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ぼくの地球を守って

先週の「白泉社kindle本全品50%セール」という恐ろしすぎる(財布にとってのブラックホール的な意味で)*1ものが発生した結果(の一つ)。最近のストレスフルな生活の反動で、毎晩2巻ほど読んで昨日漸く読了。長年の積み残しであり、また一つ思い残しが消化された。

本作、リアルタイムでの連載時にしてから一大ムーブメントを引き起こしたことでも有名だが、確かに滅茶苦茶「仕上がった」作品で引き込み力が凄まじい。正直十数年前に読んでいたら危うかった、と胸を撫で下ろす所もあり。

ではどこが際立った点なのか、という点について正直整理しきれていないのだが、一つはやはり、出て来るキャラクターの「立ち方」と非常に書き込まれた心理描写か。

出てくるメインキャラクター(精神的に非常にWet側で、かつ年齢もあってやや安定感を欠く感じ)で、そうした人たちの(前世という呪縛からの開放へ向かう)自己の確立というテーマを徹底的にうじうじやる(超クローズドな空間で、Wet気質でかつ性格に難がある人が集まってどろどろした話をやる)、という話で、個別の部分を見ると正直違和感が湧いたり、行動原理が理解できなかったり、と言う所はあったりするので、そこを許容できるかどうかはかなり人によるという印象はあるのだが(ただ、サイキック無双要素を入れ込んでみたり、途中で導入され、重要な位置を占めることに成る「キィ・ワード」集め要素、あるいは任侠ナイスガイおじさんが重要な位置づけで登場したり(一方でこの人の行動原理も摩訶不思議ではあるのだが)、とマンネリに陥らぬような試みはかなり意識的になされており、テンポは悪くないという印象)。

後まあもう一歩踏み込んで書くと、幼少期とかに受けた精神的な傷であるとか、いわゆる疎外的な状況など、どのようにしてそうしたものに折り合いをつけていくか、あるいは外部からのどのような働きかけで治癒されうるのかという点が非常に重要な位置づけになっていて、そうした所に関する記述については上手さがあるので、特定の人にとっては引き込まれやすさ(その他の借金を差し引いても)はあると思う。

読み終えて落ち着いた目で見ると、大きなシナリオレベルでも、最終的に亜梨子が輪に惹かれる理由が希薄だな、とか結構不思議な点はある(一方で、落とし所からの逆算的な考え方から言えばまあこれしかないだろう、というので潜在意識的には合意してしまうわけだが)のだが、それでも読ませてしまう所には圧倒的な語りの力を感じる。という訳で、前世的な話に拒否感のない人とか、古文じみた話(読めば直ちに分かるが、個人キャラレベルの展開は猛烈に古文チック)が許容できる人は大いに楽しめるのでは。少なくとも自分は楽しんで読めた。

 

ぼくの地球を守って 1 (白泉社文庫)

ぼくの地球を守って 1 (白泉社文庫)

 

 

 

*1:「普通の」物理プロパーな人は実際の現象や数理的な記述を理解しているし、更に先立って宇宙とかに対する思い入れもあるのでこうした喩えを気軽に使わない印象があるが、自分は一般相対論を十分に理解しているわけでもなければ、宇宙だのに対する思い入れも全くない(むしろ学生時代の経験から、そういうのを臆面もなく出しよる人へのある種の嫌悪感がある)ので、カジュアルな意味で平気で使う。