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フラーレン・ナノチューブ・グラフェンの科学

物理

フラーレン(0d)・ナノチューブ(1d)・グラフェン(2d)に関しての入門書。ターゲットとして幅広い所を狙ったということと、紙幅から見られるように全体をざっと洗った感じ。材料科学・化学・物理という異分野にまたがる分野という位置づけでフラーレンナノチューブグラフェンという対象を見た時に、「相互のコミュニケーションを取るのが困難な境界領域の研究を行うには、全ての分野の特質を把握する必要がある」という問題意識から書かれているということならば、たしかにこのような本も必要なのかなという気はする(実際合成の話とかは全然知らなかった)。そもそも新し目の和書がないし。
そういう訳でディラック電子の理論とか著者の専門的なラマン分光の所とかも詳しく書いてあるという感じではなく、紹介程度。グラフェンの話は手で計算できるもので結構面白いものがあるように思うので、その辺も示してくれても良かったような気もするが。
個人的には、本書にも出ているグラフェン反磁性の話を大学院で最初に見かけたのがKoshino-Andoの論文(http://journals.aps.org/prb/abstract/10.1103/PhysRevB.81.195431)で、こんなに簡単に計算できて結果が面白いなんて、と感動した記憶がある(それまでは物性理論ではもはや強力な数値計算手法なしでは何も出来ないのでないか(稀に例外があっても難解な数学が必要とか)と思ってしまっていた)ので非常に懐かしい。実際はこの軌道反磁性の話がグラファイトビスマスとかで大昔から問題になっている由緒正しい話題らしいということを自分が知るのはより後の話(一応注釈をつけておくと、上の論文をここで引っ張ってきたのも自分で初めて当該の話題を見かけて計算をフォローしてみた、という意味で、歴史的に何がオリジナルかというのとは別)。