いまを生きる

当初の予定ではなかったものの、あまりに評判が良いので気になって見に行ったが、これは全くの想定外のピンポイント大当たりだった。素晴らしい。
粗筋だけだとよく見かけるような、型破りな「なんたら先生」の説話的な話が想起され、胃もたれしてくる感じなのだが、実際見てみると(ロビン・ウィリアムス演じる教師のパフォーマンス的な所は確かにやや鬱陶しくもあるのだが)、パフォーマンスよりも遥かに強く、メッセージの中での「自由」の語られ方、そしてその形の洗練(と言うと大げさかも、表現の奥行きとでもいうものを感じる。この映画アメリカの映画だが、やはりこうしたテーマについて語られ、意識され考えられる機会の豊富さと歴史というものが自然に現れてくるのだろうか、とか考えてしまう)に感銘を受ける。
出だしからして、日頃生徒たちは一瞥もせぬ、色あせた写真の中の過去の生徒たち(そして黄金の時を生きる生徒たちもいずれその写真のように過去の物となる)を見せながら、相対化してみせる部分もそうだし、生徒に中庭を歩かせる部分でも、ごくさらりと「同化への欲望」みたいなテーマが出てくるという部分とか。
まあ、何より素晴らしいのは、生徒たちの恐るべきビビッドさ(と繊細さ)。特に主人公格のニール(棋士佐々木勇気五段に顔立ちがとても似ている気がする)の放つ生気は本当に魅力的(それだけにあの最後はあまりに痛ましく、悲しい)。他の生徒役も実に素敵(トッドは言うまでもなく、才気走りがちなダルトン、ミークスなども、いかにもああした学校にいそうな感じ)。これら生徒の寮生活の雰囲気と、自然豊かな四季の美しい映像の描き出す空気は個人的にはスマッシュヒット。
ラストも、まさに「眠れる奴隷」の目ざめ、といった形で(ややあざとさもありつつだが)非常に良い。立つにせよ、しないにせよ、そこで選び取ったものが彼らの時間を忘れがたいものにするのだろうな、という。
全体の構成とかは最後にガタガタっと急展開になる感じで必ずしもだが、それを補って余りある瑞々しさがある良作と思う。