1冊で分かる ポストコロニアリズム

植民地としての支配時代の後に続く、権力による価値観や(弱者としての)役割の押し付けによる、ポストコロニアルな支配の構造とそれに対抗する被支配側の運動や思想についての概説書。
根本にある、権力により「観察」の対象とされ声を奪われるものの解放を目指すという思想の重要性には同意できなくもないのだが、具体的な実例になってみるとエコとか何とか言い出すせいかしらないが(本来なら、この価値観の押し付けからの解放というのは、支配者や、被支配者の主張の善悪とは別に考えられるべきものであると思うが、エコなどと唱えて自分たちを正しい側に置くことで、勝とうというのは非常に気に食わない)、とたんにきな臭くなるという感じでどうも今ひとつぴんとこない。後、根本思想が自己言及的というか、被抑圧者側からの発信を第三者が行うことは無理という自己矛盾を孕んでいるように思うのだが、その点にノータッチで価値観の転換とかを唱えまくるのも気にかかった。
この本特有の形(らしい)である、ボトムアップ型の説明というのは個人的には全体は例を通じて漠然と見えてきたように思うし知らないことが多かったこともあって悪くなかったと思う。

ポストコロニアリズム (〈1冊でわかる〉シリーズ)

ポストコロニアリズム (〈1冊でわかる〉シリーズ)