無意味の祝祭

望まれずに生まれたアランや天職の俳優業から見放され、自らのアイデンティを捨ててパキスタン人を演じるカリバンなど、気が付くと、(しばしば望まない形で)今ここに、存在させられている、ということの哀しみを体現した者たちを描くなかで、抵抗としての(スターリン的な)大義への没入や意志による支配でなく、(カリーニン的な)弱さやそれによる惨めさへの愛、ヘソに象徴される、従来の個による個への愛ではないイヴの樹への回帰への夢、個の無意味さをよしとし、(下界的な)冗談やそれによる上機嫌さを愛することが描かれる本。
何だかダイジェスト的で古めかしくもあるが、それはそれで良い。

無意味の祝祭

無意味の祝祭