木のぼり男爵

GW中に実行しようと試みたものの中で、唯一完遂できたのが(かねてからの積読であった)この本の読了であったのだが、紛うことなき大傑作であった。これを読めただけで(遊び部分については)お釣りが来るぐらい。

割と昔から、一見突拍子もない内容でありながらきわめて本質的な所を抉る面を見せる、というものへの強い憧れがあるのだが、快活かつヴィヴィッドなコジモ少年と、家族を始めとした何とも珍妙でありながら心惹かれる周囲の人々による奇妙な冒険譚と、その端々に見える自由への意識、さらに人々との別れをはじめとした場面場面でふと夕暮れの如く現れる情緒的な一瞬と、あまりにも見事にそれが顕現している様に言葉もない。そして最後の美しさ。

 

木のぼり男爵 (白水Uブックス)

木のぼり男爵 (白水Uブックス)