日本の歴史をよみなおす

従来の日本史においてかなり常識に近いことになっている事に対して、いわば「公」ではなく「民」の方向からアプローチすることで全く異なる見方を提供する本。

今まで当たり前のように習ってきた、律令政治以来の国の農本主義に直結した、農民を中心とした歴史観を捨てることで、非常に生き生きとした人々の姿が浮き上がってくるのはとても興味深い。ここにはおそらく、公的な国中心の歴史観、すなわち政治的な大きな出来事などによって歴史は形成されるということと、昔は未熟であった社会が時を経ることや、西洋との出会いによって次第に「進歩」していく、といった考え方が固定観念としてあったということがあるのだと思う。
序盤に「民俗学」という言葉をあげていることから推測するに、従来はおそらくそちらからの「人」に根ざした歴史の研究というのがそれほど進んでいなかったところに、そのような見方を提案した、というところが重要だったのだろうか。「神聖さ」などに注目することで中世以降蔑視されていたものが以前ははむしろ逆であったことや、様々な文献から商業や海運が非常に盛んであった日本というそれまでのイメージと異なる姿を描き出す所は非常に面白かった。

日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)

日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)