不在の騎士

出張の機内で読む。元ネタらしき「オルランド」は知らないので何ともだが、全体を見れば実に20世紀的(というかラテンアメリカ、ネタバレを恐れずに読了時に脳裏によぎった特定の作品を言えば「エレンディラ」に似ているのでは?)。

 

不在の騎士 (白水Uブックス)

不在の騎士 (白水Uブックス)

 

 

 

「われわれの祖先」三部作をこれで読んだわけだが、個人的にはやはり「木のぼり男爵」が抜けている印象。テーマからにして、というのはあるのだが。

ただそれだけではなく、話の出来というか、表現が直裁的でないところも重要と思っていて、具体的には三部作に共通してテーマとして扱われる、「相反するもの」(「まっぷたつの子爵」では善と悪、「木のぼり男爵」では聖と俗(陰者的というべきか、コジモを見る限り、痛快さ、イノセンス的な面もあわせて「非俗」というべきな気もするが)、「不在の騎士」では精神と身体、あるいは概念と実体というべきか)についても、「子爵」、「騎士」では一応のオチとしてはいわゆる「止揚」的な所に至る訳だが(実際はそれだけではないが)、「木のぼり男爵」は必ずしもそういった明快な格好での統合が志向されない所も好みの一因。