カオスの紡ぐ夢の中で

カオスの研究や生物の「物理的」な理解(この意味は本書内で述べられている)で有名な著者の一般向けの本。内容はエッセイからカオスがない世界の思考実験「カオス出門」、自動生成された物語が読み手との相互作用を通じて生物的に進化するとともに読み手を変容させる、複雑系としての読み手と物語の系を描いた「小説 進物史観」(円城塔の命名由来として有名だが)など多岐に及ぶ。
20年ほど前の連載などということもあり、今となっては大野、田崎などをはじめとした強力な語り手による本が人口に膾炙したこともあって、随所に見られる思想は目新しい感じでもなくなったが、それでも興味深い。