小さな倫理学入門

人間の弱さに眼差しを向ける倫理学としての「小さな倫理学」を掲げ、既存の「倫理学」では我々がよく生きるために目指すべきもの(本書ではキリスト教を念頭に「天使的」と呼ばれる)から遠ざかる要因として排除されるべきとされてきた、欲望、愛、性などの種々の概念を掬い取るような倫理学の必要性や、単純な正義の概念からは漏れ出てしまうような互酬性の概念や、必ずしも対等でない立場の相手へのいたわりなどを包含した倫理学の重要性を説く本。
穏やかな語り口で取り上げられるテーマは興味深いが、いかんせんページ数が限られすぎのため、大まかな議論に終始する印象。参考文献を読めということかもしれないが。