元素戦略

JSTのプロジェクト「元素戦略」の解説本、というよりはプロジェクトの意義と構成研究者のダイジェスト的紹介をメインとした宣伝本。
しかし重要な動機として述べられているレアアースの価格の高騰についても、暴落のその後については殆どメンションされていないし(価格が落ちるとその領域に対する研究コストが見合わなくなるために、特に企業での研究が進まなくなりそうだが産学連携を謳う立場としてどのような方向を描いているのかなどに興味があった)、最終章の「企業と研究しないせいで出口戦略を描けない研究者には困ったものだ。成果をほいほい公の場で発表してしまう」とか(科学とは何だったのか)、「手の内は開かせないから一流論文誌へのアクセプトの障壁は上がるけど、研究者が内容の詳細を語らずともアクセプトしてもらえる様な圧倒的な力をつけるのが理想かもしれない」とか(圧倒的な力とは何なのか、地獄の香りしかしない)、「ポスドク問題を解消し、元素戦略に人生を賭ける若い人が増えることが必要だ!」(解消とは)とか言われると流石に頭が痛くなる。
本を見た限りでは、スター研究者の所で成果は上がっている一方で、プロジェクトの枠組み、その妥当性とか方向性の在り方に関する議論が少なく、消化不良感が残る感じだった。