アレフ

先日岩波から新たに出たものをちまちま読んでおったが、8月中に何とか読み終える。

たまたま並列で読んでいた「からくりサーカス」の参考文献にも上がっており(正確には同書で挙げられていたのは白水から出ている「不死の人」だが。)、偶然に驚かされたり(一方で、そちらを先に読んでいたせいもあって、「不死の人」との類似性とか、「アベンハカン・エル・ボハリー、おのが迷宮に死す」の詩のフレーズとかには驚かされた)。

きわめて多様な筋の話を含む本書だが、繰り返し現れるモチーフである円環や鏡、迷宮、また何度も描かれる、際限なく続く時間やしばしば出会う(死をもたらす)「もう一人の自分」といったものが、自己の存在とか固有性というものへの疑い(というかもっと言えば不快感)を示唆するように見える一方で、「不死の人」のように、「言葉」の力(不滅性)は非常に強く信じているように見えて、非常に現代的(正確には二十世紀的?)というかリリカルと言うか何というか(悪い意味ではないが)。

印象深いのはやはり「不死の人」か。本書の中ではこれが出色に見える。

 

アレフ (岩波文庫)

アレフ (岩波文庫)