電王戦リベンジマッチ

将棋の中身もさることながら今後の展開という意味でもかなり示唆深い内容だったと思う。
前回の電王戦が終了した際(その時の感想)、継盤使用+長時間の秒読み(通常1分を15分にするという提案、実際の対局では10分の秒読みを採用)が先につながるものと思って出てきたものか不明と書いた。
しかし今回の取り組みでは結果として将棋の質の上昇ということだけでなく、同時に実現された対局者の思考のリアルタイムでの公開が、非常に面白いものとなっており、新たな対局形態の取り組みとしても成功と言っていいと思う。対局者の思考のリアルタイムでの公開というのはファン的にも望まれてきたことだが、これは正にコンピュータ戦だからこそ可能ということで非常に良いことと思う。
今回対局の長時間化(以下簡単のため秒読みの長時間化を、対局時間の長時間化とほぼ同一視して書く)に際して適切な事前ルール決めがなく、最終的に外の判断で指掛けとなったことが話題になっているが、もし今回の結果を受けて、(指掛け・複数日などの適切な形態の整備の上で)超長時間の将棋というものが将棋の質的な面からプロ棋士側に受け入れられる余地が出てくるならば、それは単にコンピュータに人間が勝ちうる試合設定という枠組みの一つ、という点だけでなく、たとえば研究的な要素としての活用も見えてくるのでないだろうか。直ちに思いつくものとして、長時間かつ真剣な対局中の脳の働き方を調べる、と言った試みもあり得るかもしれず(それにどの程度学問的な意味があるかを残念ながら知らないが)、従来の棋戦(限られた時間で進行を管理する必要がある)とは異なる方面から注目を集める可能性も考えられるような気もする。
そもそも大昔は一局指すのに2日以上かけた例(南禅寺決戦とか)もあった訳で、それは棋戦という(現代的かつ商業的な)枠組みにはそぐわないということで淘汰されてなくなった(このへんの理解はもしかすると間違いかも)とするなら、今コンピュータに相対して、人間が将棋の質を高めるために再度長時間の思考を求めるというのは結構面白いような気もする。この辺は(従来の棋戦との)住み分けという観点からも大事な点を含む気がしている。