ルック・オブ・サイレンス

衝撃の「アクト・オブ・キリング」の続編。前回の、インドネシアでの1965年の虐殺の実行者に当時の虐殺の様子を映画の形で演じさせる、というパンチ力のある設定に対して、今回は被害者の遺族が当時の虐殺者およびその家族のもとを訪れ、当時の虐殺についてインタビューする、というこれまた常識外れな設定。
前回に比して、今回はインタビューを行う被害者遺族アディのつとめて冷静さを保った態度に代表されるように「静」の印象が強いが、むしろストレートに問題の根深さ(加害者側は現状の権力側であり、映画の家などを見る限り経済的にも恵まれているようにみえる一方、アディは村の眼鏡職人であることや、加害者側と被害者側が至近距離で「平穏に」暮らす現状など)や責任の不在の歪さが伝わるような組み立てになっている。
しかし一方で、今回は前作に比べて更に直接の加害者でない、家族はじめ周囲の人間が(身内の加害者の)責任についてどう考えるか、という厳しい問いが顕になっていたわけだが、実行者の後ろ盾となっていたアメリカ軍については、現地の人達に比してかなりその扱いが軽く、その点には正直違和感を覚える。そこを棚上げすることない所までやらねば、(二作品の撮影に際して監督たちが犯したリスクは尋常でないとはいえ)「外側」から撮った、という域から出切れていないのでないだろうか。