悪童日記、ふたりの証拠、第三の嘘

主人公の名前がMOTHER3の主人公兄弟の名前の元にもなった、アゴタ・クリストフの双子三部作。ハンガリーの小さな町を舞台に第二次世界対戦とその後を生きる主人公兄弟やその周囲の人々の、強かさ、自己の分裂や満たされ無さ、歪な愛情などを独特の乾いた文体で描いてみせる。
特に一作目は、この乾いた文体(一作目では双子が自ら書いた日記、という体になっており、この感情を排した独特の文体を彼らが獲得した理由も文中に示されている)と、主人公の生き抜くことへの強い意思とその帰結として現れる強かさ、それでいて利己的な堕落とは一線を画した高潔さが抜群のマッチを示し、猛烈に悲惨な状況が描かれるにもかかわらずある種の清々しさが残るような傑作となっている。
が、やはり強烈な印象を残すのは本作を単一の作品3つでなく三部作たらしめている、各小説を単位とした入れ子構造(ただ、ノートの数が変わってたりとか個人的に分かっていない部分もあるのだが)と、その結果として最終的に描かれるあまりにも救いのない「ふたり」の現実。北村薫の「空飛ぶ馬」の「小説が書かれ読まれるのは、人生がただ一度であることへの抗議からだと思います」という言葉を思い出さずにはいられない。
豪腕系ながら、大変面白い本だったと思う。

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)

ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)

第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)

第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)