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素粒子」に続く第二長編。全編通じて、不要と思えるまでにやたらと強調される下品さや、無関心さとシニカルさから生まれる突き放した皮肉の切れが特徴的。
だがやはり印象深いのは、作品の中で多くを占める「観察」→「一般化」→「皮肉」というある種小気味良い流れの中で、正しく前触れなく現れてそれを分断する、「突然〜」という件でしばしば表現される、きわめてド直球かつ端的に表現される直観。
本作で言えば、ジャン=イブが、「自分の父親があらゆることにうんざりしていた」ことに気づく件がその一つだが、ノスタルジックな香りすら漂うメカノへの愛を表現するジャン=イブの父親と商業を志すことを表明したジャン=イブの対置がそのまま作品のテーマを端的に表しており、実に鮮やか。
下品パート以外にも第一部での、ツアー客の中で全く周囲に馴染めぬ主人公の「はぐれ者」っぷりの堂に入った描写なども実にらしく、全体通じた出来も「素粒子」の次に良いのでは。文庫になってよかった。