ビル・ブルーフォード自伝

言わずと知れたプログレ界の巨人ブルーフォードによる自伝。文章はかなり英国人的というか、皮肉と遠回しな表現のオンパレードであまり読みやすくはないが、五大バンドをはじめ70年代プログレと共にあると言えそうな自身の遍歴や、ロックからジャズへの志向のシフトと両者の中間である自身の立ち位置、ミュージシャンとしてのあり方(特に「変化」の可能性を非常に重要視していることが分かる。クリムゾンへの移籍に始まり、80年代クリムゾンをもっとも良い時期と呼んでいることや、一級のジャズミュージシャンのような、様々な舞台を渡り歩く形を理想に近いとしているように見えることなど)、音楽業界について、など興味深い。
特に印象に残るのは、Yesのメンバーらを例に上げながら、70年代のプログレッシブ・ロックに携わっていた人たちの文化的背景には英国教会の音楽がある、という指摘。なぜ自分がこの方面に惹きつけられるのか、ということの答えとして(昔教会に通ったことがあって賛美歌など散々歌ったり演奏したりしたことから)そのような文化的背景の共有による親和性なのか、、とかなり腑に落ちる所があった。
ただ、惜しむらくは本としての出来が猛烈に悪い。ちゃんとカウントしてまでいないが、体感で10ページに1つは誤植がある。実に勿体ない。

ビル・ブルーフォード自伝

ビル・ブルーフォード自伝