甲子園の空に笑え!

表題作と「ゲートボール殺人事件」は正直微妙なのだが(作者の天邪鬼というか、皆が同じようなステレオタイプでやってる所への反感は分からんでもないが…という気分)、「銀のロマンティック…わはは」が超絶名作。
らしさ満点の良くも悪くもの力の抜けた感じと随所に見える固定観念への柔らかだが確かな反発、設定や展開の力業と一方でのやたら丁寧な競技の解説、スポ根風な押せ押せの雰囲気もありながら、主人公の態度のような猛烈に冷静な視点が顔を出し、と、対照的な要素がぶつかるのでなく共存し、独特の世界を構成しながら、その極致という他ないような最終盤の奇跡のような演技へと収束していく。
前二作を書いた人と本当に同一なのか、とさえ言いたくなる恐ろしい出来。
挙句の果てに、主人公たちの使用曲がELPの「庶民のファンファーレ」だの、リック・ウェイクマンだの、というのでもう完全に平伏す他ない。「笑う大天使」のみでこれまで侮っていてすみませんでした、という気分。

甲子園の空に笑え! (白泉社文庫)

甲子園の空に笑え! (白泉社文庫)