まっぷたつの子爵

「われわれの祖先」シリーズの1作目。筋自体はまあどうということもない(まっぷたつに切断されるメダルド子爵、というのは寓話的なものと捉えるのみでなく、むしろ戦争からの帰還者として直接的に見るというのもありうるのかもしれないが)が、さらりと描いてみせる洗練された文章(子爵により二つに切り離されたきのこが水に浮かぶ件や、放火を思いつく件とか。後、「木のぼり男爵」でも思ったが、年老いて世のことに嫌気が差した人を描くのが上手い)、そしてラストと、単純な説話的な物語としてしまうにはあまりにも優れている印象。

 

まっぷたつの子爵 (岩波文庫)

まっぷたつの子爵 (岩波文庫)