エネルギー問題入門

UCBerkeleyの教授(専門は素粒子物理学、地球物理学)による解説書。原著は2012年出版で、元々のコンセプトは「一国のリーダーがエネルギー問題について決定を行うために知っておくべきこと」というものだったようで、最初に福島の原子力発電所事故やメキシコ湾での重油流出事故のケースを取り上げて、その被害と危険性についての定量的な見積り、それを受けての適切な決定について、データと具体的な数字に基づいた上での進言がなされる。その後も著者らが直接データ分析を行った例を挙げつつ地球温暖化についての議論(起こっていることは間違いない一方で異常気象との相関は必ずしも取れない。CO2排出量に関しては途上国がドミナントでその低減を行わない限り効果はない)、シェールガスシェールオイルという「思わぬ授かりもの」を受けての天然ガスの急伸、それに続く代替エネルギー(太陽光、風力など)や更にその先に位置づけられる(本文ではもう少し厳し目に評価されているが)各種技術(太陽熱、電気自動車、水素など)に関する検討など内容は盛り沢山だが、いずれの例でも定量的な現状の把握から今後の方向性が提言されており、簡潔ながらもきわめて説得力があるものになっている。数字や天然ガスを巡る状況についてアメリカと日本という差があることは頭において置かなければいけないとはいえ、エネルギー技術について概観するのに大変良い本だった。かなりお薦め。

エネルギー問題入門―カリフォルニア大学バークレー校特別講義

エネルギー問題入門―カリフォルニア大学バークレー校特別講義