文体の科学

多様な文体の存在の理由やその使い分けについて、従来の文体論で主に対象とされてきた文の意味内容に対して、それ以外の要素について、考えるという題目の本なのだが、本全体を通じて、具体例を挙げてその特徴を列挙してみせるというだけで、これまでの研究を踏まえるとかその上で何か考察をしてみせるとかの内容に乏しい(たとえば非人称の文体を考える、という段で延々と法律と科学雑誌や論文紀要、辞書の文章を見た上でのメッセージが、「非人称の利用は普遍性を持たせるためにある」、というのでは流石に苦しくないだろうか)上に全体を貫く考えの幹のようなものも見えづらいため、非常に薄味な印象を受ける。
題名は編集者がつけたということだが、「科学」というよりは「標本」のほうが近い印象。

文体の科学

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