おともだち

「春ノ波止場デウマレタ鳥ハ」が(これまで読んだ漫画の中でも)屈指の完成度。柔らかな絵と流麗な線の流れの魅力、細やかな感情の動かし方が素晴らしいのはもちろんのこと、コマや視点の見せ方、作中の(青い鳥の)劇の巧みな使い方(少女漫画のよくある「ミュージカル」的な移行の違和感が全くない)と、完璧という他ない。まさに職人芸。劇の場面でしばしば現れる、身体のダイナミックな動きを一つのコマでスパッと切り取って端的に見せるところや、ポーズの造形のなすデザイン的や幾何学的な側面に着目している点などは、「ドミトリーともきんす」にも通づるところがあって萌芽を見た気分(「Tさん(東京都在住)は、この夏、盆踊りが、踊りたい」を筆頭に全編通じて)。
隅々まで考え抜いて研ぎ澄ましていくと、ここまで出来るのだという、(漫画の)可能性的なものを見せられた思い。

おともだち (新装版) (単行本)

おともだち (新装版) (単行本)