ルノワール展

終了直前の昨日見てきた。予想を上回る良い展覧会であった。出展ラインナップが豪華なことに加えて、配置や説明もルノワールの変遷を非常に明快に見て取れるものであり、見終えた後の充実感が残るものだった。
いわゆる印象派としての光の描写から、古典的なものへの回帰(デッサンを多数行うことも含め)、さらにそこから厚みを出した立体的・マッシブな女性の身体の描写へと移り、そして最後の作品となる「浴女たち」ではそれまでの風景画の技法の延長にあるような背景と、晩年の女性の身体の描写が統合され、まさに作者の到達点として提示される(そして、展覧会自体がこの人生の遍歴ともいうべき内容を追えるような組み立てになっている)というのは出来過ぎではなかろうか。途中のペローやピカソとの対比も、作者の特徴を掴むのに非常に効果的という印象。
気に入った絵としては、「ぶらんこ」、「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」(目のあたりにするのは二度目だが、やはり圧倒的。強い志向性の明確な表現を感じる)、ティソ「夜会あるいは舞踏会」(ドレスの書き込みがすさまじい)、「ジュリー・マネあるいは猫を抱く子ども」、「モスローズ」、「浴女たち」。
ところで今回の展覧会、個人的には絵の説明文や各章の説明もかなり奥行きのあるというか、示唆に富むものという印象を受けた。(適切な例か不明だが)個人的には、説明文の「印象派の風景画の背景に鉄道の発達による田舎への小旅行が容易になったことがあった」という一節を見て、(当然の事ながら)特に個人的な能力や才能の影響が強いと思われる芸術のような領域においても、新たに生まれる(芸術の)技法の進展や潮流の背景には、時代性やその中での生活の変遷があり、それは科学・工学的な部分の寄与も少なくないということを改めて認識した(なのでやはり絵を見に行くにあたっても、歴史とかを一層勉強しないと、と感じた(夏休みの絵日記的な感想))。