羽生善治全局集(と矢倉二枚銀急戦(とカニカニ銀))

羽生善治全局集を入手したので並べ始めた。
竜王 羽生善治」は持っていなかったためこうして読めるというのは大変嬉しいし、冒頭の竜王獲得を決めた一戦の自戦記から大変面白い。最後の「これから一年間竜王位を名乗らせて頂くわけですが〜」という件しか知らなかったが、それ以外にも和服着用について、「もしかすると滅びゆく伝統かも知れないが、1回くらい、着てみるのも悪くないと思った」、とか、(第8局の対局場の)シティホテルに和服は似合わないと思ったから洋服にしたと述べていたりするところとか非常に率直で初々しくて良い。(が、羽生自戦記はその一局だけ、他の棋戦決勝等には2頁割いて簡易観戦記を含めた解説が付くが、残りは1頁に解説のみというのはどうなんだという気がしないでもない。将棋要素だけに集中した本を今出すのなら、復刊するだけでなくもうちょっと解説等も充実させてほしいものだが)。

羽生善治全局集 ~デビューから竜王獲得まで~

羽生善治全局集 ~デビューから竜王獲得まで~

で、この本でいうと2局目の島−羽生の竜王戦第1局について。先手島竜王が矢倉の出だしから2枚銀急戦に出て下図(図は▲4六銀まで)。

ここから△8五歩▲6六銀△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8二飛▲3五歩△同歩▲同銀△3四歩▲2四歩〜と進んであっさり序盤で銀交換に成功。解説を読んでも先手好調とか書いてあるので(もちろん先手は玉がひどく薄いしこの後のまとめ方も簡単ではないが)随分うまい話だな、と思ったのだが、これは△8五歩が分岐点(仮に挑戦者が現代的な感覚で、攻めの銀を捌かせても玉の安定度に差があること、さらに先手のその後の攻めの続行が大変だと考えて本譜を選んでいるとするならば、むしろ作戦の岐路というべきか)で、△3一角と引く形にすれば直ちに▲3五歩には△4五歩の突き違いがあって無効、▲7九角なら△8五歩(角を覗いた後の安定性を考慮するとやや変だが△7四歩?)として▲3五歩なら△同歩▲同銀に△6四角と除いて味が悪い、というわけで先手は中央から動く形になって銀交換は避けられるという理解でいいのだろうか?居飛車党の人からしたら常識なのだろうが全くこの辺の知識がないので。
しかしどうせこういった将棋にするのなら、先手番でも手数的にギリギリなのだからいっそ居玉にすれば…とか思っていたら、それを更にラディカルにしたのがカニカニ銀であることに思い当たった。実際(何度見ても)すごい形だが確かに一理あるというか、無駄手は殆どない。という訳でカニカニ銀についてちょっと調べたところ以下のサイトの存在を知り、児玉七段のカニカニ銀炸裂の様子を見て唸っていた。実に鋭角的。
http://kanikani-attack.com/


12/13追記
偶然とはいえタイムリーなことに、今日の朝日杯二次予選の屋敷−佐々木(勇)戦でもこの2枚銀急戦の形が出現。上図で△4三金右を△3一角にした形だったので、屋敷九段は▲4六銀でなく▲6六銀とこちらの銀を先に出て、以下5筋交換を経た後に右銀を繰り出して2,3筋を巡る攻防へ。棋譜は以下から見れます。
http://live.shogi.or.jp/asahi/

という訳で(これを見る限り)上に書いたことはあながち的外れでもなかった?