非線形科学

対流からフラクタルまで広範囲に渡る話題をあげて、従来の物理での還元的な方向とは別の、多様さに立脚した観点から非線形な世界を眺める、ということを目的とした入門書。

しかしその割には(通り一遍の説明はあるとはいえ)大学新入生ぐらいの知識は仮定されてる感じだし、どうせ解の振る舞いの話とかもするのだったら割りきって数式を用いたほうが良かったのでは(数式を用いないのがコンセプトということなのでこれを言ってはおしまい、という感じではあるが)。
というか、妙に説明が一からなのと数式を使わないせいで、話の最初の方に説明が多く割かれて、面白そうなところ(例えば縮約とか)に割かれる紙幅が少なくなり、結果として手広く浅く話題を取り上げたという印象が強いものになってしまっている感じ。しかも個人的にはこの分野はあまりにも広い方向に行き過ぎている気がして、それが抵抗感を増しているところがあるのでそういう流れとは逆の普遍的な方向を見せてくれることを期待していたので一層残念。

後はどうでも良いが4章の振動子モデルで、相互作用が各々の位相に独立に依存する(ウィンフリのモデル)というのを見て、位相差に依存するほうが自然だろ、とか思ったらそれが蔵本モデルとして直後に出てきた時は嬉しかったが、冷静に釈迦の手のひらの上過ぎて悲しくなったり。

非線形科学 (集英社新書 408G)

非線形科学 (集英社新書 408G)