成長なき時代のナショナリズム

近年のナショナリズム台頭の背景には、パイの縮小とそれに伴う取り合い競争の加速への危惧感、というきわめて実際的な問題があるのであり、単純な道徳論やナショナリズム=悪という図式はそれについて答えることができていない、というメインの主張からそうした国家的な経済的背景や、世界的なパワーバランスの変容の中でナショナリズムをどう考えるべきか、という本。
全体的に論旨は明快だが根拠となるデータや考察が限定的であり、兎に角定性的。そうかもしれないし、そうでないかもしれない、という感想以上のものをなかなか持てない(単純に読んだ自分が不勉強なだけかもしれないが)。
本筋から外れたような話題とかもあるので(秘密保護法の話とかちょろっと触れる程度なら無しでよかったのでないかと思わされる)、そういったものを削って、もう少しみっちり議論してくれたほうが、結果として説得力が出たのでないか。