ポーの一族 春の夢

40年ぶりに新作が描かれる、という信じ難い事実にとどまらず、今まで全く描かれてこなかった複数の情報を含む衝撃的な展開(第二次世界大戦中という、これまでの物語における歴史の中の「内挿」のエピソードとして書かれたものとは思えない)と、兎に角驚きなしには読めない本書。

再開当初もそうだが、冷静に読めば流石にというか、拭えぬ違和感もなかったといえば嘘になる(魔法の解けたような雰囲気のエドガー、幼児退行の著しいアランなど個々のキャラクターのみならず、流水を恐れぬヴァンパネラとか「アカン」と口走る主要人物(こちらもヴァンパネラだが)など雰囲気の説得力を著しく欠くような情報が時折出てきて物語への集中をそがれる。こういったことは、恐ろしく一貫性を持って構築された雰囲気の下で展開される過去作にはなかった気がする)が、上述の意表を突く内容に加えて、ラストはこれも(ポーの一族のエピソードの一つとしては)あり得るかも、と思わせるような幕引きといい、何というか、やはり只者ではないという気持ちにさせられる(2017年に新作を連載する、と言う時点で並外れているのだが)。

次回作も予定されている、ということで注視する他ない。