷川九段-羽生九段の年齢差より大きいことを踏まえれば、向こう6,7年すれば全盛期を過ぎた豊島竜王名人と全盛期の藤井の対戦成績は偏る方向に移る、というのは(フィジカルベースのみで言えば)自然な予想だろう。

もちろんこれらの予想は、事実のみに基づくもので、ある種「暗黙の了解」であった訳であり、「いつ」それが明らかになるか、という点が問題だったのだが、高校生という身分が藤井棋聖に与えていた時間的制約による棋力へのリミッタがコロナの結果外され、予想を超える速さで成長が進んでしまった、という結果が今回の全てかと思う。(書いていて思うが、SFのような筋書きである)

その結果、これまでのようなお気楽パヤパヤの、「若武者が王者に挑む」ようなストーリーが一瞬で超越されてしまい、今後下手をすると、シドが参入した後のFFTのような「粛々」、としか言いようのない状況が作られる可能性が高いのではないか、という予想が個人的にはある。そのときにプロ将棋の「勝負」という側面をどこまで楽しめるのか、自分の中の疑問が拭えずにいる。

個別の棋譜はある程度楽しめることを期待しているが、一方で、正直いえば、その「楽しめる」というところも(ソフトによる研究やそのフォローをもはや自分で実行できておらず、ブラックボックス化しているがために、「結論」を知らないという)自分の無知によるところが大きい、と感じられること、また、渡辺二冠が現時点で、藤井打破の手段が第三局のような事前研究を極めた状況でレールに乗せる手段しか思いつかない、といったことを言っていることも疲労感を強めるものである。

要は過去の森内-羽生の▲7四歩で終わった名人戦第2局のようなものを求めていくほか、勝負としての面白みがないという時代がもし本当に実現してしまったら、一介の素人には楽しむべき要素はどこになるのであろうか…?

個人的には、29連勝あたりから、藤井棋聖を「(従来の)プロ将棋をいずれ終わらせる役割の人」と半分冗談で呼んできたのだが、どうも(セルに完全体への移行を促したベジータ並みに)認識が甘々だったというか、本当にそういうシチュエーションすら見えてきた、と感じざるを得ない。どのように将棋を「楽しむ」か、という点の転換が、ここ数年棋戦中継を見るだけの安易な将棋ファンであった自分にも求められつつある、という気がしている。

 

 

追記

たまたま▲7四歩の話を引き合いに出したら、今話題沸騰の森内チャンネルでちょうど裏話をやっていたので、偶然に驚きつつ、リンクだけ貼っておく。

https://www.youtube.com/watch?v=_N44jOUNUR4&feature=youtu.be

この一局の重みを考えるとインパクトがある話で、確かに色々目が慣れてきた現代だから言える、という感もある。しかし驚いたのは事実。(が、個人的には全く悪印象などはない)

その後の名人戦の△3七銀もそうだが、やはり大舞台だからこそ、技術が既存の枠組みに与える変化が、ある種極まった形で顕在化してくるような印象を受ける。

最後の電王戦でも棋士とAIの間で出てくるような様々な論点が、非常に研ぎ澄まされた形で出てきたことが印象深いが、それと同様の現象と感じた。

2019年の思い出

長すぎる空白の時期であったが、また記録をつけねばと思う。何よりも自分のため。このままだと本当に、日々の記憶があやふやのまま、波に溶けて流されてしまいそう。

後々もう少し詳しく振り返りたくあるが、2019年は(本題の)研究云々も実務・生活関連も荒廃した実り乏しいものであった。当たり前だが、論文はたとえ草稿を書いても雑誌に掲載されるまでは電子空間の塵なのである(Kitaevとかの特例は除く)。それと裏腹に、現実逃避として摂取した各種コンテンツ群は異様に出来が良く、インプット側は非常に満足いくものだった。

前者はここに詳しく書くのは憚られるので、いつも通り後者について書く。

 

特に映画関連は夏頃から下期と今年1月にかけて、新作がおよそ信じられない充実ぶりで、にわかにもかかわらず、アカデミー賞に興味津々状態になってしまった。映画館で見たのは見た順に「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」、「ジョーカー」、「パラサイト」、「ジョジョ・ラビット」で、Netflxでは「マリッジ・ストーリー」、「アイリッシュマン」(これは昨日ようやくまとまった時間をとって見た)。

いずれ劣らぬ、というかウルトラハイレベルな作品ばかりで、色々言いたいことはあるのだが、個人的なベスト級は「ジョーカー」と「ジョジョ・ラビット」(特に後者は趣味嗜好に完全に直撃する形で心奪われた)。どちらも、普遍的なテーマを奇想と力技で捌いて見せ、それでいて随所に神経の行き届いた企みと俳優の力により没入させられ、随所で強く感情を揺さぶられる、素晴らしい出来栄えのものであった。

しかしこの2作品、「人は自由の喜びを踊りで表す」ということを(各映画のテーマ直撃で)ラストに持ってきて、しかもその描き方がきわめて強い余韻を残すわけだが、それでありながらこれ程までに間逆な印象を与えるのも珍しい、というか。面白い偶然と感じる。

その他旧作では、「日本のいちばん長い日」、「東京裁判」、「ベニスに死す」、「サタンタンゴ」を見る機会があり、これらもきわめて良かった。(全部アホみたいに長いものばかりだが)

 

ゲームについては、夏ごろの激鬱モードにかまけて積年の思い煩いであった「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」に再着手し、秋頃に漸くクリアした(その後忙しくなったので追加部分は手を付けず)。これについては、(この作品に関わった人たちに対して)本当に生まれてきてくれてありがとう、という言葉以外で語れる感想はない。

その他はメタルギアソリッドシリーズの動画をちまちま見て、ストーリー部分を通り一遍消化した。これも大変良いものであった。1,2,5が特に気に入った。

 

音楽で言えば、9月に六本木で見たMAGMAと11月に羽田のProgFlightで見たKIYOSENが衝撃的であった。特に毎年驚異を提供される後者のイベントではあるが、まさしく規格外のドラムを目の当たりにすることになった。

 

本に関しては全く読む時間が行かず、もはや神保町の地縛霊というか、本屋を介してお布施をする機械と化しているところ。わずかばかり通読したものの中で特に良かったものは「誰のために法は生まれた」、「忖度と官僚の政治学」、「バレリーナ 踊り続ける理由」、「少年の名はジルベール」、「不道徳的倫理学講義」、「ゲーム音楽ディスクガイド」、「『集合と位相』をなぜ学ぶのか」(順不同)。

まあまあ、なものとしては、「岩田さん」、「風姿花伝」、「驚異の量子コンピュータ」、「セロトニン」。

 

漫画については継続して読んでいるものばかりで職場でも古いマンガばかり読んでいるというので、もの笑いになったぐらいなところ。新しく読み始めたものでは「アクタージュ」が大層面白い(実に今様な、見得はあるが汗はないスポ根)。しかし、舞台編になってから完全に化けたという感じな一方、どこまでこの熱量を継続できるのか、というのが不安になるぐらいには面白い。後は読みさしだが、「戦争は女の顔をしていない」がこれまた凄い。その他昨年書いたか忘れたが、panpanyaの「グヤバノ・ホリデー」もまあまあ良かった(旧作よりもマイルド感があるが)。その他「ハーモニー」も読了。印象が悪いとまではいかなかったが、図抜けた衝撃はないと感じる。

後、もともと読んでいたものでは、「少女ファイト」と「3月のライオン」が急激に盛り返した、というか見違えて面白くなった(正直このまま減衰していくと踏んでいたので、不明を恥じる所)。やはりこうでなくては面白くない。

 

 

誰のために法は生まれた

誰のために法は生まれた

  • 作者:木庭 顕
  • 発売日: 2018/07/25
  • メディア: 単行本
 
忖度と官僚制の政治学

忖度と官僚制の政治学

  • 発売日: 2018/12/20
  • メディア: Kindle
 
バレリーナ 踊り続ける理由 (河出文庫)

バレリーナ 踊り続ける理由 (河出文庫)

  • 作者:吉田都
  • 発売日: 2019/07/05
  • メディア: 文庫
 
少年の名はジルベール (小学館文庫)

少年の名はジルベール (小学館文庫)

 
「集合と位相」をなぜ学ぶのか ― 数学の基礎として根づくまでの歴史

「集合と位相」をなぜ学ぶのか ― 数学の基礎として根づくまでの歴史

  • 作者:藤田 博司
  • 発売日: 2018/03/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
風姿花伝 (岩波文庫)

風姿花伝 (岩波文庫)

  • 作者:世阿弥
  • 発売日: 1958/10/25
  • メディア: 文庫
 
セロトニン

セロトニン

 
戦争は女の顔をしていない 1

戦争は女の顔をしていない 1

 
グヤバノ・ホリデー

グヤバノ・ホリデー

  • 作者:panpanya
  • 発売日: 2019/01/31
  • メディア: コミック
 
ハーモニー(1) (角川コミックス・エース)

ハーモニー(1) (角川コミックス・エース)

 

くなったので、年明け以降のあれこれはまた別の機会に。

 

 

2019.05.21-26

ろくでもない予定の組まれ方をしているので、良い天気なのに溜まるフラストレーション。ストレス解消に読めもしない本をしこたま買い込んでいる。

ローソンのマチカフェで、何も考えず手にとった「窯焼ポテト」が文字通りの「まるごとスイートポテト」で、食べていて恐ろしいほどの満足感。ただ、間食には結構なお値段なので次にいつ食べるかは不明。

日曜日に立川まで「ゴッドファーザー」見に行く。完璧。前よりも細かい所に成程、と思いながら見れた気がする。