火星の人類学者

脳神経科医の筆者が、往診という形での交流を通じて出会った様々な患者について、彼らが体験している(しばしば非常に目新しい)世界の感じ方、そして彼らがどのようにそれと共に生きているか、を描いた本。
全編通じて、患者たちの驚くべき症例に対しての筆者の戸惑いや緊張などが非常に率直に描かれている(場合によっては少々冷ややかに思えることもある)点は、評価がわかれる点かもしれないが個人的には正直な感じで悪くない印象を受けた。
後はやはり、出てくる人が皆症例のために世界から切り取られるような体験をしているにもかかわらず、その中でどう生きていくか、という所を探り、前を向いてやっていく過程には心打たれる。
非常に良い本だと思う。個人的な一押しは表題作。

火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF)

火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF)