古都がはぐくむ現代数学

以前朝日新聞で「数学するヒトビト」という連載を持っていた著者による、京大数理解析研究所という場とそこでの数学者の営みにフォーカスする本。
メインは数理解析研究所に所属した数学者の業績やそこに至るまでの道程の紹介で、個々人のものについては別の場所で見たことのある話も一部あるのだが(大栗博司の部分は去年の大栗本のダイジェスト版的なものだし、佐藤幹夫の辺りは以前の数学セミナーの特集とかと結構オーバーラップがあった印象)なのだが、特に数学でも応用色の強い分野に属する分野(流体力学とか最適化、計算機関連の話など)や、量子論の数学の辺りはこういった紹介の記事レベルでも全然知らない所だったので初めて見る話が多く非常に興味深く読んだ。
個々の数学者の話をメインとしながらも、思わぬ所に現れる人のつながりや、取り上げられた分野の多様さが結果として数学する「場」としての数理解析研究所の歴史や懐の深さ的な所を浮かび上がらせる形となっている点も良い。全体として良い本だと思う。