科学技術大国 中国

スパコン、有人潜水調査船、望遠鏡、核融合研究装置、iPS細胞、遺伝子解析の6つの事例を取り上げながら、進展の著しい中国の科学技術力の実態を調査した本。
自前の開発にはこだわらずに積極的に既存技術の取り入れを行う、目標とするターゲットを絞るなどの手段で急速な発展を実現し、更には新記録にはじまる世界的な成果を残す、というのがいずれの領域でも見られるパターンだが、一方でスパコンで見られる利用・運用の遅れや望遠鏡LAMOSTのデータ解析の未整備な面やビジョンの不透明さ、海外技術の取り入れを進めた結果、技術習得を上回るペースで流入が行われており設備維持がかえって複雑になっている、などの問題が見られる。
しかし、700人の研究員と1000人レベルのバイオインフォマティシャンという規模や、大学をはじめとした委託先との共同研究(業務と同時に実施する)環境、積極的に社会貢献を行うことによるプレゼンス向上、などを背景に遺伝子解析の技術を武器として躍進を続けるBGI社など、かなりのポテンシャルを持っていると思わされる例も見られて、非常に興味深い。
トップダウン型の研究プロジェクトとフォローの不足から民間との連携や展開に課題はあるものの、海外の人材の呼び戻しなども増加していることを背景に今後もアカデミック分野では特に一層の発展が続くだろうと思わされた。