2017-07-17

原理的には3連休であったが、数日前まで風邪だったのと、前後して何かと精神を削られる出来事があったりで、いまいち有意義に使えずだらだらしていた(言い訳)。

今日は猛暑の中外出して、先日のベイズ統計の復習に精を出し、妄想を逞しくするなど。漸くやる気が多少戻る。

夕方帰宅後、NHK-FMで「今日は一日”超絶テクニカル・ギタリスト”三昧」を流し聞いていた(こういう企画が成立するというのは有り難いことである)が、怒涛のピロピロ系(悪意はない)の後、最後(だけ)老人に優しくなってきたと思った矢先に、(80年代の)Frippおじさんが現れたにも関わらず"Discipline"ではなく"Frame by Frame"だったり、最後にAllan Holdsworthが来て(格と今年の訃報からラスト本命の気はしたが)愛に溢れたはがきが読まれた上に、リクエストが”The Sahara of Snow”とこれしかない、という展開に快哉を叫んだ直後に"The Things You See"が流れ出す、など、文化の溝というもの(単に素養がないとか好みが偏狭なだけ説もあるが)を感じさせられるものであった。

ポーの一族 春の夢

40年ぶりに新作が描かれる、という信じ難い事実にとどまらず、今まで全く描かれてこなかった複数の情報を含む衝撃的な展開(第二次世界大戦中という、これまでの物語における歴史の中の「内挿」のエピソードとして書かれたものとは思えない)と、兎に角驚きなしには読めない本書。

再開当初もそうだが、冷静に読めば流石にというか、拭えぬ違和感もなかったといえば嘘になる(魔法の解けたような雰囲気のエドガー、幼児退行の著しいアランなど個々のキャラクターのみならず、流水を恐れぬヴァンパネラとか「アカン」と口走る主要人物(こちらもヴァンパネラだが)など雰囲気の説得力を著しく欠くような情報が時折出てきて物語への集中をそがれる。こういったことは、恐ろしく一貫性を持って構築された雰囲気の下で展開される過去作にはなかった気がする)が、上述の意表を突く内容に加えて、ラストはこれも(ポーの一族のエピソードの一つとしては)あり得るかも、と思わせるような幕引きといい、何というか、やはり只者ではないという気持ちにさせられる(2017年に新作を連載する、と言う時点で並外れているのだが)。

次回作も予定されている、ということで注視する他ない。

 

 

2017.07.08

今週は忙しくないにも関わらず、色々気詰まりなこととかがあって、漸く昨日で一旦一段落することがわかっていたので、この日は息抜きの日、と決めていた。

池袋で古本市冷やかすなどしつつ、だらだらして午後から目白は志むらへ。

40分待ちではあったが、今年初のかき氷。桃が売り切れで夏みかんにするが旨し。いちごよりもかき氷の底の方に詰まった練乳部分がマッチして美味しい気がする。

その後は学習院へ行って今日の本題である押川先生の講演会(BKT転移とHaldane現象:2016年ノーベル物理学賞の奇妙な関係)へ。

http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/seminar/170708.html

 

昨年のノーベル物理学賞受賞者であるHaldaneによるHaldane gapの予想の話が、(最近まで一般的に信じられていたように)トポロジカル項とかのアイディアを素粒子物理由来で思いついたのではなく、TLLの臨界相と(Haldaneと同時に受賞した)BKT転移の関連の研究というきわめて物性物理した話(1D 量子XXZの厳密解を睨んで、なぜ相と臨界指数が2D古典系と一致しないのか、という所に着眼して、そこから1D 量子XXZでは一重渦の励起の禁止が生じており、最小励起が二重渦からになっている、と言う構造を発見すると言う話。この「禁止」が実は古典作用には含まれないトポロジカル項で説明される。)から思いついた、という初耳の話(個人的にはそれまで信じられていた経緯の話よりもむしろ、今回の経緯のほうが、非常にストレートかつ明らかに重要な着眼点によるもので、Haldaneに一層の恐怖を感じたというところだが。)。

また場の理論的な話の示唆を与えたのが実はたまたま訪れたPrincetonにいたWittenであった、とか、では一般的な理解であった、「Haldaneによってトポロジカル項に基づくギャップの理解がなされた」という話はどこから来たのか、というと実はAffleckによる詳細に書かれたレビューであった(原論文は目に触れる所に存在しなかったことも有り殆ど誰も見ていなかったが、こちらの影響で人口に膾炙した)、結果として、素粒子論の手法の物性での有効さが大きく認知され、その後の研究の潮流を形作った、などと、大変示唆に富む話(まさにIPMU Newsで紹介されるにふさわしい話ではないか)。学生の頃に論文を横目で見つつ、満足に読めなかった強力な面々の名前が続々と出てきて大変懐かしい気持ちにもなりつつ(読んだ気がするのはSchluzの1次元系の講義録ぐらいか)。

また、(本人に依るリジェクトされたプレプリントの紛失も相まって生じた)幻の論文を探し出して、その存在を確認する件なども含めて、脱線も大変面白く、押川先生の話の上手さにも舌を巻く感じ。

柏での談話会は平日でも有り流石に行きようがなかったので歯がゆいところであったが、今回こうして聞くことが出来て大変良かった。本当に有り難いことである。

2017.07.02

佐々木五段は見事な将棋で結果を出し、男を上げましたね。局後のコメントも大変良かった。

個人的には比較的個別の棋士に対する思い入れは薄い方だと思うのだが、今日の対局に関しては例外的に、両者とも個人的な推しのかなり上位に来る感じなので、中継最後の口頭のみでの感想戦では頬が緩んで仕方なかった。早くタイトル戦が見たい。

マンガ熱

期せずして似たような本が続くが、こちらも大変面白かった。こちらも正直文句を言えばバチさえ当たりそうな面子であるが、特に面白かったのは、藤田和日郎(おそらく本書のハイライト)、荒川弘大友克洋か(連載時に立ち読みしつつ、途中でキャッチアップが止まってしまった「からくりサーカス」と「鋼の錬金術師」が改めて「死ぬまでに読むリスト」に入った)。

本筋ではないが、本書で効果を上げている点として、インタビュアーが非常に深い知見を持っており、それを活かして懐に入っていくようなやり方があり、それが非自明な価値を出すことに結びついているように見えるというのには(似たような場面でしばしば上手く行かず悩む側としては)感銘を受けるものであったり。

 

 

Keyboard magazine 2017年7月号

特集記事の「ゲーム・ミュージックのメロディ職人たち」の面々を見てノータイムで購入。植松伸夫光田康典下村陽子伊藤賢治というスーファミ時代のSQUARE四天王(個人的に勝手に呼んでいるだけだが)に古代祐三HAL研(はじめて見た気がする)、近藤嶺とは有難すぎて言葉もない。

複数人のインタビューに共通して出る概念として、やはり「多様性」(ごった煮感)というのと、「制約の中での創造」というのがあり、やはりこれらはきわめて本質的な所であるのだな、というのをあらためて。

個別のインタビュー自体も感じ入る所は多過ぎる(いずれも超絶一流なので当然だが、凄まじいプロフェッショナリズムを感じさせられる)ので、深夜に読んでおると正直全人類必読(©綾辻行人)という気になりさえする(言い過ぎだが)。

 

Keyboard magazine (キーボード マガジン) 2017年7月号 SUMMER (CD付) [雑誌]

Keyboard magazine (キーボード マガジン) 2017年7月号 SUMMER (CD付) [雑誌]

 

 

 

 

バッタを倒しにアフリカへ

サバクトビバッタ研究者である著者の、アフリカはモーリタニアでの奮闘記。

虫の写真こそたくさん出てくるが、研究の詳細的な話はあまりなく(一方でサバクトビバッタの相変異の話はかなり興味を惹かれる)、研究をすすめる上で非常にタフな環境で、どのように知恵を絞り、気持ちを切らさずにやっていくのか、という所を冗句を交えつつ語るというもの。

著者の(並大抵ではない)強靭さと前向きさのおかげで楽しく読めるが、冷静になるとなかなか胃の痛い話(初っ端の、これまでラボでの実験をメインでやっていながらいきなり(英語の通じぬ)アフリカに行ってフィールドワークを一から始める、と言う部分だけでもキリキリ来る感じではある)ではあったりしつつ面白く読む。

しかし(異分野過ぎて判断力が皆無なのだが)圧倒的なコミュニケーション力(変な意味が付いてしまった言葉で使いたくないところもあるのだが、圧倒的アウェーの地において、あらゆる手段を使いながら目的を達成していく様を見るとこうしか言いようがない)、本書それ自体をはじめとした(非専門家向け)優れたアウトプット能力(賛否両論はあるだろうがファンド獲得という側面からは明らかに重要)、(海外学振⇒白眉とかなり強力に見える)経歴を持ってしても、これほどまでにハードモードとは。

 

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)