アメリカ大陸のナチ文学

南北アメリカ大陸における、架空の作家たちとその生涯を紹介する文学事典。
取り上げられる作家たちは、その程度は様々ではあるが、標題の通りナチズムや極右的な思想の影響をその人生において強く受けている(取り上げられた大半の作家が南米の作家ではあるが、一方で北米の詩人も取り上げられているということは示唆的だろうか)。
各作家の生涯は、事典という形式もあってきわめて少ないページ数(たかだか数十ページと言うところで、短いものは2ページに収まってしまう)で語られるが、一方でその中に凝縮された生の濃密さとobsessedな有り様の生む可笑しみと哀しさ、それらが相まって強く残る余韻には唸らされる。大変良かった。
特に気に入ったのは、「ルス・メンディルセ=トンプソン」(素晴らしいの一言)、「ルイス・フォンテーヌ・ダ・ソウザ」(狂気に陥る学者が可笑しい)、「グスタボ・ボルダ」(端的に本質を抉る手際の良さ)、「アマード・コウト」(これも凄い)、「マックス・ミルバレー、またの名を…」(可笑しく、かつ凄い)、「忌まわしきラミレス=ホフマン」(粒ぞろいの中でのトリに相応しい。)

アメリカ大陸のナチ文学 (ボラーニョ・コレクション)

アメリカ大陸のナチ文学 (ボラーニョ・コレクション)