「この世界の片隅に」爆音上映

尻に火がついた状態なのだが、かねてから予約しておいた枠なので早引けして丸の内ピカデリーへ見に行く。音が実に強力(もちろんこれは必ずしも、戦争の場面のものだけを意味しない)、というか音がこの映画において、かなり重要な要素を担っていることを再認識。前段階ではどうだろうかとも思ったが、選択して正解であった。

この前読んだ本(『二つの「この世界の片隅に」』)の影響か、原作からどこを残したかとか、どうその根底に流れるものをアニメーションという形態に適した形で表現するか、みたいな所に目が行く。本が慧眼過ぎて、新規性のない所しか言及できなくてつらいのだが、たとえば出だしのおつかいの場面(個人的には超好みだが)とかもそうで、実に自然といえばそうなのだが(漫画では可視化される)妄想はこちらでは可視化されていないのだな、とか、(これは本にも言及が合ったが)やはり出だしの所を絵物語に仕立てたのは妙技過ぎるなとか。一方で、原作(や作者の他の作品)を知ってしまった身としては、やはり、りんさんの件を中心に省かれた部分が強く意識され、そちらも在ってほしかったという気持ちも強まるのであった。

終了後は片渕監督と今回の爆音上映の主催者である樋口氏のトーク。戦争の音が自衛隊総合火力演習でナマで撮った音、という事実や普通の戦争映画はウーハーが効きすぎ(だがこの映画はそれを使ってなくて太鼓の音ぐらい。言語化できなかったが、たしかに映画において太鼓の音に違和感を覚えた。)というところ、「何かの音がしている」という状況がリアルさ、そして空間の立ち上がりを生む、と言う話(アゲハチョウの羽ばたき音すら入っているという驚き)、などと30分という短時間にもかかわらずの高密度。こういうインタビューをしたいものだが。