桜の園・三人姉妹

桜の園」は、最初読んだ時は単なる「斜陽」的な美しすぎる没落の話かと思ってしまったが、何度も話が出ており当人たちもその気があるにも関わらず最後まで進展を見ないワーリャとロパーヒンの結婚の話にはじまり、突如最後で(それまで一貫してニヒリスト的な態度だった)ヤーシャがラネーフスカヤについてパリへ行こうとするなど、自然な話の流れとその帰結というものがどうもあえて外されているようで、一筋縄ではいかぬ感じ。
「三人姉妹」は一転、正統的な没落ものといった感じの話が登場人物たちの台詞主導で進む、自然な劇という印象を受ける。日々の生活にすり減った登場人物たちの名台詞が多い(特にヴェルシーニンやマーシャ、イリーナのものが印象深い)。

桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)

桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)