”ひとり出版社”という働きかた

「小商い」の形態の(規模の)極限のような、「ひとり出版社」を営む人たちへのインタビュー。取り上げられる出版社は、大手出版社−駅前の量産型本屋体制からなるものとは一線を画するような、ニッチかつ尖った本を「一品物」として作っている。
止まらぬ出版不況や、従来の取次を介した形態への疑問視(本書でも大手の取次を介さないやり方が出てくる)という背景の中で、必ずしも多くはないラインナップを長く継続していくというやり方や、直接の出版だけでなく守備範囲を広げる(それは収益の面から必要を迫られるという面もあれば、ローカルな部分などで、これまで掬い上げが難しかったニッチなニーズの掬い上げが可能という面もある)、などの策を取りながら、とにかく良い物を残していくという出版社の(そして製造のさまざまな過程に携わる人たちの)強い意志が見える。
けして生半可な気持ちではできないこと(インタビュアーも谷川俊太郎に、「理想なんか追っちゃだめで、まず食えるかだ」とたしなめられていたが)だが、厳しさと、何か大きな変わり目が向こう岸に見えるような気にさせられる、業界の「過渡期」を強く感じさせられる本であった。それを象徴するような随所に織り交ぜられた出版社の人たちの写真のビビッドな目がとても印象的。

“ひとり出版社”という働きかた

“ひとり出版社”という働きかた