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すぐそばにある「貧困」

個人的になかなか一歩引いた目で見ることができない背景のものではあるが、それを抜いても非常に良い本だと思う。
この本の大きな特色は、客観的・学術的な分析とはよくも悪くも異なって、非常に主観的、かつ「地に足の着いた」内容となっている点だといえる。
本の内容は筆者のホームレスを始めとした貧困に直面している人たちとの経験と、それに伴う成長と重ね合わされる形で進むため、少々ビルドゥングスロマン的というか物語的になってしまっている点があるのだが、一方でそこで描かれるものは分断された世界の中のみにあるのでなく、地続きのものとしていま確かにあると感じさせる力がある。
そのうえで、本書の7章や9章といった、生の愚かさや滑稽さ、悲哀といったものが鮮やかに現れる部分は、(このような受け取り方は必ずしも適切で無いのかもしれないが)日々の生活や現実といったものがいかに「小説的」な内容を含み、またそれを超えて溢れ出てくるものであるか、といったことを表しているように思える。そういった意味で、「断片的なものの社会学」にも近い点があるように感じる。

すぐそばにある「貧困」

すぐそばにある「貧困」