2012.06.28

28日

朝は第一原理計算のインフォーマルセミナー。研究室の先輩の企画で、ずぶの素人の自分には知らない話ばかりでためになった。今年はおそらく使うことはないだろうが、来年度以降むしろ使う可能性が増えそうなので、9月のWIEN2Kワークショップ(毎年世界各地で開かれるのだが、今年はちょうど日本開催らしい)参加を考慮してみるべきだろうか。

その後は集中講義3日目。中身はまずは近藤ピークをAnderson modelにslave-boson+平均場適用して出すという話。平均場でこうした非摂動効果が記述できる、というのは通常の予想に反するが、これはFermi面付近での低エネルギー項を1次で取り込めたことによるくりこみのため。高エネルギー領域で正しいH-Fと相補的な近似となっていて、両方あわせて、温度を下げる(エネルギーのウィンドウを小さくすること)ことで弱相関から強相関へと移るくりこみを追いかけるという描像が得られる、という話。
では、それ以上の次数の高エネルギーゆらぎを考慮するにはどう近似すべきか、という問題に一つの答えを与えたのがDMFT。格子の問題を不純物問題に焼きなおして解き、欲しい自己エネルギーとして一様な不純物問題解を適用することでDyson eq.を解くことでループが完成するのでself-consistentに回せば良い。これでMott転移が大変良く説明されて、Hubbardの相互作用でバンドが分裂する描像とBrinkman-Riceのバンド幅が縮む描像が統一されたことになる。ただ本質的なのは、近藤問題でいうところの不純物-伝導電子ホッピングのくりこみに加えて、DMFTではループを回して電子のエネルギー準位のくりこみも考慮できているという点。
全体的に、明らかに3日で通常扱える量を上回る題材に触れながらも、一貫した思想と直感的な物理的描像を大事にすることの二つを重視していたために非常に明快な講義になっていて、集中講義のスケール(時間など)としては一つの理想形に近かったと思う。個人的には黒板で大部分を進めてくれたのが(最近の授業の傾向に反して)非常にありがたかった。
レポートは講義に絡む限りでは大分好きな題材で書けるようだが、さて何を書くべきか。CFTの行間を埋めるとか、近藤効果をもっとみっちりやるとかも非常に良い勉強になりそうで魅力的だが、気になるのはやはり実際の系に近い話題。やるとすればQHEのエッジのカイラルLuttinger流体とか量子ドットか。ただ勉強に避ける時間は有限なので何とも。

その後は授業で、こちらもセミナー形式。中身はもっぱらスピン系の統計力学。ただ正直集中講義と対照をなしていて、総花的に過ぎ一貫性がないため恐ろしいほど興味が持てなかった。きわめて複雑な現象を持ってきて、そこにべき乗則を探すモチベーションは何なのか?本当にそこに普遍性はあるのか?


ここ暫く(GW前からだから50日ぐらいか)、chess.comのtactics trainerで遊んでいる。といっても毎日3問とかをちまちま解くばかりなのだが、ちょっと前には駒の効きもうっかりする程度だった自分にはこれぐらいが丁度良い。最近漸く「とにかく続けること」の重要さを感じつつあるので、周囲から見たら凡そ信じ難いほどレベルの低いこととかしょうもないこともやってみるべきか、ということで。多分こうしたことと直結しているのが、「まるで何の変哲もない毎日」とか「さして変化のない自身」とかを受け入れ難かったという気の持ちようで、いうなればそれこそがこれまでの自分の敗因と思う。
ただ勿論「続けること」自体に意味を持たせ出したらお終いなわけで。とりあえずチェスで言えばもっとレーティング上げるのと、序盤とエンドゲームの知識がほしい所。